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『高慢な悪役令息なのか?俺は…』
しおりを挟む何もかもが馬鹿らしい。
高位貴族に媚を売る奴らも、高位貴族だからと高慢に振る舞う奴らも、平民だからと馬鹿にする奴らも、使用人に対して横暴に振る舞う奴らも
みんなみんな馬鹿みたいだ。
産まれが尊い血筋だったからといって、お前は一体何様なんだと言いたくなる時がある。
金や権力を持っていること、確かに生きる上であると便利だとは思う。
だけど、それが他人を見下していい理由にはならないんじゃないか?
…皆が平等に生きる社会などはあり得ないと、俺もわかっている。
毎日を怠惰に生きていようが、勤勉に生きていようが、産まれた場所や生まれ持った才能で違ってくることも理解している。
確かに俺は産まれた時から何一つ不便を強いられた事はない。
疲れたと思い顔を上げればお茶のセットが運ばれてくるような生活を享受して生きてきた。
けれど、だからと言って使用人に対して無闇矢鱈に絡んだりしない。
そう、俺の父のように…母のように…兄の様に高慢に振る舞い絡む様なことはしたことがない。
けれど四人中三人が高慢な振る舞いをしていると、俺も同じような色眼鏡で見られるのだ。
まぁ…横暴な態度は取らない暴言暴力はしない言わないそんな当たり前のことはしていたが、誰かを助けるだとかフォローしてあげるとかの行動も一切しなかった俺も同罪なのかもしれない。
誰かが言っていた言葉がある。
『見て見ぬふりをしてる方も同じなのよ?』
一体誰がいつ言ったのかはわからないが、言い得て妙だと思った。
ただただ毎日がくだらなくて馬鹿らしい。
自分は周りとは違うんだと心の中で思いつつ周りを馬鹿にしている様は、俺の嫌いな両親と兄と全く同じでそんな俺自身も嫌になる。
…そんな俺が学園に入学してうまくやれるはずもなかった。
周りの人は皆馬鹿だ能無しだと無意識のうちに思い表面上だけの関係を続けた結果…一人の女性のせいで俺は殺されてしまった。
そう、俺は殺されたのだ。
何を言ってるんだと思うだろう?じゃぁ今話してるお前は何なんだと思っただろう?
それは俺の方が聞きたい。
あの学園生活が、あの恋をした自分が、…首を刎ねられた感覚が、夢まぼろしだったとは到底思えない。
一体これはどうなってるんだ?
俺はさっき死んだのだが、気づけば学園の入学式の最中だったのだ。
幼い頃から身に付けた微笑のままに、俺は動揺しつつも学園長の挨拶を聞くフリをする。
その内容も…自信はないが同じ事を言っている様な気がする。
…。
そうだ、この入学式の最中に…!
と、俺がある事を思い出した瞬間にホールの扉が大きな音を立てて開いた。
「すみません!遅刻しましたぁ!」
そう、これが俺…アリストが初めてあの女を知った出来事である。
あの夢…での俺は、この女に殺される事になるなんて最後の最後まで知らなかったのだ。
夢で見た彼女は明るく元気で破天荒で…傷付きやすく可愛い女という印象だったが、今の俺からすれば死神か悪魔の様に見えた。
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そんな俺は知らなかった、この世界が『乙女ゲーム』の世界だと言う事を。
そこであの女は『主人公』と呼ばれる存在であり、俺は『悪役令息』とよばれる存在だと言う事を。
この先に待ち受ける不思議な出来事を、知る由もなかったのだ。
まぁ…たとえ知っていたとしても、多分俺は同じ行動をとっていたと思うがな。
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