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第1章 ロフミリアの3つの国
第29話 経験値争い
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直樹は、トイレに行くついでに寝室から銀貨、そしてポブロトから貰った(正確に言うと後払いで買った)アイテムが詰まった布袋を取ってきた。
リビングに戻ると、弓矢を持った歩斗、そしてピンクゴールドの剣を手にした優衣がいつでも冒険に行けるとばかりの臨戦態勢で待っていた。
「二人とも、無理はしないようにね」
「はーい!」
「おう!」
母の言葉に元気よく答える子ども達。
「ねえあなた、飲み物とか持って行った方がいいんじゃない?」
「おっ、そうだな」
直樹はキッチンの冷蔵庫の中から水とお茶のペットボトルを取ってアイテム袋の中に入れると、リビングの窓際でやる気満々の子ども達と合流した。
「じゃあママ、留守番よろしく」
「うん。朝ご飯作って待ってるから、みんな頑張って来てね!」
「ほーい! がんばって何とかかんとか持って帰ってくる!!」
「ユイ、隠れみのモウフな!」
「歩斗、隠れみのオーブな」
「にゃーん!」
そんなゆるいノリで親子の冒険旅の幕が開けた。
3人と1匹がリビングから外へと飛び出すと、異世界の森は夜の闇に包まれていた。
「うわっ、まっ暗だ~」
「ふっふっふ。パパに任せなさい」
直樹はアイテム袋の口を開き、中からゴムバンド付きのライトを取りだす。
ポブロトから貰った便利アイテムの1つ……ではなく、元から涼坂家にあったもの。
前に買った防災セットの中にあった記憶を呼び覚まし、直樹が自分で袋の中に入れておいたのだ。
「これをこうして……」
直樹はゴムバンドを頭に装着し、ライトのスイッチを入れた。
小さいながらも明かりは結構強力で、照らす範囲もなかなか広かった。
「おお、すげぇ! 見える、見えるぞ!!」
歩斗は明かりの照らす先へと駆けていった。
「おいおい、一人で行っちゃダメだろって……!」
直樹は急いで小さな背中を追いかけた。
「にゃーん!」
ささみも直樹に続く。
「あっ、待って~。わたしも行く~……んじゃ行ってきまーす!}
優衣は家の中から見守っていた香織に向かって手を振り、クルッと体を反転させて直樹の明かりを目指して走り出した。
「ったく、俺たちパーティーなんだから一人で飛び出しちゃだめだろ」
「てへっ、ごめんさーい」
「ははっ、お兄ちゃん怒られてやんの~」
「うっせぇ! って、ねえパパ、なんとかオーブがあるのはどっち??」
「えっと……うちのリビングは確か北の方を向いてるんだから、このまま行けば良いんじゃ……」
涼坂家一行の現在地は、リビングから飛び出して森を少し行った辺り。
父であり、このパーティーのリーダーたる直樹がどんぶり勘定で適当に進もうとしたその時。
ささみが思いきりジャンプして直樹の体にしがみつく。
「うわっ、どうしたささみ? 急にかまって欲しくなったのか? ったく、可愛いやつめ……」
「違うっぽいよパパ。ささみ、その袋の中から何か出してくれ~、って言ってるみたいじゃない?」
確かに、ささみは左手でアイテム袋にしがみつき、右手で袋の表面をカリカリしている。
「何かってなんだ? エサは入って無いぞ……って、そうか! ごめんごめん、ささみ」
直樹は、片手で優しくささみのお腹を持って地面に降ろしてあげると、アイテム袋の中からロフニスに書いて貰った地図を取りだした。
歩斗と優衣、そしてささみにも見えるようにと直樹はその場にしゃがみ込んで、ヘッドライトの明かりを地図に向けた。
「えっと、この四角いのがうちのリビングかな。で、このモジャモジャしてるのが……」
「この森!」
優衣が早押しクイズに答えるように叫んだ。
直樹とささみは同時にコクリと頷く。
「うん。そうだろうな。で、森のずっと上のほうにあるこれは……」
