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第四章 終わらない
六十五話
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「二日酔い」
「お嬢様はお酒飲んでないでしょう」
いやいやいやいや、あの中で夜通しずっと食べたり飲んだりくっちゃべってたりしてたら、誰でも疲れますわ。
おもくそ疲れてしまった定期。
「それでは気分転換に外に出てみては?」
「……そーしてくる」
* 外 *
「もう面倒ごとはやめてくれぇ……」
本当に願望でしかない。ここに来てマジで休みの日が消え去っていった気がする。
けど、やっぱり外の空気を少しでも吸うことで、少しだけ楽になった気がした。
「リーシャン大丈夫かな……」
ぼーっとしているとふとリーシャンの事を思い浮かべてしまう。
だって、あれからリーシャンに会っていない。
契約書は破棄したから、多分大丈夫だし、極秘情報もバラまいたから、さすがに大丈夫だろう。
「リリアナ……?」
ふと、後ろから聞き覚えのない声が聞こえてきた。けど、おかしい。
ここはテクディアの屋敷の庭だ。誰かが入れるわけがない。
それに、私は全使用人の声も顔も全て覚えている。だから、おかしいと思ってしまった。
恐る恐る後ろを振り向くと……
「誰……」
私と容姿が似ている人が目の前に立っていた。男性で、妙に整っている顔に長髪。
男性の長髪って萌えるよね。
「リリ、アナ……良かったです。ここまで来たかいがありました」
「いや、その、読者さんも困ってるんですが?」
読者絶対困ってるって。誰だよって思ってるって。
こんな美系続々でてきたら、作者も絶対困るためやめてほしい。
けど、それよりも目が行ったのは、そいつが持っている血塗れのリーシャンの事だ。
「リーシャン…?」
「おや?リリアナの友達ですか?なら、悪いことをしましたね。大丈夫ですよ、生きているので」
優しくにこっと微笑む姿が嫌で、というか恐ろしくてたまらない。
「は?さっきから誰…?私、知らないんだけど」
「僕は貴方の実の父ですよ」
「…っ」
その時、あの資料が頭に過った。
私が養子だという事実。
そんなことはどうでもいいとは思っていたがいまさらなんのようだろうか。
「リリアナも知っているでしょう?貴方はあそこの養子でしかない。さぁ、帰りましょう」
「なん、で……今更?今更なの?」
「申し訳ないです。貴方のお母さんが、絶対にリリアナを渡さないと言い張り、魔術を張られ、探すのに手間取りました」
「申し訳ないです、じゃない!私は今の生活に満足してるんよ!!だから、今更そんなのいらないし、リーシャンを離せ」
リーシャンの血がぽたぽたと滴る中、私は混乱していた。
これが夢ならばとどれほど願っただろうか。
けど、その血の匂いがこれが現実だということを引き戻す。
「悲しいことですね。実の両親ですのに」
「私はそんなの望んどらん」
「貴方は人を不幸にするとしても?」
「は」
ずきりとこめかみ辺りが痛くなった。
心が不安定でとても揺れていて、落ち着かない。叫びたい。
「リリアナ、貴方はね、ここにいてはならぬ存在なのですよ。だって、人を不幸にするから。いらない存在だから」
「やめ…ろ…、やめてくれ。私…は、違う」
その言葉の数々に自分の心にヒビが入る音が聞こえてくるようだ。
ぱきっぴきっ、と、どんどん壊れていく。
違うと否定するたびに、心もまたそれに違うという。
「ほら、今も過去に囚われ誰かに迷惑をかけているじゃないですか。さぁ、帰りましょう?」
「私、のお母さんは?」
「聞きたいですか?なら、教えてあげましょう。私についてきてくれれば、ですが」
「行、く…行く、からリーシャンを離して」
私がそれに応じると、相手もまた素直にそれを応じ、リーシャンを地面へと下ろした。
リーシャンは下ろされ、うぅっ……と痛いのか低く呻いていた。
「リーシャン……」
「それじゃあ、行きましょうか。リリアナ」
「………どこに?」
拳を強く握りしめ、少しだけ震えながらも、なんとか声を出した。
私だって人間だ。怖いものは怖い。
「そりゃあ、もちろん神の領域ですよ」
「はい?」
この人は何を言っているのだろうか。にこっと微笑み、こちらに近づこうとした。
私は逃げなかった。
逃げても、逃げられないと知っているからだ。
その人は一瞬にして私の事を抱きしめた。強く、強く、息ができないほどに。
離してというように、手でぐっと胸元を押し出すが、それでもまた引き戻されてしまった。
「あぁ、やっとリリアナが手に入りましたよ」
「っ………あ…や……ぁ…どけ……どけ…!」
この親バカが!!
いや、親と認めてないけどね!?
