私の婚約者をとった妹は婚約者に絶望する

さくらもち

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第二章 心の霧

四十二話

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「……なら、私達が魔法を使って記憶を消すと言ったら?」

「答えはノー。そもそも、君達やれるならやってたやろ。それをしないっていうのは、やりたくないからじゃないの?」

「見透かされてるやん………」

「完敗ですね…」

 優しすぎる問題

 まぁ、なんとなくわかってたけど、この人達良い人には変わりないから、そういう悪い事は結構考えてやるタイプだろう。
 平和な世界

「まぁ、いいです……ただ貴方の能力が何かわかるまでここにいてもらいますからね!」

「はいよ~」

「軽っ!?」
       *    *

「つまらん」

 とりあえず暇なので、アトゥムに許可をもらい図書館にきていた。
 神殿の中には図書館もあるらしい。

「ぬぁぁぁ~~!」

 図書館で大声を出してはいけないというルールを忘れている声の大きさ。

 だって、ここに来る前ちょくちょく人を見つけたが、皆腫れ物扱いをしてくるのだ。
 なんだろう、拝まれている感じ。

 とりあえず、図書館を歩き回るが、どれも知ってるものばかり。
 神殿の事とか、アトゥムの事とか書かれてないのか。

 そんな時、ふと奥の棚の方で光っている本らしきものを見つけた。

 奥の棚は陽が当たりにくいため、薄暗く光ってる本がよく目立つ。

 私はそれに気がつき、その棚の側まで駆け寄る。

「本……だよね」

 光っているというかなんというか。まるで、私の事を開けてと言ってるようだ。

 まぁ、好奇心旺盛なぴちぴちの若者なんで、その本を手に取った。

 私の予想通りにその本は私を待っていたかのように私が手を取ると光るのをやめた。

「粗大ごみ……?」

 冗談はほどほどにして、表紙を見る。

 斜めにわかれていて、上の方は明るく天使とかのイラストが描かれている。
 中心となっている人物は顔が黒く塗りつぶされていた。

 下の方は真逆で、暗く悪魔とかのイラストが描かれている。
 これまた中心となっている人物は黒く塗りつぶされていた。

 けど、表紙の真ん中には小さくだが一人の少女?が描かれていた。

「絵本……?」

 そう呟く。だって、こんな可愛らしい表紙絵本っぽい気がする。
 私は立ちながら、その本のページをめくった。
       *  *

 ある日、この世は陰と陽にわかれてました。

 誰しもがそのどちらかにわかれているのです。
 陰だと、目立たず神に愛されなかった不吉な子だと。
 陽だと、むしろ神に愛される愛しの子だと。

 二つの区別のつけ方は、未来と力だといいます。

 未来が悪い方と何もない人は陰の人、未来が良くて何かの力を持っているのは陽の人。

 良かったことに、陽の人の方が多く存在していました。

 けど、時間がたつに連れて、陽も陰もあまりいなくなってしまいました。
 普通の人が多くなっていってしまったのです。

 次第に、陰と陽の区別はあやふやになり、陰というのはなくなりました。
 陽は神の使いということにされ、神の使いはとても大切にされました。


 そして、ここに一人の神の使いの少年がいました。
 その少年には双子の弟がいました。

 弟も神の使いでしたが、弟は「造る能力」を持っており、そんな物はいらない、人の役にたたないと言われてしまい、その少年だけが神殿へと行ったのです。

 その少年の能力は少なからず「人を癒やす能力」でした。

 それは大変評価され、今までよりとても良い暮らしができました。
 今までの暮らしは毒親の元でずっと育っており、虐待もされていたのです。

 次第に、少年は弟のことが気になり始めました。

 弟は今までと変わらずの人生を過ごしている、そう思うといてもたってもいられず、少年は神殿を飛び出しました。

 神官からいろんな事を教えられ、強制され、けど虐待よりマシだと思ってきた少年はこんな事をするのは初めてです。

 そして、
 家に帰ったら家族は皆死んでしまっていました。
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