「山だよ! デカそう!!」
次に早押しボタンを押したのは歩斗だった。
再び、直樹とささみは同時にコクリと頷く。
地図の一番上に黒く塗られた縦長の三角形、つまりこの森からずっと北に行った先に歩斗が言うとおり大きな山の絵が描かれている。
森と山の間のスペースはザザザとボールペンで薄く塗りつぶされており、そのスペースに向かって矢印が描かれていて『地面が紫色になったら、そこからが北の大地』と、ロフニスの文字が添えられていた。
紫色の地面を表している部分の中央辺りを横切る波線は恐らく川。
その川に向かって引かれた矢印には『橋は絶対に渡ってはだめ。そこから先は本当に危険。隠れみのオーブがあるのはその橋の手前周辺にある地下ダンジョンの中』といった説明書き。
「しかしこれ、ササッと書いていたように見えたけど凄くわかりやすい地図だな。大したもんだ」
直樹が感心していると、優衣がロフニスに代わって「へへへっ」とドヤ顔。
「とにかく、ここから北の方に向かって行けば紫色の地面ってやつにたどり着くだろうから、とりあえず進んでみよう」
と言いつつ、リビングを出て何となく真っ直ぐ歩いてここまで来たからそのまま突き進めば良かったのだが、一旦立ち止まってしまったことで、直樹は進行方向を微妙に見失っていた。
「えっと……こっちだったっけ」
勘で進もうとする直樹。
それを見かねたささみが、
「にゃーん!」
と鳴きながら、自信満々に尻尾を立てて歩き出した。
それは、直樹が行こうとした方向とは90度違う方角。
「おっ、そうそう。さすがささみさん。こっちこっち、北はこっちだよな」
しれっと尻尾の後ろをついていく直樹。
「あれ? パパ、こっちの方に行こうとしてなかったっけ?」
痛いところを突こうとする優衣。
「違うよ、最初からささみと同じ方向に行こうとしてたよ! ねえ、パパ。そんな全然違う方なんか行こうとするわけ無いよね?」
助け船を出す歩斗。
「お、おお、してたしてた。パパは方向感覚の鋭さには自信があるからな。ハハッ、ハハハハハ」
乾ききった笑いを夜の森に吐き出しながら、この冒険についてきてくれた優秀過ぎる愛猫に対して心から感謝する直樹。
そんなこんなで涼坂家パーティーは、いたって朗らかに森の中を歩き続けた。
「もっと時間に余裕があれば、北の大地に挑む前にリビングの周辺で弱い敵と戦って経験値稼ぎでもしたいとこなんだけどなぁ……。仕事の時間もあるし、何よりミリゼアの調査団が午前中に来ることを考えたら、とにかく急いで〈隠れみのオーブ〉を手に入れて戻らなきゃならないけど……」
歩きながらつぶやいた直樹の長い独り言が呼び水になったかのように、
ガサゴソガサ
と、近くの草むらが小刻みに揺れた。
「気を付けろ! 何か来るぞ!」
「にゃーん!」
直樹は両手で魔法の杖を構えながら、ささみはヒゲをピーンと伸ばしながら、後ろからついてくる歩斗と優衣に警戒を促す。
すると、草むらからスライムがぴょーんと飛び出してきた。
「あっ、スララス!? ……じゃない。黒いもん」
仲間のスライムと勘違いして近づいて行こうとした歩斗に向かって、名も無き黒スライムは体当たり攻撃を仕掛けてきた。
「歩斗あぶな──」
「とりゃぁぁ!!」
直樹の声を優衣の咆哮がかき消した。
ピンクゴールドの剣を両手で握りしめた優衣が歩斗の前に飛び出し、ズバッと黒スライムに向かって剣を振り下ろした。
「イムゥゥゥl」
スライムの体から『24』の数字煙が飛び出し、断末魔の叫びと共に姿を消して銀貨3枚が地面にポトリと落ちた。
「やりぃぃ!」
ガッツポーズを決める優衣。
娘の剣技に驚く直樹。
「さ、サンキューな」
歩斗は少し照れくさそうな顔を妹に向ける。
「でも、助けられてばかりじゃ全然経験値稼げないから次に敵が出てきた時は──」
ガサゴソガサ……からの別の黒スライム登場。
優衣は条件反射的に剣で攻撃。またもや瞬殺だった。
「にゃーん!」
すごいや……とばかりに小さな剣士を称えるささみ。
