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3.ありのままの貴方

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 ───── 舞踏会当日 ─────

「公爵家から援助を受けてたなんて!」
「リプリン。どうせ結婚するんだ。持参金を先にくれない?」

 ホールを出てすぐ廊下で、リプリンと元婚約者は揉め始めました。
 あらまあ。周りに丸聞こえで、恥ずかしくないのかしら?

「豪華な服を着てるから裕福だと思ったのに」
「この服は王太子夫妻に頂いたんだ」
「はい!? お世話になっておいて、婚約破棄って失礼すぎない?」
「リプリンだって、すごい高級ドレスを着てるじゃないか」

 プリンはキラキラしたビジューたっぷりのピンクのお姫様ドレス。
 本当の価値は別にして、派手さでは王太子妃のお姉様にも勝ってましたわ。

「男たちがくれるんだもん」
「まさかリプリンは浮気してんのか?」
「まだ婚約も、結婚もしてないもの。自由だわッ」
「ってことは、リプリンは成金男爵令嬢じゃなかったのか?」
「実家のお金を当てにしてるのならお門違いよ。むしろ借金まみれだもの。お互い、大誤算ね。じゃ。さよなら」
「ちょ、待て。プリリン!」
「リプリンよッ!」

 プリンは元婚約者を見捨てて去ってしまいました。





「さ、さ、差し押さえ!?」

 騎士の説明を受けて、元婚約者の父親である伯爵は、真っ青に。

「伯爵家の御坊ちゃまは醜態をさらし、城も出禁になりましたよ」
「ど…どうかお許しを。愚息を廃嫡しますので」
「いやいや、融資した金を使い切ったのは、どなたです?」

 騎士は嫌味たっぷりの悪役顔で微笑みます。

「愛娘を傷つけた愚か者を、許すわけないだろう?」

 ぞっとする冷たい公爵の声に、だれもがヒュッと息を呑む。
 これぞリアル悪。

 伯爵家はお屋敷も領地もなくなっちゃいました。




「ちょっと、やり過ぎじゃないかしら?」
「お嬢も、なかなかの冤罪悪役令嬢の演技でしたよ」
「フフ。冤罪じゃないのにね」
「完璧にッ! 騙せてました」
「あ──。スッキリしたっ。楽しかったね」

 私と騎士は、今日ものんびりガゼボでお茶を飲むのでございます。
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