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第2章 天空の城と伸びる塔の謎
第57話 煙魔烈の実と直樹の密かな野望
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「まあとにもかくにも、塔の中に入らないことには何も進まない、って俺は思う。そのために必要なアイテムが4つ。涼坂家も4人で──」
「にゃーん!」
自分もいるよ、と不満げな目を直樹に向けるささみ。
「おっと、すまんすまん! って、俺とささみは2人で1人だから」
「にゃーんにゃーん!」
そうそうレベル1の魔法使いにはお供が必要だもんね……と思ってるのかどうなのか、ささみは納得の表情を浮かべていた。
「そんじゃ、ひとり1個ずつ集める感じ? だったらボクはやっぱり『強力な武器』ってやつがいいなぁ~」
「いや、歩斗ちょっと待て。たしかにアイテム4つでひとり1個の計算ではあるけど、忘れちゃいけない存在がいるよな?」
「えっ? 存在? うーん……」
小首を傾げて考え込む歩斗。
それを見て、勝ち誇ったように優衣がニヒヒと笑う。
「レムゼでしょ! なんだかんだアイツめっちゃ強かったもんねぇ~。この私と互角って感じ?」
「ハハッ、それは頼もしいな」
直樹が娘の頭をポンポンと叩く。
でへへ、と満足げな笑みを浮かべる優衣。
当然、歩斗は悔しい表情を浮かべているが、レムゼとの戦いにおいて、優衣は間違いなくみんなを守る防波堤となっていた。
悔しさを堪える息子の肩に、香織は優しく手を置いた。
「裏を返せば、現時点でレムゼという少年に対抗できるのは優衣だけってことだ。つまり、単独行動は絶対禁止!」
「そうね。レベル1の人は特に」
香織の鋭すぎる返しに、子供たちはもちろん、直樹自身も笑わずにはいられなかった。
「……ま、まあ、だからと言って、優衣以外異世界禁止ってのは逆にマズいと思う。それはつまり、レベルアップする機会をずっと得られない、ってことだからな」
「うんうん!」
あっという間に笑顔が戻った歩斗が大きく頷く。
「で、どうすれば良いか。少し前に商人のポブロトから聞いたんだけど、魔烈の実の一種で〈煙魔烈の実〉ってのがあるらしい。破裂させると煙が出るって代物。それさえあれば、ふいに危険な敵と遭遇しても、目をくらませて逃げることができる……ってわけだ」
「おお! でもでも、まずそれをゲットしなきゃいけないよね?」
「ああ、そうだな。けど、忘れちゃいないか? うちには、優秀な”園芸師”がいるってことを」
直樹が熱い視線を送ったのはもちろん……。
「あらあら、重要なミッションを任されちゃったのかしら?」
「ん? 自信ないの?」
「……まさか! やりがいしか無いわ」
香織は自信に満ちた表情で言い切った。
「さっすが~! ママなら絶対やってくれるよね!」
「フフッ、ユイありがと!」
「ボクも、やってくれると思ってるけど!」
「はいはい、アユもありがとね!」
「ヘヘヘ~」
ニンマリする歩斗……に対し、ほんと単純だなぁ、と自分を棚に上げる直樹。
これで会議をお開きにしてビールでも……と行きたい所だが、最後のまとめが残っている。
「それじゃ、直近の目標は〈煙魔烈の実〉を手にすること。ママよろしく!」
「はーい」
「それまで、我が家で最強の剣士であるユイ以外は、安全を考慮して遠出禁止!」
「りょ~か~い」
「にゃ~にゃ~ん」
「よろしい。って、1番出ちゃ行けないのは俺だけど」
直樹の自虐的な冗談に、家族全員クスッと笑った。
「まっ、どうせ仕事が忙しくてそれどころじゃ無いけどな!」
「パパの強がり!」
ユイがピンクゴールドの剣の如き鋭いツッコミを入れる。
「ほっとけ! って、もうすぐ一段落出来そうなんだけどね。そしたらささみと一緒に大冒険だ!」
「にゃーん!」
常に真っ直ぐな瞳で自分を応援してくれる愛猫の声援に、思わずうるっとする直樹。
実は、少し前にポブロトから『強力魔法があるらしい地下ダンジョン』の噂を聞いていて、密かにそのダンジョンへのチャレンジを楽しみにしていた。
奇しくも、レムゼが塔の入り口にかけた魔法陣鍵を解くための4つの中に『強力な魔法』があり、挑戦する必然性も生まれた。
が、それを口にしてもどうせ「レベル1のくせに~」とか言われそうだと思い、そっと胸の中に秘めたままにする直樹であった……。
そんな父の思いを知ってか知らずか、若き女剣士・優衣が威勢良く会議を締める。
「そう言えば、ロフニスってば誕生日プレゼントでなんか大きな宝箱貰ったんだって! 明日それを一緒に開けようってさ! そこにめっちゃ良い武器とかアイテムとか入ってるかも知れないし、それで強くなったロフニスと一緒に色々探索して来る! 私ももっと強くなりまくって、パパとママとアユにいを守りまくっちゃうんだから!!」
「にゃーん!」
自分もいるよ、と不満げな目を直樹に向けるささみ。
「おっと、すまんすまん! って、俺とささみは2人で1人だから」
「にゃーんにゃーん!」
そうそうレベル1の魔法使いにはお供が必要だもんね……と思ってるのかどうなのか、ささみは納得の表情を浮かべていた。
「そんじゃ、ひとり1個ずつ集める感じ? だったらボクはやっぱり『強力な武器』ってやつがいいなぁ~」
「いや、歩斗ちょっと待て。たしかにアイテム4つでひとり1個の計算ではあるけど、忘れちゃいけない存在がいるよな?」
「えっ? 存在? うーん……」
小首を傾げて考え込む歩斗。
それを見て、勝ち誇ったように優衣がニヒヒと笑う。
「レムゼでしょ! なんだかんだアイツめっちゃ強かったもんねぇ~。この私と互角って感じ?」
「ハハッ、それは頼もしいな」
直樹が娘の頭をポンポンと叩く。
でへへ、と満足げな笑みを浮かべる優衣。
当然、歩斗は悔しい表情を浮かべているが、レムゼとの戦いにおいて、優衣は間違いなくみんなを守る防波堤となっていた。
悔しさを堪える息子の肩に、香織は優しく手を置いた。
「裏を返せば、現時点でレムゼという少年に対抗できるのは優衣だけってことだ。つまり、単独行動は絶対禁止!」
「そうね。レベル1の人は特に」
香織の鋭すぎる返しに、子供たちはもちろん、直樹自身も笑わずにはいられなかった。
「……ま、まあ、だからと言って、優衣以外異世界禁止ってのは逆にマズいと思う。それはつまり、レベルアップする機会をずっと得られない、ってことだからな」
「うんうん!」
あっという間に笑顔が戻った歩斗が大きく頷く。
「で、どうすれば良いか。少し前に商人のポブロトから聞いたんだけど、魔烈の実の一種で〈煙魔烈の実〉ってのがあるらしい。破裂させると煙が出るって代物。それさえあれば、ふいに危険な敵と遭遇しても、目をくらませて逃げることができる……ってわけだ」
「おお! でもでも、まずそれをゲットしなきゃいけないよね?」
「ああ、そうだな。けど、忘れちゃいないか? うちには、優秀な”園芸師”がいるってことを」
直樹が熱い視線を送ったのはもちろん……。
「あらあら、重要なミッションを任されちゃったのかしら?」
「ん? 自信ないの?」
「……まさか! やりがいしか無いわ」
香織は自信に満ちた表情で言い切った。
「さっすが~! ママなら絶対やってくれるよね!」
「フフッ、ユイありがと!」
「ボクも、やってくれると思ってるけど!」
「はいはい、アユもありがとね!」
「ヘヘヘ~」
ニンマリする歩斗……に対し、ほんと単純だなぁ、と自分を棚に上げる直樹。
これで会議をお開きにしてビールでも……と行きたい所だが、最後のまとめが残っている。
「それじゃ、直近の目標は〈煙魔烈の実〉を手にすること。ママよろしく!」
「はーい」
「それまで、我が家で最強の剣士であるユイ以外は、安全を考慮して遠出禁止!」
「りょ~か~い」
「にゃ~にゃ~ん」
「よろしい。って、1番出ちゃ行けないのは俺だけど」
直樹の自虐的な冗談に、家族全員クスッと笑った。
「まっ、どうせ仕事が忙しくてそれどころじゃ無いけどな!」
「パパの強がり!」
ユイがピンクゴールドの剣の如き鋭いツッコミを入れる。
「ほっとけ! って、もうすぐ一段落出来そうなんだけどね。そしたらささみと一緒に大冒険だ!」
「にゃーん!」
常に真っ直ぐな瞳で自分を応援してくれる愛猫の声援に、思わずうるっとする直樹。
実は、少し前にポブロトから『強力魔法があるらしい地下ダンジョン』の噂を聞いていて、密かにそのダンジョンへのチャレンジを楽しみにしていた。
奇しくも、レムゼが塔の入り口にかけた魔法陣鍵を解くための4つの中に『強力な魔法』があり、挑戦する必然性も生まれた。
が、それを口にしてもどうせ「レベル1のくせに~」とか言われそうだと思い、そっと胸の中に秘めたままにする直樹であった……。
そんな父の思いを知ってか知らずか、若き女剣士・優衣が威勢良く会議を締める。
「そう言えば、ロフニスってば誕生日プレゼントでなんか大きな宝箱貰ったんだって! 明日それを一緒に開けようってさ! そこにめっちゃ良い武器とかアイテムとか入ってるかも知れないし、それで強くなったロフニスと一緒に色々探索して来る! 私ももっと強くなりまくって、パパとママとアユにいを守りまくっちゃうんだから!!」
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