私の婚約者をとった妹は婚約者に絶望する

さくらもち

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おまけぇ……

別ルートのハッピーエンド(5)

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『怖い』

 そう誰かが呟いた。真っ暗な闇の中、ただ一つの声が響き渡る。
 何の光もない。

『死にたくない、生きていたい』
『見捨てないで、私の事を』
『お願い、この子は幸せになって』
『痛い、苦しい、悲しい、守らなきゃ』
『嘘つきだ、偽善者だと貴方は言った』

 言葉がどんどん続いてく、重く苦しく心の中が叫んでいるようだ。
 いや、それより助けを求めているようにも聞こえた。

『ねぇ、この子の名前はリリアナにしましょ?』

 その言葉を言ったとき、真っ暗な何もない場所にたった一つの光が見えた。
 そして、そこには綺麗な女の人がいたのだ。ふわふわとした金髪にぱっちりと大きな赤い瞳。

『良かった、貴方が幸せそうで』

「……お母さん…?」

 ふと、その言葉が真っ先に考える間もなく口からぽつりと出てきた。
 その女の人は「そうだよ」というようににこりと微笑んでくる。

『最初はね、貴方の名前。私が好きな花のリナリアにしようと思った。けど、この恋に気づいて、幻想、ってなんだか切ないじゃん。だから、リリアナって入れ替えたの』

「花言葉……じゃなくて、なんでここにいるん」

『貴方が呼んだから』

「呼んだつもりはないんだが…」

 別にさほど会いたいとも思ってなかったはずだ。
 それはもちろん、会いたいっちゃ会いたかったが、呼ぶほど会いたいとは思わなかった。

『貴方の心が叫んだんだよ』

「心?」

 その答えに首を傾げる。

『辛いって。貴方は一回でも辛いって言ったことがある?ないじゃん?いつも笑って誤魔化して、自分を卑下することしか知らない。だから、知らずの間に叫んだ』

「馬鹿げてる」

『馬鹿げてるなんてないさ。我慢した結果、なら貴方は本当に笑えた?人の顔色ばっかりみてない?私は貴方にそうなってほしくない』

「心配無用だよ。メンタルは強いかんな」

 私のメンタルは鋼並み☆

『そっか……でも、気づけば、貴方の人生は明るくなる。貴方はみんなに好かれてるんだから』

「好かれてはない。どうせ、みんな離れてく」

 知っている。みんな、今はいてもどうせ離れて、忘れていく。
 なら、適度な距離を保った方がいい。

 お母さんはふっと笑いをこぼし、少し残念そうな表情をした。

『今はそれでもいいよ。でも、えー本当に久しぶりのお母さんだよ?なんかないの?』

「子供じゃあるまいし………まぁ、ただ」

『ただ?』

「私の事、生まなければ良かったのにね」

『なぜ?』

 少し驚いているのか目を見開いて、声の音量も少しだけ上がっていた。

「少なくとも私は死にたいよ。こうやって、問題起こして、みんなに迷惑かけてるのは私やん」

『けど、救った数もある。その人達は貴方に救われたからついてきてるんでしょ?まぁ、メフィストに関してはお母さんが謝るけれど……』

「死にたい、消えたい」

『でも、なぜ死のうとしない?』

「死んで、迷惑かけるから」

 死んでまで迷惑かけるなら死なない。けど、死にたいなんて自分勝手だ。

 気づいていた

『……思春期の娘は大変!おかしいでしょーが!!気づきなさい!貴方は好かれてるの、生きてていいの、他人の事ばかり考えなくていいの……!!』

「……私は裏切られるのが怖いから、信じないさ」

『はぁ……まぁいい。メフィストの件についてはこっちで善処するけれど、後は貴方次第…』

「おけ、大丈夫よ。こっちは」

 きっと、大丈夫。そう自分に言い聞かせなくちゃやってられない。

『頑張りなさい、私の愛しい

「ありがとう、お母さん」

 本当は泣いて、泣きわめいて、お母さんの事抱きしめたかったのにな
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