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第9話 セフレ(3)資料作り
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次の日、自席のPCにかじりついていた早苗は、情けない声を上げた。
「うぅ……終わらない……」
時計はすでに二十二時半を回っていたが、翌朝までに顧客に出さなければならない資料の作成が終わっていなかった。
説明の打ち合わせ自体は明日の午後からでまだ余裕があったのだが、先に目を通したいから資料を朝までに送付しておいて欲しい、と連絡がきたのだ。それも夕方に。
それが、当初想定していたよりも大仕事だった。むしろ連絡が来なかったら、午後にも間に合ったかどうか。
この調子だと、日付を跨いでも終わらないかもしれない。
終電を逃せば、そのまま「会社でお泊まりコース」一直線。
テレワークに切り替えて自宅で続きができればまだましなのだが、課長以上の管理職でなければ、特別な場合以外、二十二時以降のテレワークは禁止されていた。過重労働の恐れがあるからだ。
ホワイトなのはありがたいのだが、こういう時はとても困る。
社員の負担になっているのだから本末転倒だよ、と思いつつも、早苗もそういう制度に守れているのだから、改正すべきとまでは考えない。
が、恨み言くらいは許されるだろう。
他のメンバーが残っていれば分担もできたのだが、試験工程が大詰めを迎えていて、このところみんな終電ギリギリになることが多かった。
こんなに時間がかかるとは思わず、早めに終わった今日は「先に帰っていい」と言ってしまっていた。昨日、定時で上がって一人加世子と飲みに行ってしまった負い目もある。
もしも終電を逃してしまったら、ここで机に突っ伏して仮眠を取って、始発で帰って、家でもう一度仮眠とって、シャワーを浴びて、身支度を整えて出てくることになる。
うん、いける。余裕だ。
――システム開発者たるもの、急なトラブルに備えて、お泊まりセットをロッカーに常備しておくべし。
というのは、早苗が新入社員の頃にトレーナーに教わったことだ。
それはまだ「長時間労働上等」「残業代? なにそれ美味しいの?」「会社の床に寝るには段ボールよりも緩衝材がよい」なんて時代の話で、その女性トレーナーは冗談のつもりで言っていた。
だが真面目な早苗はその教えを真に受けて、一応、スキンケアセットと下着、スーツの下のインナーは用意してある。
ただ、そのお泊まりセットの出番はこれまで一度もない。
計画夜勤も突発的な徹夜仕事も経験はあるが、次の日までそのまま勤務、なんてことはなかった。朝出社してきたメンバーにバトンタッチして帰るからだ。
今夜もその出番はない。大丈夫。朝には一度帰れる。
早く終わらせよう、とキーボードに手を乗せた。
そして気づいてしまった。
試験結果がおかしい。
「待って待って待って」
カチカチカチカチ、とマウスを操って結果表を確認する。
「しかもこれ単体試験の時の……!?」
システムの試験といっても、最終的に出来上がったシステムをいきなり試験するわけではない。プログラム一つ、画面一つの動きから試験を始めて、徐々に範囲を大きくしていく。
誤っていたのは、その最初の方の試験の結果をまとめた表だった。
現在は最終試験中で、今早苗が作っているのは、これまでの試験結果の総括と、最終試験の中間報告だった。
残りの試験項目が無事に終われば、この資料の最後の所を更新し、最終的な試験報告とする予定だ。
当然それぞれの試験の節目では、そこまでの試験の結果を報告しており、その度に顧客に承認を得ていた。
なのに、以前報告した内容が誤っていた。
それだけでも「大変申し訳ございません!」な事態だったが、影響はそれだけではなかった。
原因は、表計算ソフトに誤った数式を入力していたことだった。
「ここが間違ってるってことは、こっちとこっちも……」
早苗は、ぎゃーっと悲鳴を上げそうになった。上げてもよかった。オフィスにはもう早苗しかいないのだから。
データを更新して、資料の訂正をしなくてはいけない。さらに、他の試験のまとめ資料でも同じ事が起こっていないか横並びチェックをして、原因と再発防止策と品質には影響がないことを示した資料も作らないといけない。
期限は朝の九時。あと十時間。
「まずは横並びチェックだよね。チェックプログラム書いた方が早い? いや突貫で作ってそれにバグがあったらマズい。目でチェックして、このグラフ作り直して、報告書の文言変えて……他の試験結果にも波及してたらそれも作り直し!?」
絶対に間に合わない。
期限を延ばしてもらうしかない。
今から連絡しても、顧客はもう帰宅しているだろう。読むとしたら明日の朝一で、それはすなわち資料の提出期限の時ということになる。