しかし、歩斗の顔は見る見る内に不満の赤に染まっていった。
「……おい、ユイばっかりずるいぞ! これじゃ、ボクが全然レベルアップしないじゃんか!」
「え~? わたしはただ、敵が出てきたから倒しただけなのに」
ほのかに兄妹ゲンカの火種がくすぶり始める。
優衣の行動に当然問題は無いが、歩斗の言い分も分からないでもないんだよな……と、レベル1の直樹は頭を悩ませた。
まあでも、タイムリミットが迫った状況において、一番レベルの高い優衣の力でガンガン進んで行くのが正攻法っちゃあ正攻法だよな……と、直樹は考えている中で、さっき魔物の国の少女ユセリが歩斗にしていたアドバイスの件をふと思い出した。
「なあ、歩斗」
「なに……?」
「ユセリって子が言ってたろ。レベルが低い内は回復役に徹しろって。それに、歩斗が持ってるその矢は回復用だとも言っていた。ってことはだ。歩斗はとりあえず攻撃じゃなくて回復で経験値を稼げばいいんじゃないか? たぶん、回復することでも経験値は貰えるはず──」
「おお! そうだったっけ! よっっしゃ、そんじゃ回復しまくるぜぇ!」
歩斗は食い気味に納得して、素直にやる気をみなぎらせた。
そしてしばらく歩くと、またスライムが現れた。
それを優衣が瞬殺。
次に現れた敵を、今度はささみが瞬殺。
次は優衣。
その次はささみ……と、常に瞬殺決着の結果、優衣とささみはそれぞれレベルを1ずつアップさせ、レベルアップ隊に祝って貰っていた。
獲得経験値ゼロの直樹と歩斗は当然相変わらずのレベル1。
自分はともかく、回復役に徹すればいいんじゃないか作戦が全く機能せず、しょんぼり肩を落としてる息子の姿にほんのり罪悪感を覚えた直樹は、プランBに移行する決意を固めた。
「よし、次に敵が現れたら、俺一人で戦うからな。そしたら瞬殺はできないだろうからダメージを食らうことになる。だから回復頼むぞ歩斗!」
「おう、任せて!!」
と、言ったそばから草むらガサゴソガサ。
からの……敵登場!
「えっ……?」
直樹は絶句した。
なぜなら目の前に現れた敵は、スライムのサイズとは比べものにならないほど巨大だったのだ……。
リビングに戻ると、弓矢を持った歩斗、そしてピンクゴールドの剣を手にした優衣がいつでも冒険に行けるとばかりの臨戦態勢で待っていた。
「二人とも、無理はしないようにね」
「はーい!」
「おう!」
母の言葉に元気よく答える子ども達。
「ねえあなた、飲み物とか持って行った方がいいんじゃない?」
「おっ、そうだな」
直樹はキッチンの冷蔵庫の中から水とお茶のペットボトルを取ってアイテム袋の中に入れると、リビングの窓際でやる気満々の子ども達と合流した。
「じゃあママ、留守番よろしく」
「うん。朝ご飯作って待ってるから、みんな頑張って来てね!」
「ほーい! がんばって何とかかんとか持って帰ってくる!!」
「ユイ、隠れみのモウフな!」
「歩斗、隠れみのオーブな」
「にゃーん!」
そんなゆるいノリで親子の冒険旅の幕が開けた。
3人と1匹がリビングから外へと飛び出すと、異世界の森は夜の闇に包まれていた。
「うわっ、まっ暗だ~」
「ふっふっふ。パパに任せなさい」
直樹はアイテム袋の口を開き、中からゴムバンド付きのライトを取りだす。
ポブロトから貰った便利アイテムの1つ……ではなく、元から涼坂家にあったもの。
前に買った防災セットの中にあった記憶を呼び覚まし、直樹が自分で袋の中に入れておいたのだ。
「これをこうして……」
直樹はゴムバンドを頭に装着し、ライトのスイッチを入れた。
小さいながらも明かりは結構強力で、照らす範囲もなかなか広かった。
「おお、すげぇ! 見える、見えるぞ!!」
歩斗は明かりの照らす先へと駆けていった。
「おいおい、一人で行っちゃダメだろって……!」
直樹は急いで小さな背中を追いかけた。
「にゃーん!」
ささみも直樹に続く。
「あっ、待って~。わたしも行く~……んじゃ行ってきまーす!}
