14 / 37
疫病の旅編
誤解と人選ミスと和解と疑問
しおりを挟む「そんなことは嘘よ!だって村長さんはトミニに荷造りって言ってたし、神官の人がトミニに対して他の村の話してたし、結婚式の話だってしてたの聞いたんだから!」
私はその発言を聞いて目が点になった。
どう言うことだ?村長息子はついてくるのか?乗り気じゃなかったけど実は乗り気だったのか?そう言った言葉が脳内をぐるぐると回る。
私の夫二人も『え?』『どう言う事だよ?』と不思議そうな顔をしているし、ティルは来て早々『修羅場到来!どうする聖女!』とか言って一人で笑っている。
…ティルはもう少し状況を選んで発言してほしい。
「よく意味がわからないんだけど…私はトミニと婚姻する気もないし、もちろん結婚式もしないわ。荷造りの件も知らないし…うん。もう、意味が分からないしトミニに聞きにいきましょう」
そう言ってトミニがいる場所へと移動する事にした。
夫のことを言われた時は瞬間的に頭に血が登りカッとなってしまったが、一先ずことの審議をはっきりさせないと話は平行線のままだし、今のままだとお互いに疲れるだけで意味がない。
あと、これ以上私の夫達にヘイトが向くのも嫌だったしね。
「すみません突然大人数でお邪魔してしまって」
「い、いえ?どうしました?あれ?ミルル?ん?」
突然たくさんの人たちが自分を訪ねて来たことに吃驚しているトミニは、私の後ろで怒っている表情の女性を見てさらに驚いていた。
「ねぇ!トミニはこの聖女についてこいって言われて迷惑してるのよね!?私と婚姻するっていったもんね?!」
「えっと、え?あの…」
女性の言葉に目を白黒とさせるトミニは、急にそんなことを言われたからか言葉が出てこないようだ。
トミニが動揺している姿をどう捉えたのかはわからないが、彼女はその瞳から涙をボロボロとこぼした後にどこかへと走り去ってしまった。
(…え!?走り去った!)
私は話し合いが始まる前に女性が走り去ってしまったことで動揺し、トミニは何が起きてるのかわからないと動揺し、夫達はどうしたらいいのか分からずに動揺していた。
この場にいる誰もが動揺している時、ティルがボソッと呟いた『追いかけたほうがいいんじゃないの?そんなこともわからないわけ?』と言う言葉がこの場にやけに大きく響いた。
その言葉を聞いたトミニは動揺したまま、コチラをチラチラと見つつも女性を追いかけていった…が、残された私たちはどうしたものかと顔を見合わせる事となった。
それから私たちは誰が何かを言うことも無く解散し、元の作業に戻って旅支度を再開した。
☆
「「すみませんでした!」」
数時間経った頃、彼女とトミニが私達の所にやってきた。
私と夫に対して深く深く頭を下げながら謝ってくれた。
どうやら彼女の思い違いのようなものが解決したらしい。
「いや、私はいいけど…レイとヴェルはどう?許さないなら別にいいけど」
私がレイにそう聞くと『いえ、誤解が解けたのならいいです』と言われた。ヴェルは納得いかないような表情をしてたが静かに頷いた。
そして私は顔が見るからに青ざめてしまっている女性に対し、さっきの話の中で気になった事を聞くことにした。
(罵倒された時ちょっと気になる事があったんだよね)
私があの時女性に言われたことを改めて聞くと、女性は自分が言ったことの酷さを改めて実感したのか少し声を震わせながら話し始めた。
…攻めたくて聞いたわけじゃないので、私はなんだか少し申し訳ない気持ちになったが…やっぱり気になることは気になるのだ。
思いながら話してゆく女性の話は辿々しく、要領もえない感じだったが流れはこんな感じだったらしい。
まず始まりは『トミニを聖女様の夫にする』と村長が言ってたのを周りが聞いていた事が発端だったらしい。
心配した住民が女性に対して『トミニと別れたのか?』と聞いてきたのだが、当然女性はそんな話は知らないのでトミニに聞くが『そんな事実はない』と言われる。
その時はそうだよねと安心したがその後、偶然神官の人がトミニと『村で生活する時の注意点』などを話してる事を聞いてしまう。
女性は何故そんな話をしてるのが意味が分からなく…なんだか気になったので、その後はトミニの後ろをついて回ったらしい。
そうすると、聖女の夫のティルと言う男の子にトミニが『結婚…』と結婚について話してるのが聞こえた。遠くで聞いていたのでよく聞こえないが結婚というワードだけは耳に入ったらしい。
