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第四章 終わらない
七十三話
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「何しているんですか?アイテール」
落ち着いていて、淡々とした口調で言っている。私の父。
薄れていく意識が、その声ではっと現実に戻される。
それと同時にアイテールも私を地面へと乱暴に下ろした。
酸素がなかったせいかひどく咳き込んだ。息が今も苦しい。
「お父さんのご登場だね」
「何をやった」
「何って?ただ、こいつが人間と神は一緒というからだよ。それに、足の骨の一本や二本折らないと、こいつ逃げるよ?」
「……ですが、わざわざ首を締めなくても」
「ふ~ん、できないんだ。なら、僕がやってあげるよ。足の一本や二本折ってあげる」
「やめてください!」
大きな声で怒鳴るようそう言った。鋭い目つきで、低く唸るように見つめた。
「そんな怒らなくても良くない?やっぱ、なんかあるのかなー?君を虜にするほどのものが」
「…………出て行ってください」
「ひどー、まぁ、いいや。楽しめたし」
「………でしょ」
かすれかすれなんとか声に出す。
アイテールは私の方を向き直し、にこっと悪魔みたいに微笑んだ。
「ん?あぁ、息大丈夫?ひ弱な人間さん」
「貴方達神は無知なだけでしょって言ってるの」
「は?なに?締めたりないの?」
眉間にしわを寄せている。きっと、この先を言ったら殺されるかもしれない。
けど、私は胸を張って気づけばこう言っていた。
「違う。人間の事何もわかってない。そりゃあ、私達も神のことを何もわかってないけど、神は知らないでしょ?人間がどれほどすごいかなんて事」
「は…っ…知ってもつまらない事知る必要ないでしょ?」
「それだよ。貴方達はわかってない」
途端にぐっとまた次は直に、首を大きな手で締めようとしてきた。
けど、私は狼狽えず俯かずにまた続けて言葉を並べた。
「神は言葉だけの神じゃないでしょ?」
はっきりとその考えを言葉にした。
もし、違うと言うならば証明してくれ。神は本当に無知なのかどうか。
私がそういうと、アイテールははっと目を見開き、手を離した。
「…………へぇ…面白いじゃん。許してあげる、ただし、次も楽しませてね?僕はもう帰るよ」
そして、嵐のように去っていったのだ。
* *
「彼女も、同じことを言っていました」
あいつが行き、メフィストが謝ってきた後にそう唐突に言われた。
「はい?」
「昔、神は無知だと言っていたことがあったんです。その時、「なら、証明して。神は言葉だけの神なの?」と、言っていたんです」
「そっかぁ、じゃあお母さんに似ちゃったかな」
「えぇ、容姿は僕に。性格は彼女似でしょうね」
残念、美形は似ませんでした☆
「……ずっと気になってたんだけど、お母さんの真名って?」
いつも、メフィストは彼女、とか言っていた為、お母さんの名前がわからなかった。
けど、その質問をするとメフィストは口を閉ざしてしまった。
「彼女は………名前がありませんでした」
「え」
口を開いたかと思えば、信じられない言葉が吹っ飛んできた。
「知ってる通り、この世界では神が頂点です。けど、神よりも強い能力を持って生まれた彼女は失敗作とされました。世の理を覆すから、と。だから、本来は親が名をつけてくれるはずでしたが、神に失敗作と言われた彼女は親に名前をつけてもらえませんでした」
「失敗作、ねぇ……」
「そういうものです」
「命を持っていれば、どんだけ顔が悪くても、才能がなくったって失敗作にならないとおもうけどなぁ……私なら自分で名前、考えるけど」
「自分で、ですか?」
少し驚いたような表情をしながらも、首を傾げていた。
「だって、生まれてきた以上どうせなら楽しく生きたいじゃん?でも、そーだなぁ…私ならお母さんの事、ダリアってつけるな」
「ダリア……ですか。確か、花でしたよね」
「うん、そう。ダリアの白色の花言葉「感謝」や「豊かな愛情」だったはず」
「………面白いですね。貴方は彼女と少し違うかもしれません」
「どゆこと?」
今度は私が首を傾げる。
だって、似てるって言われたのに、前言撤回されたら誰でも驚くだろう。
「彼女は元気で笑っていましたが、前へ進もうとしませんでした。けど、リリアナは傷つき、自分を犠牲にしてまで、他人を守りながらも前へ進む。いわば、他の人の大きな柱になってる気がします」
「………そんなんじゃないよ。私は自分勝手なだけだしーーー」
言葉をつなげようとすると、勢いよくドアが開き、そこから羽が生えてきた人が出てきた。顔は布で見えないようにしてあった。
「メフィスト様!速報です!!人間が…!人間三名が、この神の境界に入ってきました!!」
答えは………
詠唱の言葉の違いです。
前にストームが使ったとき、最後の方に「エンド(終わり)」を言ってましたが、テクディアは「エンドレス」と、言ってました。
とはいえ、伊弉冉夜月(怠惰な紫兎・カンナヅキ)さんが言っていた「愛情の違い」というのも「たすかにぃ……」っておもったので、
伊弉冉夜月(怠惰な紫兎・カンナヅキ)さん、正解です!