そしてその理由が「前の試験の結果が間違ってたので資料作り直します。てへぺろ☆」である。
「ああああぁ……」
早苗は頭を抱えた。
当然顧客は滅茶苦茶怒るだろう。
だけどそれしかない。
「せめて奥田さんがいれば……」
早苗が呟いたとき、すぐ横から声がした。
「奥田さん、もういないんですか?」
「ひっ」
びっくりしすぎて思わず悲鳴を上げてしまった。
まさか人がいるだなんて思わなかったのだ。
目の前のことでいっぱいいっぱいで、ドアの前でカード認証するときのピッという音も、鍵が開くモーター音も、何も聞こえていなかった。
心臓をバクバクさせながら声の主を見ると、そこにいたのは桜木だった。
「すみません、そんなに驚くと思わなくて」
「なんでここにいるの?」
なぜ開発のフロアにいるのだろう。しかもこんな遅くに。
「帰るときにビルの下から見上げたらここのフロアの電気がついてたんで、先輩いるかな、と思って見に来ました。それ、明日の夕方やる中間報告の資料ですよね?」
「なんで開発側のスケジュール知ってるの」
試験結果の提出には営業は関わっていない。
「開発のスケジュール表くらい見てますよ」
当然だろう、という顔で桜木が答えた。
「普通の営業さんはそこまで見ないよ」
「俺は見るんです。――で、なんで今日居残ってやってるんですか?」
「明日の朝までに欲しいって言われて」
「それでこんなに遅くまで……。終わりそうですか?」
「絶対終わんないっ!」
桜木はちらりと早苗の画面を見た。
「もう最後まで来てるじゃないですか。終わりそうに見えますけど」
「まだ体裁整えてないの。しかも単体試験の結果のまとめ資料が間違ってることに気づいちゃって、資料作り直し。っていうか他の試験の結果まとめのチェックからやらなきゃなんない……」
「え」
遠い目をした早苗に、桜木は驚いた顔をした。それも若干引き気味だ。早苗の言葉の重要性にすぐに思い至ってくれたのはさすがだった。
正しい数値に直してみたら、実は試験結果がものすごく悪かった、という可能性がある。もしそんなことになったら、システムの品質を疑われ、プログラムの見直しと試験のやり直しを求められるだろう。
「気づかなきゃよかった……」
「いや、それでサービス開始後にバグ出たら大事ですよ。今見つかってよかったって思いましょう」
「たぶん試験自体に問題はない。まとめ資料が変なだけ」
「たぶん、ですよね?」
「うん……」
うあぁ、と早苗はまた頭を抱えた。
口に出したら余計に大変な事に感じた。
「うぅ……終わらない……」
時計はすでに二十二時半を回っていたが、翌朝までに顧客に出さなければならない資料の作成が終わっていなかった。
説明の打ち合わせ自体は明日の午後からでまだ余裕があったのだが、先に目を通したいから資料を朝までに送付しておいて欲しい、と連絡がきたのだ。それも夕方に。
それが、当初想定していたよりも大仕事だった。むしろ連絡が来なかったら、午後にも間に合ったかどうか。
この調子だと、日付を跨いでも終わらないかもしれない。
終電を逃せば、そのまま「会社でお泊まりコース」一直線。
テレワークに切り替えて自宅で続きができればまだましなのだが、課長以上の管理職でなければ、特別な場合以外、二十二時以降のテレワークは禁止されていた。過重労働の恐れがあるからだ。
ホワイトなのはありがたいのだが、こういう時はとても困る。
社員の負担になっているのだから本末転倒だよ、と思いつつも、早苗もそういう制度に守れているのだから、改正すべきとまでは考えない。
が、恨み言くらいは許されるだろう。
他のメンバーが残っていれば分担もできたのだが、試験工程が大詰めを迎えていて、このところみんな終電ギリギリになることが多かった。
こんなに時間がかかるとは思わず、早めに終わった今日は「先に帰っていい」と言ってしまっていた。昨日、定時で上がって一人加世子と飲みに行ってしまった負い目もある。
もしも終電を逃してしまったら、ここで机に突っ伏して仮眠を取って、始発で帰って、家でもう一度仮眠とって、シャワーを浴びて、身支度を整えて出てくることになる。
うん、いける。余裕だ。
――システム開発者たるもの、急なトラブルに備えて、お泊まりセットをロッカーに常備しておくべし。
というのは、早苗が新入社員の頃にトレーナーに教わったことだ。
それはまだ「長時間労働上等」「残業代? なにそれ美味しいの?」「会社の床に寝るには段ボールよりも緩衝材がよい」なんて時代の話で、その女性トレーナーは冗談のつもりで言っていた。
だが真面目な早苗はその教えを真に受けて、一応、スキンケアセットと下着、スーツの下のインナーは用意してある。
ただ、そのお泊まりセットの出番はこれまで一度もない。
計画夜勤も突発的な徹夜仕事も経験はあるが、次の日までそのまま勤務、なんてことはなかった。朝出社してきたメンバーにバトンタッチして帰るからだ。