優衣は家の中から見守っていた香織に向かって手を振り、クルッと体を反転させて直樹の明かりを目指して走り出した。
「ったく、俺たちパーティーなんだから一人で飛び出しちゃだめだろ」
「てへっ、ごめんさーい」
「ははっ、お兄ちゃん怒られてやんの~」
「うっせぇ! って、ねえパパ、なんとかオーブがあるのはどっち??」
「えっと……うちのリビングは確か北の方を向いてるんだから、このまま行けば良いんじゃ……」
涼坂家一行の現在地は、リビングから飛び出して森を少し行った辺り。
父であり、このパーティーのリーダーたる直樹がどんぶり勘定で適当に進もうとしたその時。
ささみが思いきりジャンプして直樹の体にしがみつく。
「うわっ、どうしたささみ? 急にかまって欲しくなったのか? ったく、可愛いやつめ……」
「違うっぽいよパパ。ささみ、その袋の中から何か出してくれ~、って言ってるみたいじゃない?」
確かに、ささみは左手でアイテム袋にしがみつき、右手で袋の表面をカリカリしている。
「何かってなんだ? エサは入って無いぞ……って、そうか! ごめんごめん、ささみ」
直樹は、片手で優しくささみのお腹を持って地面に降ろしてあげると、アイテム袋の中からロフニスに書いて貰った地図を取りだした。
歩斗と優衣、そしてささみにも見えるようにと直樹はその場にしゃがみ込んで、ヘッドライトの明かりを地図に向けた。
「えっと、この四角いのがうちのリビングかな。で、このモジャモジャしてるのが……」
「この森!」
優衣が早押しクイズに答えるように叫んだ。
直樹とささみは同時にコクリと頷く。
「うん。そうだろうな。で、森のずっと上のほうにあるこれは……」
「山だよ! デカそう!!」
次に早押しボタンを押したのは歩斗だった。
再び、直樹とささみは同時にコクリと頷く。
地図の一番上に黒く塗られた縦長の三角形、つまりこの森からずっと北に行った先に歩斗が言うとおり大きな山の絵が描かれている。
森と山の間のスペースはザザザとボールペンで薄く塗りつぶされており、そのスペースに向かって矢印が描かれていて『地面が紫色になったら、そこからが北の大地』と、ロフニスの文字が添えられていた。
紫色の地面を表している部分の中央辺りを横切る波線は恐らく川。
その川に向かって引かれた矢印には『橋は絶対に渡ってはだめ。そこから先は本当に危険。隠れみのオーブがあるのはその橋の手前周辺にある地下ダンジョンの中』といった説明書き。
「しかしこれ、ササッと書いていたように見えたけど凄くわかりやすい地図だな。大したもんだ」
直樹が感心していると、優衣がロフニスに代わって「へへへっ」とドヤ顔。
「とにかく、ここから北の方に向かって行けば紫色の地面ってやつにたどり着くだろうから、とりあえず進んでみよう」
と言いつつ、リビングを出て何となく真っ直ぐ歩いてここまで来たからそのまま突き進めば良かったのだが、一旦立ち止まってしまったことで、直樹は進行方向を微妙に見失っていた。
「えっと……こっちだったっけ」
勘で進もうとする直樹。
それを見かねたささみが、
「にゃーん!」
と鳴きながら、自信満々に尻尾を立てて歩き出した。
それは、直樹が行こうとした方向とは90度違う方角。
「おっ、そうそう。さすがささみさん。こっちこっち、北はこっちだよな」
しれっと尻尾の後ろをついていく直樹。
「あれ? パパ、こっちの方に行こうとしてなかったっけ?」
痛いところを突こうとする優衣。
「違うよ、最初からささみと同じ方向に行こうとしてたよ! ねえ、パパ。そんな全然違う方なんか行こうとするわけ無いよね?」
助け船を出す歩斗。
「お、おお、してたしてた。パパは方向感覚の鋭さには自信があるからな。ハハッ、ハハハハハ」
乾ききった笑いを夜の森に吐き出しながら、この冒険についてきてくれた優秀過ぎる愛猫に対して心から感謝する直樹。
そんなこんなで涼坂家パーティーは、いたって朗らかに森の中を歩き続けた。
