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第四章 終わらない
バッドエンドノスタルジア
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「リリアナ!」
その扉の先にいたのは、正真正銘リリアナだった。ベッドの上にぽつんと一人寂しく座っていた。
リリアナは少しだけ驚きながらも、次の瞬間絶望するような言葉を僕に返した。
「だ…れ?か、帰って…!!」
忘れていた
さっきの人が言っていたのは本当だったんだ。今のリリアナは記憶がない。
僕たちと一緒に過ごした記憶さえも。
「リリアナ……帰るぞ」
「帰るってどこに?いや!いや!お父さんと一緒にいるの!帰って!!」
まるで赤子のように泣き叫ぶようなそんな言葉を叫んでいた。
帰って、帰って、ただそれだけを。
悪気がないのはわかってはいたが、それでも心に突き刺さった。
今のリリアナは何も知らない、赤子も同然だ。
「僕の娘にやめてくださいませんか?」
「お父さん!」
突然と現れたメフィストにリリアナは僕になんて目もくれずメフィストの方へと抱きついた。
「お前……!!」
「可愛いでしょう?僕の娘ですよ」
にこっと冷たく僕へと微笑んだ。リリアナは心配そうにこちらを見ている。
「さて、部外者には死んでもらいましょう」
次の瞬間、僕の心臓にはナイフが突き刺さっていた。
「な………っ」
自分が真っ赤に染まっていく。思わず、床へと這いつくばってしまった。
そして、僕は思い出してしまった。
自分が不死不老ということを。
僕は、体の臓器や指、足、手、目、などと体の一部がなくなると不死不老になる。
生まれたとき、目がなかった為、母からもらった目で、なんとかそれを防いでいた。
けど、もうなくなってしまったら……
「あ、でも、良かったですね。貴方は体の一部がないと、どんなに辛くても死ねないんでしたっけ」
「お父、さん……?」
「リリアナ、大丈夫ですよ」
「違う……違う…!……お願い、お願い…」
意識朦朧とした中、なぜかリリアナの声が聞こえてくる。
焦って、パニックになっている彼女の声。
『違うのに…違うのに…!知ってるはずなのに……!!』
魔法も今は使えない。魔力は簡単言えば自分の体力とかそういうのだ。
だから、今は無理だ。
そんな死にそうな時に、いや厳密には心臓がなくなったら死ねないのだが、馬鹿みたいな事を考えていると、
リリアナの震えた声が耳に入ってきた。
「………お願い、テクディアを助け、て」
「っ…!リリアナ!!やめなさい!!!」
その途端、眩しい光と共に僕の傷は治っていった。光が僕の傷を吸収するように。
痛みも、何もかもなくなっている。
「バッドエンドノスタルジア」
彼女は笑っていた。
辛そうにしながらも。ずっと、ずっと、笑っていた。
呪いの反響が来たのだろう。
「そんな……呪いは」
「……………無理です…手遅れです。彼女は、生きながらも、苦しみます」
「………僕は……」
何を守りたかったのだろう
守りたい、生きたい意味を答えてほしいと誰かにといた。
けど、結局誰も教えてはくれない。誰も、知らないから。
彼女の眠っている姿を見ると、胸が傷んで、治った心臓すら傷んで。
目からは涙が溢れ出てくる。
「………リリアナは貴方達に授けます。せめて、この子が最後に願った人と一緒に居させてあげたい」
メフィストの方を向くと、メフィストもまた泣いていた。
彼女の方を見ながら、ずっとずっと。
「………リリアナ」
最後に名前を言った。
きっとリリアナの心には届かない。
その扉の先にいたのは、正真正銘リリアナだった。ベッドの上にぽつんと一人寂しく座っていた。
リリアナは少しだけ驚きながらも、次の瞬間絶望するような言葉を僕に返した。
「だ…れ?か、帰って…!!」
忘れていた
さっきの人が言っていたのは本当だったんだ。今のリリアナは記憶がない。
僕たちと一緒に過ごした記憶さえも。
「リリアナ……帰るぞ」
「帰るってどこに?いや!いや!お父さんと一緒にいるの!帰って!!」
まるで赤子のように泣き叫ぶようなそんな言葉を叫んでいた。
帰って、帰って、ただそれだけを。
悪気がないのはわかってはいたが、それでも心に突き刺さった。
今のリリアナは何も知らない、赤子も同然だ。
「僕の娘にやめてくださいませんか?」
「お父さん!」
突然と現れたメフィストにリリアナは僕になんて目もくれずメフィストの方へと抱きついた。
「お前……!!」
「可愛いでしょう?僕の娘ですよ」
にこっと冷たく僕へと微笑んだ。リリアナは心配そうにこちらを見ている。
「さて、部外者には死んでもらいましょう」
次の瞬間、僕の心臓にはナイフが突き刺さっていた。
「な………っ」
自分が真っ赤に染まっていく。思わず、床へと這いつくばってしまった。
そして、僕は思い出してしまった。
自分が不死不老ということを。
僕は、体の臓器や指、足、手、目、などと体の一部がなくなると不死不老になる。
生まれたとき、目がなかった為、母からもらった目で、なんとかそれを防いでいた。
けど、もうなくなってしまったら……
「あ、でも、良かったですね。貴方は体の一部がないと、どんなに辛くても死ねないんでしたっけ」
「お父、さん……?」
「リリアナ、大丈夫ですよ」
「違う……違う…!……お願い、お願い…」
意識朦朧とした中、なぜかリリアナの声が聞こえてくる。
焦って、パニックになっている彼女の声。
『違うのに…違うのに…!知ってるはずなのに……!!』
魔法も今は使えない。魔力は簡単言えば自分の体力とかそういうのだ。
だから、今は無理だ。
そんな死にそうな時に、いや厳密には心臓がなくなったら死ねないのだが、馬鹿みたいな事を考えていると、
リリアナの震えた声が耳に入ってきた。
「………お願い、テクディアを助け、て」
「っ…!リリアナ!!やめなさい!!!」
その途端、眩しい光と共に僕の傷は治っていった。光が僕の傷を吸収するように。
痛みも、何もかもなくなっている。
「バッドエンドノスタルジア」
彼女は笑っていた。
辛そうにしながらも。ずっと、ずっと、笑っていた。
呪いの反響が来たのだろう。
「そんな……呪いは」
「……………無理です…手遅れです。彼女は、生きながらも、苦しみます」
「………僕は……」
何を守りたかったのだろう
守りたい、生きたい意味を答えてほしいと誰かにといた。
けど、結局誰も教えてはくれない。誰も、知らないから。
彼女の眠っている姿を見ると、胸が傷んで、治った心臓すら傷んで。
目からは涙が溢れ出てくる。
「………リリアナは貴方達に授けます。せめて、この子が最後に願った人と一緒に居させてあげたい」
メフィストの方を向くと、メフィストもまた泣いていた。
彼女の方を見ながら、ずっとずっと。
「………リリアナ」
最後に名前を言った。
きっとリリアナの心には届かない。
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