落ち着いていて、淡々とした口調で言っている。私の父。
薄れていく意識が、その声ではっと現実に戻される。
それと同時にアイテールも私を地面へと乱暴に下ろした。
酸素がなかったせいかひどく咳き込んだ。息が今も苦しい。
「お父さんのご登場だね」
「何をやった」
「何って?ただ、こいつが人間と神は一緒というからだよ。それに、足の骨の一本や二本折らないと、こいつ逃げるよ?」
「……ですが、わざわざ首を締めなくても」
「ふ~ん、できないんだ。なら、僕がやってあげるよ。足の一本や二本折ってあげる」
「やめてください!」
大きな声で怒鳴るようそう言った。鋭い目つきで、低く唸るように見つめた。
「そんな怒らなくても良くない?やっぱ、なんかあるのかなー?君を虜にするほどのものが」
「…………出て行ってください」
「ひどー、まぁ、いいや。楽しめたし」
「………でしょ」
かすれかすれなんとか声に出す。
アイテールは私の方を向き直し、にこっと悪魔みたいに微笑んだ。
「ん?あぁ、息大丈夫?ひ弱な人間さん」
「貴方達神は無知なだけでしょって言ってるの」
「は?なに?締めたりないの?」
眉間にしわを寄せている。きっと、この先を言ったら殺されるかもしれない。
けど、私は胸を張って気づけばこう言っていた。
「違う。人間の事何もわかってない。そりゃあ、私達も神のことを何もわかってないけど、神は知らないでしょ?人間がどれほどすごいかなんて事」
「は…っ…知ってもつまらない事知る必要ないでしょ?」
「それだよ。貴方達はわかってない」
途端にぐっとまた次は直に、首を大きな手で締めようとしてきた。
けど、私は狼狽えず俯かずにまた続けて言葉を並べた。
「神は言葉だけの神じゃないでしょ?」
はっきりとその考えを言葉にした。
もし、違うと言うならば証明してくれ。神は本当に無知なのかどうか。
私がそういうと、アイテールははっと目を見開き、手を離した。
「…………へぇ…面白いじゃん。許してあげる、ただし、次も楽しませてね?僕はもう帰るよ」
そして、嵐のように去っていったのだ。
* *
「彼女も、同じことを言っていました」
あいつが行き、メフィストが謝ってきた後にそう唐突に言われた。
「はい?」
「昔、神は無知だと言っていたことがあったんです。その時、「なら、証明して。神は言葉だけの神なの?」と、言っていたんです」
「そっかぁ、じゃあお母さんに似ちゃったかな」
「えぇ、容姿は僕に。性格は彼女似でしょうね」
残念、美形は似ませんでした☆
「……ずっと気になってたんだけど、お母さんの真名って?」
いつも、メフィストは彼女、とか言っていた為、お母さんの名前がわからなかった。
けど、その質問をするとメフィストは口を閉ざしてしまった。
「彼女は………名前がありませんでした」
「え」
口を開いたかと思えば、信じられない言葉が吹っ飛んできた。
「知ってる通り、この世界では神が頂点です。けど、神よりも強い能力を持って生まれた彼女は失敗作とされました。世の理を覆すから、と。だから、本来は親が名をつけてくれるはずでしたが、神に失敗作と言われた彼女は親に名前をつけてもらえませんでした」
「失敗作、ねぇ……」
「そういうものです」
「命を持っていれば、どんだけ顔が悪くても、才能がなくったって失敗作にならないとおもうけどなぁ……私なら自分で名前、考えるけど」
「自分で、ですか?」
少し驚いたような表情をしながらも、首を傾げていた。
「だって、生まれてきた以上どうせなら楽しく生きたいじゃん?でも、そーだなぁ…私ならお母さんの事、ダリアってつけるな」
「ダリア……ですか。確か、花でしたよね」
「うん、そう。ダリアの白色の花言葉「感謝」や「豊かな愛情」だったはず」
「………面白いですね。貴方は彼女と少し違うかもしれません」
「どゆこと?」
今度は私が首を傾げる。
だって、似てるって言われたのに、前言撤回されたら誰でも驚くだろう。
「彼女は元気で笑っていましたが、前へ進もうとしませんでした。けど、リリアナは傷つき、自分を犠牲にしてまで、他人を守りながらも前へ進む。いわば、他の人の大きな柱になってる気がします」
「………そんなんじゃないよ。私は自分勝手なだけだしーーー」
言葉をつなげようとすると、勢いよくドアが開き、そこから羽が生えてきた人が出てきた。顔は布で見えないようにしてあった。
「メフィスト様!速報です!!人間が…!人間三名が、この神の境界に入ってきました!!」
答えは………
詠唱の言葉の違いです。
前にストームが使ったとき、最後の方に「エンド(終わり)」を言ってましたが、テクディアは「エンドレス」と、言ってました。
とはいえ、伊弉冉夜月(怠惰な紫兎・カンナヅキ)さんが言っていた「愛情の違い」というのも「たすかにぃ……」っておもったので、
伊弉冉夜月(怠惰な紫兎・カンナヅキ)さん、正解です!
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