私の婚約者をとった妹は婚約者に絶望する

第三章 生き方

五十二話（リーシャン視点）

「酒はねぇのか！酒は！！！」

　最近、ずっと怒鳴り散らす父の声。この屋敷はぼろぼろで使用人も残り少ない。
　毎月、多額の借金を払わなくてはいけないのだ。
　そのせいで、父も母も壊れてしまった。
　前まであった高価な家具も、何もかもなくなってしまった。

「元はといえばお前が……！！もう一回、クロードに話をつけてこい！！それまで帰ってくるな、クズが！！！」

　お酒が入っていた空のビンを私のすぐ横の壁に投げつけられた。
　ぱりーんっと響くような音で割れ、破片がそこら中に舞う。

　私は逃げるようにその場から立ち去った。

　　　　　　＊　　　　＊
「あ、あ、ああぁぁぁぁ！！！あいつのせいよ！あいつがいなくなってから……っ。何かしたんだわ！」

　外に出て、ひと目を気にせず大声でそう言った。
　あのクズがいなくなってから、うちは散々だ。
　クロードの家に行っても毎回追い返されるだけで、話すらしてくれない。

「私がクズ……？嫌よ！嫌！！私は美人で、お金持ちなのよ！」

　全部、全部思い通りにいかない。

「………あいつのせいなのね、そうよね……ふ…っ…あっははっ！！！！」

　まるで壊れてしまったように大声で笑った。
　すると、ふと後ろから聞き覚えのある声が聞こえてきた。

「交渉がある」

　そう言ってきたのは、クロードだった。