その時のトミニの様子は見た事もない程真剣な顔をしていたそうだ。
彼女は聖女の夫に結婚の話題を振るという事は…と、顔を青ざめさせたそう。
そしてその後トミニが家に帰って言ったのだが、玄関口で村長に『荷造りは…』と言われているのを聞いてしまい、やはりトミニに嘘をつかれたんだと改めて思ったそう。
そして女性は混乱した気持ちのまま、村の端にある井戸の近くで座り込んでいたらしいのだが、その時に神官が話してる内容が耳に入ったらしい。
女性がいることに気づいていたかは知らないが、神官は聖女について話をしていたのでつい聞き耳を立ててしまったそうだ。
その内容はなかなかにひどい話で、その話を聞いたことで彼女は『トミニが無理矢理連れていかれる!』と思い込んだらしい。
『聖女は醜い夫を名声あげに使っている』
『聖女はそばにいる神官に力を使わせている』
『村にいる見目がいい男を無理矢理愛人にしている』
そんな内容が次々と神官の口から出てくることに驚いた女性は、聖女とはただの名前だけのお飾りで男好きのとんでもない人なんだと思ったそう。
そして、その話を聞いて腹の底から怒りが沸々と湧いて来てしまい、そのままの勢いで私に突撃したそうだ。
その話を聞き終わったところで、後ろにいたティルが口を開いた。
「俺、そいつに確かに結婚について聞かれたんだけどさぁ、内容は聖女とか一言も話してねーよ?そいつは好きな女がいるけど結婚するなら違う村に行きたいから断られたらどうしようっていうからさぁ、知らねーよ、聞く相手間違ってんだろって話しただけだぞ?」
(…なぜティルにそんな事を聞いたのか私は凄く気になる…これについては人選間違いな気がする。)
両目を瞑りながら私が考えてると、ヴェルが少し怒った口調で話し始めた。
「あの、ひどい噂してた神官って誰かわかりますか?俺、許せないんすけど」
「え、えっと。顔は見ていなくて…でも、女性の声でした。聞いたらわかるかもしれません…」
ヴェルは話を聞きながらずっと静かに怒っていたのだ。女性はヴェルの表情を見て、しどろもどろになりつつ返事をしてくれたが、かわいそうに体がふるふると震え始めてしまった。
私はヴェルに対して『大丈夫だから、彼女に怒っても仕方がないから、ね?』と言ったが『信じる方も同罪です』と怒りのオーラは鎮まらなかった。
女性は何度も震えながら「すみません…本当にすみません」と半泣きで言っていた。
女性の謝罪がシン…としずまる中で酷く大きく響く中、ティルがボソッと『神官に女性って二人しかいないけど、一人は喋れないぜ?』と言った。
私たちと神官達は馬車も違うし泊まる場所も違うし、村にいる時もそこまで一緒に何かしたりとかは無いのでそのことは知らなかったから驚いた。
そもそも私たちと神官は会話らしい会話をすることがないのだ。
ティルに対し『どうしてそんなことをしってるの?』と聞くと『俺が馬車の上で寝転んでると皆気づかないで会話し始めるから』と言った。
…危ないからそんなとこで寝ないでよと言いたかったが、また今度言うことにした。
トミニと女性の謝罪も受けたし、誤解も解けたし、とりあえずこの話はもう終わりにした。
私はあまり重苦しい雰囲気も好きじゃないし、話を聞いた感じだと誤解するのもわかるし、さっさと終わらせたかったのだ。
何度も何度も頭を下げる二人に対して終わった事だしあまり気にしないでと言いつつ、私たちは女性の神官…リュカがいる場所へと行くことにした。
なんで私のことを嫌うのか、なぜそんな噂を流すのかをこの際だからはっきり聞いておこうと思ったのだ。
(私のことだけなら別にいいけど、夫とか周りの人に実害が出るなら話は別よね)
51
お気に入りに追加
198
あなたにおすすめの小説
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
美幼女に転生したら地獄のような逆ハーレム状態になりました
市森 唯
恋愛
極々普通の学生だった私は……目が覚めたら美幼女になっていました。
私は侯爵令嬢らしく多分異世界転生してるし、そして何故か婚約者が2人?!
しかも婚約者達との関係も最悪で……
まぁ転生しちゃったのでなんとか上手く生きていけるよう頑張ります!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる