【短編】冤罪悪役令嬢の七日間 華麗に婚約破棄断罪返ししてみせますわ

サバゴロ

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2.はしゃぎ過ぎた七日間

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 ───── 七日前のガゼボ ─────

「で、プリンってだれ?」
「明日のガーデンパーティーにいるんじゃないですか?」
「どんな令嬢かしら。まず敵を知らなきゃね」

 私と騎士はプリンを見てみることに。


 ───── 六日前のガーデンパーティー ─────

「お嬢。あのピンクドレスがゴブリンです」
「こぼれそうなお胸を殿方に押し付けてるわよ?」
「ったくどこが純粋無垢なんだか。ワインでもぶっかけます?」
「ダメよ。私の醜聞が広まっちゃう」
「だれにも見られなければいい。少々お待ちを……」

『温室で二人きりで会いたい。あなたの恋の奴隷より』

 騎士はナプキンにさらさらと恋文を書きました。

「給仕に頼んで、渡してみます」
「恋人がいるのに呼んでも、来ないでしょ?」

 まあでも、右手に赤ワイン、左手に白ワインを持ち、温室に行きました。
 するとプリンが即登場。

「あのぉ? だれかいませんでしたぁ?」
「さあ? 存じません」

 バシャ─────ンッ!!
 去ろうとしたプリンの背中に、両手で思いっきりワインをぶっかけました。

「きゃっ!」

 驚いたプリンが振り向く。

「あらやだ。ごめんなさい。スカート踏んでよろけちゃって」

 私は、とっとと温室から逃げました。
 赤ワインと白ワイン混ぜてもピンクになりませんのねぇ。


 ───── 五日前のドレスルーム ─────

「誕生日パーティーでは何色のドレスを着る?」

 お姉様が実家に顔を出しました。

「悲劇のヒロインに見えるドレスは何色かしら?」
「なんで??」
「実は私、婚約解消されるみたい」
「何ですって!?」
「もういいの。昨日、浮気相手のプリンの背中にワインぶちまけたから。充分復讐を堪能したわ。満足よ。逃げるの含めてドキドキで楽しかったもん」
「そんなんじゃ許せないッ」

「ゴブリンは毎週火曜日に教会に行くらしいですよ」

 口を挟んだのは騎士。

「なぜ私のドレスルームにまで入ってくるのかしら。まったく」
「護衛ですもん。ずっとおそばにいますよ」


「相変わらず妹への執着が止まらないのね」
「殿下も溺愛が相変わらずで」

 お姉様と騎士は、妙な対抗心でバチバチ火花を散らします。


 ───── 四日前の教会横の石段 ─────

 ───ん?
 馬車から降りたプリンはなぜか教会に入らず、コソコソと建物の陰に。
 後を追うと、目撃しちゃったのは牧師とプリンのキス!!

「え。え?? 太陽の下の石段で何を始めるの?」

 わざわざ黒いドレスに黒いベールで、教会に入る準備万端でいらしたお姉様はびっくり。
 牧師は小さな石段から立ち上がると、去り際にプリンに金貨を渡す!?

「だれも見てないから、蹴っ飛ばします?」
「さすがにやりすぎよ」
「なら私がッ!」

 止める間もなくお姉様が走り出す!
 石段の上からプリンの背中に飛び蹴り─────ッ!!!!

 シュタッと着地、スッと立ち上がると、そのままお姉様は馬車で去っていきました。

「なんて華麗な身のこなし」
「さすが軍事大国の王太子妃殿下だ」

 騎士と見惚れてしまいましたわ。


 ───── 三日前の王宮 ─────

「あら。プンプンしてどうしたの?」
「フリンと恋に落ちたからと、妹が婚約解消されるんです。ところが、そのフリンは牧師に身体を触らせて金貨をもらうような、まさかのビッチで……」

 お姉様は義母である王妃殿下に、私の婚約者の不倫と、不倫相手の別の不倫を教えてしまいました。

「乱れすぎてて、ややこしいわね」
「昨日はフリンを蹴っ飛ばして気分爽快でしたが、私の軽いキックじゃ妹の仇を取った気がしなくて」
「おバカ。王太子妃なのよ」
「大丈夫です。ベールで顔を隠してましたし、ダッシュで逃げましたわ」
「あのね。その不倫するフリンとやらを王家に近づけないと、他の貴族の前で明言するだけでいいの」
「それだけ?」
「ええ。その家門は終わるわ」


「ねえ。その話、私も混ぜてよ」
 と、王太子殿下まで。


 ───── 二日前のディナー ─────

「婚約解消だと?」

 領地から戻ってきたお父様はお口をあんぐり。
 マナーの良いはずお父様が、雑魚のフリットをポロッと床に落としてしまいます。

「もうよいのです。お姉様が怒ってくれて、すっごく嬉しくて」
「早めの持参金だと思うから、今まで融資したのに」

 グシャッ。お父様は怒りに任せ雑魚を踏みつけました。

「さあ。公爵様。全力でコテンパンにやっつけちゃってください!」

 まったく、もう。騎士はお父様にも馴れ馴れしい。

「おまえは何もしないのか?」
「剣を真っ二つに折りましたよ『二度と屋敷の門をくぐるな』と。ご命令とあれば殺(や)っちゃいますけど?」
「いや。それではワシがものたりん」

 お父様はニヤリと悪者の笑みを浮かべました。


 ───── 一日前の公爵家サロン ─────

「債権者の皆にお集まり頂いたのは、他でもない。伯爵家の財産分割についてだ」
「公爵様は融資を止めるのですか?」
「もう融資する義理がない。明日、差し押さえる」
「明日!?」

 どよめきの後、己の利益を守りたい債務者で熱い議論が交わされました。
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