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疫病の旅編
落ち込んだり動揺したりする夫と怒りの聖女
しおりを挟む「聖女様!ありがとうございます!貴方様のおかげで村は救われました」
そう言って村長は私達へと深々と腰を折りそして、是非御礼をと言われたのだ。
何度もこういった場面には遭遇していたし毎回断っていたのだが…今回は少し困った事になったんだよね、その困った事なんだけど…。
「聖女様はとても素晴らしい女性なので夫様達を保護されているんですよね?とても素晴らしい事ですが、これでは聖女様は女性としての幸せを知る事がないままに一生を終えてしまうのじゃないかと私は心苦しいのです…。幸い私の倅のトミニはとても見目がいいと評判なんですよ!もしよければ聖女様の夫様の一人として旅へとご一緒させては貰えませんか?」
…ことの始まりは村長のこの発言から始まったのだ。
私は元々この村長があまり好きではなかった、初めから私を見てはニヤニヤ。夫たちを見ながらニヤニヤ。
本当に気分が悪かったし、自分の息子に対して高圧的な態度をとったり、神官達に対しても『あれをやれ』『これもやれ』『それもやれ』と、上から目線で命令するのだ。
そして、この発言…さも私の事を思っていますよと言うような言い方な事も癪に障るが、夫達を見下している発言や自分の息子の意見も聞かずに夫へと進める発言。
私が好きで夫達と一緒にいると言おうが、村長の中で私は『容姿が良くない男を保護してる聖女』という思い込みが無くならないのだ。
「いえ、私の事を思って言ってくれているのでしょうが大丈夫です。私は夫達を愛していますし、夫達も私を愛してくれるので…」
何度もそう言うのだが私の発言は全て右から左へと流れてしまうようだ。
(ていうか、女性としての幸せを知る事がないって決め付けてるけど…恩人だと思ってる人に対してすごいこと言うよな?言ってるだけでそもそも恩人だと思ってないのかもしれないなぁ)
夫達はこの発言をそばで聞いていたのだけど、二人とも違った反応を見せていた。
レイは『私は周りから保護対象として見られているのですね…』とひどく落ち込み、ヴェルは『女としての幸せを俺では与えられない…?』とひどく動揺していた。
そんな夫達を慰めるのは少し大変だった、私の自己肯定感を少し分けてあげたいぐらいだ。
ちなみにティルも近くで聞いていたんだけれど大爆笑していた。ヒーヒー言いながら『聖女様お辛いんですかぁー大丈夫ですかぁー』と息も絶え絶えだった。酷すぎる…ティルはもう少し優しさを覚えたほうがいい。
そして名前を出された息子本人はというと、容姿面は至って普通で性格に関しては親とは違い今の所は常識があるように見えた。
こんな親なのに吃驚するほど『至って普通に育ったな』と言う感じである。反面教師にでもなったのかもしれない。
そして愛し合っている女性も居るようで私に対して『父がすいません…僕には愛する女性がいますのでどうかお気になさらないでください…』と、私が見てわかる程に憔悴していた。
当人同士がこの話題に関して乗り気では無かったので、当然流れると思っていたのだが…まさかの事件が起きた。
私達が次の村へ行く用意をしていると一人の女性が訪ねてきたのだ。
「聖女だからってして良い事と悪い事の区別ができないんですか?!」
私がその女性の元へ行くと突然そんな事を言われたのだった。
目を白黒とさせつつその女性を見ていたのだが、そんなことはお構いなしに女性は私に対して罵声を浴びせ続ける。
「トミニがかっこいいからって無理矢理婚姻を結ぼうとするなんて最低だわ!聖女って周りからチヤホヤされてるからって良い気になってるのよね!人の気持ちを考えないアンタが聖女っておかしいのよ!この村を救ったのも本当はアンタじゃないんじゃないの!?神官の人もアンタの尻拭いが大変だって言ってたし、偽聖女なんじゃないの!?」
私は何が何だかわからないままに、女性の言う言葉をぼーっと聞いていた。
最初の方は私も『いや、そんなことはないよ』『その話はお断りしてるよ』などと言っていたのだが、全くもって話を聞かないので静かに聞いてることにしたのだった。
(トミニって村長息子のことだよね、うーん?お断りしたこと知らないのかな?あ、もしかしてこの人がトミニの言ってた愛する人なのかな?まぁ、自分の恋人が連れていかれそうになったらこんな反応になるのは頷けるのか?…いやでも、人の話は聞いてほしいや)
そんなこんなで気がつくと周りに人が集まってきていた。
「あの、あなたは誰ですか?私の妻に対して酷いことばかり言ってるみたいですが…」
そう言って話に入ってきたのはレイだ。
不機嫌な表情を隠しもせずに話に割り込んできた夫に対しても女性の罵倒は止まらない。
「ふん、名前だけの夫って聞いてますよ。その容姿だからってお情けで婚姻して貰ったんでしょ?聖女様の名声上げに使われてるのに気づいてないんですか?それともわかっているけど綺麗な人だからそばにいるんですか?」
レイを見て鼻で笑いながらそう言った女性に私はつい声を荒げてしまった。
「ちょっと!私の夫に対して失礼じゃない?何度も言ってるけど、私はトミニさんとの婚姻はお断りしています!夫のことも愛してますし、そもそも夫の言うようにあなたは一体誰なんですか?!」
夫を鼻で笑われたこともそうだが、その内容の酷さに私の怒りゲージは一気に爆発してしまったのだ。
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