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第2章 天空の城と伸びる塔の謎
第48話 毒多島のヒエラルキー
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ポイズワロウの先導で草原を抜け、森の中へと入って行く歩斗たち。
この先に何が待ち受けているのか分からない不安を振り払うように、歩斗はこの島に転移してきた経緯を、ケリッツは毒消し草が必要でここへ来たことを、あえて軽い調子で口にした。
ポイズワロウは「なるほどロウ」と相槌を打つものの、基本クチバシを閉じたまま多くを語ろうとはしなかった。
「そう言えば、残りの仲間たちにちゃんと伝えとかなくてよかったの?」
歩斗は、ふと思い浮かんだ素朴な疑問を目の前を飛ぶポイズワロウに投げかけた。
「ああ、大丈夫だロウ。オレがお前らと一緒にこの森に入って行く、それだけで意思は十分伝わっているはずだロウ……」
そう答えながらポイズワロウが意味ありげな表情を浮かべたその時。
「ポーッ、ズッズッズ!!」
前方から聞こえて来たのは、あまりにもクセの強すぎる笑い声。
「な、なにいまの!?」
「イムイムゥ……?」
歩斗たちは思わず立ち止まりそうになったが、構わず飛び続けるポイズワロウに引っ張られるように歩き続けた。
すると、森を抜けたのか急に視界が開けた場所にたどり着いた。
いや、そのすぐ向こうや両サイドにも木々が生い茂っており、恐らくここは森の中にポツンと出来たオープンスペース……なんてことより気になるのは──。
「えっ!? ポイズワロウが1、2、3……6体も居る!?」
そう。
正確に言うとポイズワロウに似た魔物が6体。
サイズは小さな公園ほどの円形スペース。
その中央にやたら豪華な装飾が施された宝箱が置いてあり、それを守るかのように毒ツバメタイプの魔物が「ポーッ、ズッズッズ!」と鳴きながら飛び回っている。
その中でも一際大きな奴がスーッと宝箱の上に着地し、歩斗たちに向かってクチバシを開いた。
「なんだオマエら? この宝を狙って来たのか……って、ん? おいおい、ポイズワロウじゃねーか。落ちこぼれが何しに来たんだポーズッズ!!」
その言葉に呼応するように、他の5体も上空を旋回しながら不気味に笑い出した。
「えっ? もしかして知り合い? っていうか、ポイズワロウが落ちこぼれだって!?」
驚く歩斗。
ついさっきバトルしたばかりなだけに、ポイズワロウの強さ、特に耐久力のすさまじさに関してはまだ鮮明に焼き付いている。
それが落ちこぼれだなんて……と、歩斗は目の前で翼を羽ばたかせるポイズワロウの背中を見つめたが、黙ったまま何も語ろうとしない。
「ねえねえ、6体の魔物ってもしかして……あれのこと?」
確かに、歩斗がミッションをクリアするために必要な魔物の数と一致するのだが……やっぱりその見た目が気になって仕方無く、何歩か前に進んでポイズワロウの横に移動した。
隣にやってきた歩斗の表情を見て、ついにポイズワロウが真相を語り出した。
「詳しく話してる時間はないロウ。ざっくり説明するが、この毒多島に棲息する魔物の中で最も強いのが毒ツバメ族だロウ。つまりオレやアイツらで、その役目はあの宝箱の中身を守ることだロウ……」
ポイズワロウの黄色く輝く目は真っ直ぐに宝箱を見据えていた。
「それ以外の魔物たちは言わば“ザコ”として扱われ、毒ツバメ族の雑用としてこき使われていたんだロウ。オレはそれが……」
話の途中で言い淀むポイズワロウ。
でも、6年生になり少しだけ大人になった歩斗は、“察する”というスキルを少しだけ会得しており、「それで、それで!」なんて野暮な催促はしなかった。
さっきの戦いでも、ポイズワロウはリーダーとして他の仲間を必死で守ろうとしていた。
つまり、この島でエリート的存在である毒ツバメ族として生まれたポイズワロウだったが、それより戦力が劣るというだけで他の魔物たちがこき使われているのを見過ごせなかったのかも……と察するのが歩斗の限界。
なんであの大きな毒ツバメが「落ちこぼれ」と言ったのかって事までは──。
「ポズーッ!!」
「ひぃっ!?」
突然、宝箱の上で足を休めていた毒ツバメの親玉が歩斗たちに向かって飛びかかってきた。
悲鳴をあげながら何とか避ける歩斗……が、しかし。
「ポイズワロウぉぉぉ!!」
親玉のクチバシ体当たり攻撃をもろに食らったポイズワロウはそのまま地面に落下。
なんと『78』という大ダメージの白煙が立ち上る。
ここに来るまでの間に歩斗が回復の矢を撃っていたため、なんとか瀕死には至らなかったものの、
「や、やばくないっ!?」
怯えるケリッツ。
歩斗もスララスも体を凍り付かせてしまうほど、その数字のインパクトは大きかった。
「ポーッ、ズッズッズ! 相変わらず体力だけはバカみたいにあるなポズ」
いつの間にか宝箱の上に戻っていた親玉が吐き捨てるように言った。
しゃがみ込んでポイズワロウの様子を確認する歩斗。
スララスも不安げな表情で見つめている。
「し、心配するなロウ……。アイツの言うとおり、体力だけは自信あるからなロウ……」
ポイズワロウは苦しみながらもフフッと歩斗に向かって笑いかけた。
「いやでも、もう一度同じ攻撃を食らったらさすがに……!」
「イムイムゥ……!」
「それはそうだロウ。だったら、攻撃を食らう前にやっつければいいだけだロウ。オレは知ってロウ、弓の名手と勇敢なブルルン戦士をな……!」
ポイズワロウは歩斗、そしてスララスの顔を交互に見ながらニヤリと笑った。
この先に何が待ち受けているのか分からない不安を振り払うように、歩斗はこの島に転移してきた経緯を、ケリッツは毒消し草が必要でここへ来たことを、あえて軽い調子で口にした。
ポイズワロウは「なるほどロウ」と相槌を打つものの、基本クチバシを閉じたまま多くを語ろうとはしなかった。
「そう言えば、残りの仲間たちにちゃんと伝えとかなくてよかったの?」
歩斗は、ふと思い浮かんだ素朴な疑問を目の前を飛ぶポイズワロウに投げかけた。
「ああ、大丈夫だロウ。オレがお前らと一緒にこの森に入って行く、それだけで意思は十分伝わっているはずだロウ……」
そう答えながらポイズワロウが意味ありげな表情を浮かべたその時。
「ポーッ、ズッズッズ!!」
前方から聞こえて来たのは、あまりにもクセの強すぎる笑い声。
「な、なにいまの!?」
「イムイムゥ……?」
歩斗たちは思わず立ち止まりそうになったが、構わず飛び続けるポイズワロウに引っ張られるように歩き続けた。
すると、森を抜けたのか急に視界が開けた場所にたどり着いた。
いや、そのすぐ向こうや両サイドにも木々が生い茂っており、恐らくここは森の中にポツンと出来たオープンスペース……なんてことより気になるのは──。
「えっ!? ポイズワロウが1、2、3……6体も居る!?」
そう。
正確に言うとポイズワロウに似た魔物が6体。
サイズは小さな公園ほどの円形スペース。
その中央にやたら豪華な装飾が施された宝箱が置いてあり、それを守るかのように毒ツバメタイプの魔物が「ポーッ、ズッズッズ!」と鳴きながら飛び回っている。
その中でも一際大きな奴がスーッと宝箱の上に着地し、歩斗たちに向かってクチバシを開いた。
「なんだオマエら? この宝を狙って来たのか……って、ん? おいおい、ポイズワロウじゃねーか。落ちこぼれが何しに来たんだポーズッズ!!」
その言葉に呼応するように、他の5体も上空を旋回しながら不気味に笑い出した。
「えっ? もしかして知り合い? っていうか、ポイズワロウが落ちこぼれだって!?」
驚く歩斗。
ついさっきバトルしたばかりなだけに、ポイズワロウの強さ、特に耐久力のすさまじさに関してはまだ鮮明に焼き付いている。
それが落ちこぼれだなんて……と、歩斗は目の前で翼を羽ばたかせるポイズワロウの背中を見つめたが、黙ったまま何も語ろうとしない。
「ねえねえ、6体の魔物ってもしかして……あれのこと?」
確かに、歩斗がミッションをクリアするために必要な魔物の数と一致するのだが……やっぱりその見た目が気になって仕方無く、何歩か前に進んでポイズワロウの横に移動した。
隣にやってきた歩斗の表情を見て、ついにポイズワロウが真相を語り出した。
「詳しく話してる時間はないロウ。ざっくり説明するが、この毒多島に棲息する魔物の中で最も強いのが毒ツバメ族だロウ。つまりオレやアイツらで、その役目はあの宝箱の中身を守ることだロウ……」
ポイズワロウの黄色く輝く目は真っ直ぐに宝箱を見据えていた。
「それ以外の魔物たちは言わば“ザコ”として扱われ、毒ツバメ族の雑用としてこき使われていたんだロウ。オレはそれが……」
話の途中で言い淀むポイズワロウ。
でも、6年生になり少しだけ大人になった歩斗は、“察する”というスキルを少しだけ会得しており、「それで、それで!」なんて野暮な催促はしなかった。
さっきの戦いでも、ポイズワロウはリーダーとして他の仲間を必死で守ろうとしていた。
つまり、この島でエリート的存在である毒ツバメ族として生まれたポイズワロウだったが、それより戦力が劣るというだけで他の魔物たちがこき使われているのを見過ごせなかったのかも……と察するのが歩斗の限界。
なんであの大きな毒ツバメが「落ちこぼれ」と言ったのかって事までは──。
「ポズーッ!!」
「ひぃっ!?」
突然、宝箱の上で足を休めていた毒ツバメの親玉が歩斗たちに向かって飛びかかってきた。
悲鳴をあげながら何とか避ける歩斗……が、しかし。
「ポイズワロウぉぉぉ!!」
親玉のクチバシ体当たり攻撃をもろに食らったポイズワロウはそのまま地面に落下。
なんと『78』という大ダメージの白煙が立ち上る。
ここに来るまでの間に歩斗が回復の矢を撃っていたため、なんとか瀕死には至らなかったものの、
「や、やばくないっ!?」
怯えるケリッツ。
歩斗もスララスも体を凍り付かせてしまうほど、その数字のインパクトは大きかった。
「ポーッ、ズッズッズ! 相変わらず体力だけはバカみたいにあるなポズ」
いつの間にか宝箱の上に戻っていた親玉が吐き捨てるように言った。
しゃがみ込んでポイズワロウの様子を確認する歩斗。
スララスも不安げな表情で見つめている。
「し、心配するなロウ……。アイツの言うとおり、体力だけは自信あるからなロウ……」
ポイズワロウは苦しみながらもフフッと歩斗に向かって笑いかけた。
「いやでも、もう一度同じ攻撃を食らったらさすがに……!」
「イムイムゥ……!」
「それはそうだロウ。だったら、攻撃を食らう前にやっつければいいだけだロウ。オレは知ってロウ、弓の名手と勇敢なブルルン戦士をな……!」
ポイズワロウは歩斗、そしてスララスの顔を交互に見ながらニヤリと笑った。
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