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令嬢達は
しおりを挟む「何でわたくしだけがこのような目に…!」
自慢だった金色の巻き毛がふわふわと風に揺れる…今はただ、この髪の毛が邪魔で邪魔で仕方がない。
「許しませんわ。絶対許しませんわ。わたくしにこのようなことをしたアイツを絶対に許しませんわ」
丁寧に磨かれていた爪には土が間に入り込み、形が歪になってしまった爪先は二重に割れている。
「わたくし…されたことは絶対に返す性分なんですのよ…」
琥珀色の瞳が月の光に照らされ怪しく光る。
「絶対に、絶対に殺してやる…!」
その女は命尽きるその間際まで延々と呪詛を吐き続けた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
「ガーベラ ヴァイオレット!」
愛おしい…わたくしの唯一のお方。
そんな愛おしい人が何故か憤怒の表情でわたくしをみて叫ぶ。
「お前は私の大切なマリアを何処へやった!」
「あら、公爵様。あなたのマリアはそこにいますでしょう?」
わたくしの後ろで頭を下げているメイドを指差しそう言う。
「あぁ!かわいそうなマリア…またこの悪女にいじめられているんだね…」
わたくしに指さされたメイドはひどく怯え後ずさるが、後ろの壁にぶつかり逃げることが出来ない。
「かわいそうなマリアを公爵様のお部屋に連れて行き、わたくしの目が届かないようにするのがいいと思いますわ」
普通ならば怒り狂う場面だとしても、わたくしの表情は慈愛に満ちたまま。
「いや…いやです。お許しください。そんな…いやぁあああああああ!!!」
わたくしの唯一のお方に手を引かれ消えてゆくメイドは部屋に入るまで『誰か、誰か』と叫び続けたが、助ける人はこの屋敷の中には一人もいない。
「…違う形でもどってくるって言ったじゃない?」
小声でつぶやいたわたくしの声は誰に聞かれる事もなく消えていった。
ーーーーーーーーーーー
「皆さん聞きました?マリア様のことです」
一人の令嬢がいやらしい顔をしながらお茶会に参加しているメンバー一人一人へと目線を向けながら問いかける。
「聞きましたわ!化け物のような容姿をしてらっしゃる人の所へ身売りのような形で嫁いだと!」
そう発言したのはピンクゴールドの髪の毛を緩くまとめた令嬢。
「あら、わたくしはガーベラ様の夫にマリア様が寵愛されていると聞きましたわ?」
そう発言したのは群青色の髪の毛をキッチリと纏めている令嬢。
「マリア様はガーベラ様よりも愛されていないと気がすまない性分でしたものね」
そう発言したのは小麦色の髪の毛を沢山の造花で彩っている令嬢。
「なににしろ、ガーベラ様があの子を連れて行ってくれたお陰で私達は平穏な暮らしができているといっても過言じゃありませんわね」
そう発言したのはサファイアのような輝く髪を風に靡かせている令嬢。
「そう、そうなのよ!マリア様はガーベラ様の幸せが許せないといった理由で屋敷へと乗り込み、寵愛を難無く掠めとったらしいんですの!けれど、ガーベラ様の夫はその日からどんどんおかしくなってゆき…今では以前のような凛々しさも美しかった容姿もなりを潜め…恐ろしい外見と凶悪な内面のバケモノになってしまわれたの。」
4人の令嬢は金色の巻き毛に琥珀色の瞳をした令嬢の言葉に息を飲む。
そんな令嬢達の様子など全く気にする事無く話を続ける令嬢だが、その瞳は小刻みに揺れ潤み焦点などまるで合っていない。
「ガーベラ様が以前、文を弁えなかった私に言ってくれた言葉がありますの……」
そういった後、琥珀色の瞳の令嬢は自分の首を掻きむしり始める。
それを見た4人の令嬢達も皆、自分の首を一心不乱に掻きむしりだし……。
『だから言ったじゃない?やった事は違う形で返ってくるのよ?って』
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