私の婚約者をとった妹は婚約者に絶望する

さくらもち

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第二章 心の霧

四十六話

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「なるほど………確かにその話は本当です。ストームの名前はアヌビスで間違いはありません、が。その小さなストームはわかりません」

 諦めて説明したあと、考察するように真実を述べてくれた。
 とりあえず、あの本の事、心臓の事、などそのたもろもろだ。

 まぁ、言っても害はないだろうが、「勝手にーー」とか苦情言われそうだったし、言わなかった。

「それはきっと、ストームだってわかってないはずです。となると、ストームの心が表したかな可能性が高い……」

「結論は?」

「勝手に心から生み出されたわからないモノですね。けど、私達の過去を知っていたし、心臓の事も知っていたのであれば、未来の予言者?」

「わけわかめ」

「私もわかりません………まぁ、いいでしょう。それより、貴方の能力問題です」

「知らん。なんか願っとけばいいの?」

 能力と言われても実感ないし、とりあえず願っとけばいいのかなという程度でしか思っていない。

「なんかって……それじゃあ僕に宙へ浮いてみればとか願っとけばいいんじゃないですか?」

 無理だと思いながらも、とりあえず言われたのでやってみる。
 なんとなく目を瞑りながらも、「浮け!浮け!」と、なんとなくで念じた。

「まぁ、無理でしょうけど……っ…!??」

 目を瞑りながら、「浮け!浮け!」と念じる。
 なんだかアトゥムが騒がしいが無視をして、まだ念じ続ける。

「ちょっ!ストップ!!ストップ!!」

「へ」

 ストップと言われてしまい、反射的に目を開けた。

「はい??」

 アトゥムが宙に浮いてるんですが??

 ふわふわと不安定に宙へ浮いていた。思わず目をこすって見ても、変わらない。

「………ロケットランチャー持ってくるわ」

「なんでですか!??」

「あ、略してロケランだよ」

「知ってます!というか、おろしてください!!」

「どうやって?」

「根性で!」

 根性と言われましても……根性でおろせたのならば、とっくのとうにやっている。
 アトゥムは驚きのあまり、聞いたこともない大声を出している。
 高いところが苦手なのかもしれない。

「……あ、わかりましたよ。貴方の能力!!「奇跡の能力」それなら辻褄が合うので、またおりろと念じてください!」

 いい加減、アトゥムが可哀想なので、言われたとおりに「おりろ」と強く念じた。
 そう念じる度に、アトゥムはどんどんゆっくりと下におりていく。

「や、やっとおりられましたよ………」

 数分たった頃、やっとアトゥムが地面へたどり着けた。
 もう疲れ果てているようだ。

「なんかドンマイ」

「別にいいですよ。私が最初に言ってしまった事なので。それより、奇跡の能力なんてヤバすぎません?」

「なんそれ?」

 そんなヤバいとか言われてもこっちは全くと言っていい程知らないし、能力にこれっぽっちも興味がない。

「奇跡の能力、昔たった一人だけしか持ってなかった能力です。願えば願うほど、奇跡を発揮できる。いわば、なんでもできます。ただ、大きな奇跡ほど、呪いに蝕まれると聞きましたが………」

「へー、まぁいいんじゃない?そういうの興味ないし」

「……まぁ、貴方はそうですよね。私達にとっては大事なのですが……」

 はぁと呆れたような口調でため息をつかれた。
 だって、そういうのめんどくさいと思う人だし、なくてもあってもどうでもいい。

「だって、努力して何かを手にするからいいんでしょ?こんなのチートやん。いらんわ~」

「なんだか、方言も含めストームと少し似てますね」

「確かに……」

 ちょっとだけ納得してしまう‥……
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