「もっと時間に余裕があれば、北の大地に挑む前にリビングの周辺で弱い敵と戦って経験値稼ぎでもしたいとこなんだけどなぁ……。仕事の時間もあるし、何よりミリゼアの調査団が午前中に来ることを考えたら、とにかく急いで〈隠れみのオーブ〉を手に入れて戻らなきゃならないけど……」
歩きながらつぶやいた直樹の長い独り言が呼び水になったかのように、
ガサゴソガサ
と、近くの草むらが小刻みに揺れた。
「気を付けろ! 何か来るぞ!」
「にゃーん!」
直樹は両手で魔法の杖を構えながら、ささみはヒゲをピーンと伸ばしながら、後ろからついてくる歩斗と優衣に警戒を促す。
すると、草むらからスライムがぴょーんと飛び出してきた。
「あっ、スララス!? ……じゃない。黒いもん」
仲間のスライムと勘違いして近づいて行こうとした歩斗に向かって、名も無き黒スライムは体当たり攻撃を仕掛けてきた。
「歩斗あぶな──」
「とりゃぁぁ!!」
直樹の声を優衣の咆哮がかき消した。
ピンクゴールドの剣を両手で握りしめた優衣が歩斗の前に飛び出し、ズバッと黒スライムに向かって剣を振り下ろした。
「イムゥゥゥl」
スライムの体から『24』の数字煙が飛び出し、断末魔の叫びと共に姿を消して銀貨3枚が地面にポトリと落ちた。
「やりぃぃ!」
ガッツポーズを決める優衣。
娘の剣技に驚く直樹。
「さ、サンキューな」
歩斗は少し照れくさそうな顔を妹に向ける。
「でも、助けられてばかりじゃ全然経験値稼げないから次に敵が出てきた時は──」
ガサゴソガサ……からの別の黒スライム登場。
優衣は条件反射的に剣で攻撃。またもや瞬殺だった。
「にゃーん!」
すごいや……とばかりに小さな剣士を称えるささみ。
しかし、歩斗の顔は見る見る内に不満の赤に染まっていった。
「……おい、ユイばっかりずるいぞ! これじゃ、ボクが全然レベルアップしないじゃんか!」
「え~? わたしはただ、敵が出てきたから倒しただけなのに」
ほのかに兄妹ゲンカの火種がくすぶり始める。
優衣の行動に当然問題は無いが、歩斗の言い分も分からないでもないんだよな……と、レベル1の直樹は頭を悩ませた。
まあでも、タイムリミットが迫った状況において、一番レベルの高い優衣の力でガンガン進んで行くのが正攻法っちゃあ正攻法だよな……と、直樹は考えている中で、さっき魔物の国の少女ユセリが歩斗にしていたアドバイスの件をふと思い出した。
「なあ、歩斗」
「なに……?」
「ユセリって子が言ってたろ。レベルが低い内は回復役に徹しろって。それに、歩斗が持ってるその矢は回復用だとも言っていた。ってことはだ。歩斗はとりあえず攻撃じゃなくて回復で経験値を稼げばいいんじゃないか? たぶん、回復することでも経験値は貰えるはず──」
「おお! そうだったっけ! よっっしゃ、そんじゃ回復しまくるぜぇ!」
歩斗は食い気味に納得して、素直にやる気をみなぎらせた。
そしてしばらく歩くと、またスライムが現れた。
それを優衣が瞬殺。
次に現れた敵を、今度はささみが瞬殺。
次は優衣。
その次はささみ……と、常に瞬殺決着の結果、優衣とささみはそれぞれレベルを1ずつアップさせ、レベルアップ隊に祝って貰っていた。
獲得経験値ゼロの直樹と歩斗は当然相変わらずのレベル1。
自分はともかく、回復役に徹すればいいんじゃないか作戦が全く機能せず、しょんぼり肩を落としてる息子の姿にほんのり罪悪感を覚えた直樹は、プランBに移行する決意を固めた。
「よし、次に敵が現れたら、俺一人で戦うからな。そしたら瞬殺はできないだろうからダメージを食らうことになる。だから回復頼むぞ歩斗!」
「おう、任せて!!」
と、言ったそばから草むらガサゴソガサ。
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「えっ……?」
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