今夜もその出番はない。大丈夫。朝には一度帰れる。
早く終わらせよう、とキーボードに手を乗せた。
そして気づいてしまった。
試験結果がおかしい。
「待って待って待って」
カチカチカチカチ、とマウスを操って結果表を確認する。
「しかもこれ単体試験の時の……!?」
システムの試験といっても、最終的に出来上がったシステムをいきなり試験するわけではない。プログラム一つ、画面一つの動きから試験を始めて、徐々に範囲を大きくしていく。
誤っていたのは、その最初の方の試験の結果をまとめた表だった。
現在は最終試験中で、今早苗が作っているのは、これまでの試験結果の総括と、最終試験の中間報告だった。
残りの試験項目が無事に終われば、この資料の最後の所を更新し、最終的な試験報告とする予定だ。
当然それぞれの試験の節目では、そこまでの試験の結果を報告しており、その度に顧客に承認を得ていた。
なのに、以前報告した内容が誤っていた。
それだけでも「大変申し訳ございません!」な事態だったが、影響はそれだけではなかった。
原因は、表計算ソフトに誤った数式を入力していたことだった。
「ここが間違ってるってことは、こっちとこっちも……」
早苗は、ぎゃーっと悲鳴を上げそうになった。上げてもよかった。オフィスにはもう早苗しかいないのだから。
データを更新して、資料の訂正をしなくてはいけない。さらに、他の試験のまとめ資料でも同じ事が起こっていないか横並びチェックをして、原因と再発防止策と品質には影響がないことを示した資料も作らないといけない。
期限は朝の九時。あと十時間。
「まずは横並びチェックだよね。チェックプログラム書いた方が早い? いや突貫で作ってそれにバグがあったらマズい。目でチェックして、このグラフ作り直して、報告書の文言変えて……他の試験結果にも波及してたらそれも作り直し!?」
絶対に間に合わない。
期限を延ばしてもらうしかない。
今から連絡しても、顧客はもう帰宅しているだろう。読むとしたら明日の朝一で、それはすなわち資料の提出期限の時ということになる。
そしてその理由が「前の試験の結果が間違ってたので資料作り直します。てへぺろ☆」である。
「ああああぁ……」
早苗は頭を抱えた。
当然顧客は滅茶苦茶怒るだろう。
だけどそれしかない。
「せめて奥田さんがいれば……」
早苗が呟いたとき、すぐ横から声がした。
「奥田さん、もういないんですか?」
「ひっ」
びっくりしすぎて思わず悲鳴を上げてしまった。
まさか人がいるだなんて思わなかったのだ。
目の前のことでいっぱいいっぱいで、ドアの前でカード認証するときのピッという音も、鍵が開くモーター音も、何も聞こえていなかった。
心臓をバクバクさせながら声の主を見ると、そこにいたのは桜木だった。
「すみません、そんなに驚くと思わなくて」
「なんでここにいるの?」
なぜ開発のフロアにいるのだろう。しかもこんな遅くに。
「帰るときにビルの下から見上げたらここのフロアの電気がついてたんで、先輩いるかな、と思って見に来ました。それ、明日の夕方やる中間報告の資料ですよね?」
「なんで開発側のスケジュール知ってるの」
試験結果の提出には営業は関わっていない。
「開発のスケジュール表くらい見てますよ」
当然だろう、という顔で桜木が答えた。
「普通の営業さんはそこまで見ないよ」
「俺は見るんです。――で、なんで今日居残ってやってるんですか?」
「明日の朝までに欲しいって言われて」
「それでこんなに遅くまで……。終わりそうですか?」
「絶対終わんないっ!」
桜木はちらりと早苗の画面を見た。
「もう最後まで来てるじゃないですか。終わりそうに見えますけど」
「まだ体裁整えてないの。しかも単体試験の結果のまとめ資料が間違ってることに気づいちゃって、資料作り直し。っていうか他の試験の結果まとめのチェックからやらなきゃなんない……」
「え」
遠い目をした早苗に、桜木は驚いた顔をした。それも若干引き気味だ。早苗の言葉の重要性にすぐに思い至ってくれたのはさすがだった。
正しい数値に直してみたら、実は試験結果がものすごく悪かった、という可能性がある。もしそんなことになったら、システムの品質を疑われ、プログラムの見直しと試験のやり直しを求められるだろう。
「気づかなきゃよかった……」
「いや、それでサービス開始後にバグ出たら大事ですよ。今見つかってよかったって思いましょう」
「たぶん試験自体に問題はない。まとめ資料が変なだけ」
「たぶん、ですよね?」
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うあぁ、と早苗はまた頭を抱えた。
口に出したら余計に大変な事に感じた。
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