何一人でシュールにツッコんでんのか意味不明すぎた。
ごほごほと咳き込んでいく。助けて、誰か助けて。
「テク、ディア………」
そこからの意識は途切れてしまった。
「お嬢様はお酒飲んでないでしょう」
いやいやいやいや、あの中で夜通しずっと食べたり飲んだりくっちゃべってたりしてたら、誰でも疲れますわ。
おもくそ疲れてしまった定期。
「それでは気分転換に外に出てみては?」
「……そーしてくる」
* 外 *
「もう面倒ごとはやめてくれぇ……」
本当に願望でしかない。ここに来てマジで休みの日が消え去っていった気がする。
けど、やっぱり外の空気を少しでも吸うことで、少しだけ楽になった気がした。
「リーシャン大丈夫かな……」
ぼーっとしているとふとリーシャンの事を思い浮かべてしまう。
だって、あれからリーシャンに会っていない。
契約書は破棄したから、多分大丈夫だし、極秘情報もバラまいたから、さすがに大丈夫だろう。
「リリアナ……?」
ふと、後ろから聞き覚えのない声が聞こえてきた。けど、おかしい。
ここはテクディアの屋敷の庭だ。誰かが入れるわけがない。
それに、私は全使用人の声も顔も全て覚えている。だから、おかしいと思ってしまった。
恐る恐る後ろを振り向くと……
「誰……」
私と容姿が似ている人が目の前に立っていた。男性で、妙に整っている顔に長髪。
男性の長髪って萌えるよね。
「リリ、アナ……良かったです。ここまで来たかいがありました」
「いや、その、読者さんも困ってるんですが?」
読者絶対困ってるって。誰だよって思ってるって。
こんな美系続々でてきたら、作者も絶対困るためやめてほしい。
けど、それよりも目が行ったのは、そいつが持っている血塗れのリーシャンの事だ。
「リーシャン…?」
「おや?リリアナの友達ですか?なら、悪いことをしましたね。大丈夫ですよ、生きているので」
優しくにこっと微笑む姿が嫌で、というか恐ろしくてたまらない。
「は?さっきから誰…?私、知らないんだけど」
「僕は貴方の実の父ですよ」
「…っ」
その時、あの資料が頭に過った。
私が養子だという事実。
そんなことはどうでもいいとは思っていたがいまさらなんのようだろうか。
「リリアナも知っているでしょう?貴方はあそこの養子でしかない。さぁ、帰りましょう」
「なん、で……今更?今更なの?」
「申し訳ないです。貴方のお母さんが、絶対にリリアナを渡さないと言い張り、魔術を張られ、探すのに手間取りました」
「申し訳ないです、じゃない!私は今の生活に満足してるんよ!!だから、今更そんなのいらないし、リーシャンを離せ」
リーシャンの血がぽたぽたと滴る中、私は混乱していた。
これが夢ならばとどれほど願っただろうか。
けど、その血の匂いがこれが現実だということを引き戻す。
「悲しいことですね。実の両親ですのに」
「私はそんなの望んどらん」
「貴方は人を不幸にするとしても?」
「は」
ずきりとこめかみ辺りが痛くなった。
心が不安定でとても揺れていて、落ち着かない。叫びたい。
「リリアナ、貴方はね、ここにいてはならぬ存在なのですよ。だって、人を不幸にするから。いらない存在だから」
「やめ…ろ…、やめてくれ。私…は、違う」
その言葉の数々に自分の心にヒビが入る音が聞こえてくるようだ。
ぱきっぴきっ、と、どんどん壊れていく。
違うと否定するたびに、心もまたそれに違うという。
「ほら、今も過去に囚われ誰かに迷惑をかけているじゃないですか。さぁ、帰りましょう?」
「私、のお母さんは?」
「聞きたいですか?なら、教えてあげましょう。私についてきてくれれば、ですが」
「行、く…行く、からリーシャンを離して」
私がそれに応じると、相手もまた素直にそれを応じ、リーシャンを地面へと下ろした。
リーシャンは下ろされ、うぅっ……と痛いのか低く呻いていた。
「リーシャン……」
「それじゃあ、行きましょうか。リリアナ」
「………どこに?」
拳を強く握りしめ、少しだけ震えながらも、なんとか声を出した。
私だって人間だ。怖いものは怖い。
「そりゃあ、もちろん神の領域ですよ」
「はい?」
この人は何を言っているのだろうか。にこっと微笑み、こちらに近づこうとした。
私は逃げなかった。
逃げても、逃げられないと知っているからだ。
その人は一瞬にして私の事を抱きしめた。強く、強く、息ができないほどに。
離してというように、手でぐっと胸元を押し出すが、それでもまた引き戻されてしまった。
「あぁ、やっとリリアナが手に入りましたよ」
「っ………あ…や……ぁ…どけ……どけ…!」
この親バカが!!
いや、親と認めてないけどね!?
何一人でシュールにツッコんでんのか意味不明すぎた。
ごほごほと咳き込んでいく。助けて、誰か助けて。
「テク、ディア………」
そこからの意識は途切れてしまった。
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