私の婚約者をとった妹は婚約者に絶望する

さくらもち

文字の大きさ
上 下
43 / 99
第二章 心の霧

四十一話

しおりを挟む
「逃げ出すなんてありえないでしょう………てか、貴方も知らなかったんですか?」

 ストームに強制連行された先にはアトゥムがいた。そして、今叱られている。
 なぜ、私が叱られるのか未だに謎だ。

「いやいやいやいや、知らん!」

「せやな~、ちょっと気づきにくいかもしれん」

「全く貴方まで………」

「てか、帰っていい?眠い。なぜ、私はここにいなきゃならんのよ。神の言葉なんて無視すれば良くない?」

 ふわぁとあくびをしながら、アトゥムにといた。
 神の言葉なんて災害とかそういう時以外は無視すれば良いと思ってる。

「無視なんて恐れ多い事を。せめて、貴方の力がわかるまで居てもらいます」

「とか言いながら帰さない流れ」

「お前やっぱ鋭いわ」

「ストーム!」

「あ、やべ」

「知ってた」

 なんとなく察してはいた。てか、この人達の性格じょう絶対帰さない気だ。
 まぁ、悪いようにはしなさそうだし、いっかと思う自分も自分だが。

「はぁ………まぁいいです。とりあえず貴方にはここにいてもらうだけですし」

「そうよ、もし逃げようとしたらわいがすぐ捕まえに戻るからな」

「鬼畜ゲーすぎません?」

 魔塔の主と神の使い相手に勝てたらもはや天才の域を超えている。
 ということで、無理ゲーだ。
 アトゥムはいつもどおりストームの発言にあきれている。

「せやな、お前にわいの名前言われたら終わりやもんな」

「当ててみよっかな」

「ったく!何言ってるんですか!!ストームもストームですよ!」

「ええんやない?当てたらかえそうや」

「いや私は知ってる。当てても帰さない気だろ?私、なら名前全て当てずっぽうに言うかんな!全部言ってやるからな!!」

「むきにならないでください!!」

「でもさ、なんとなくストームも神の使いやし、神の名前やろ?知ってるがな」

 そんな当てずっぽうに名前言わなくても、ストームは神の使いっぽいし、神の名前言っとけば結局当たる。

 キュー○ー三分クッキングだね(え)

「は………」

「え………」

 けど、その言葉に二人とも硬直して驚いていた。まるで、私が変な事を言ったみたいじゃないか。

「なんかおかしなこと言った?」

「待て、わいが神の使いだってなんで知っとるんや」

「え、まずお前魔力の上限ないでしょ?それに違和感を抱いて、魔力も魔法も不完全だし、そういうのありえないやろ?だから、「神の使いかな」って、なって。んで、お前に聞いたらその動揺っぷりで察した」

 それを聞いてまた唖然とする二人。
 前も言ったとおり、魔法だって魔力だって上限あるし万能じゃない。

 けど、瞬間移動した時とか、魔力を多少使うと、冷や汗など細かな表情が少し変わる。

 それが物を動かす程度の魔法でも、だ。

 どんな大魔法師だってそうなる。
 けど、神の使いというものは、ちょっとした能力を持っているはずだ。

 だから、そういうのかなっと思った。
 確信したのは、ストームの動揺っぷりだが。

「なるほど………」

「お前、ヤバいな」

「特大ブーメランよ?」
しおりを挟む
感想 237

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。

さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。 許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。 幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。 (ああ、もう、) やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。 (ずるいよ……) リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。 こんな私なんかのことを。 友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。 彼らが最後に選ぶ答えとは——?

あなたのことなんて、もうどうでもいいです

もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。 元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

オカン気質の公爵令嬢〜転生しても代わり映えしません!

himahima
ファンタジー
卒業パーティーで婚約破棄・・・ 別にいいんですけどね…後処理めんどくさいな〜 設定ゆるめ、異世界転生ものです。 さっくり読める短編です。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

私を売女と呼んだあなたの元に戻るはずありませんよね?

ミィタソ
恋愛
アインナーズ伯爵家のレイナは、幼い頃からリリアナ・バイスター伯爵令嬢に陰湿ないじめを受けていた。 レイナには、親同士が決めた婚約者――アインス・ガルタード侯爵家がいる。 アインスは、その艶やかな黒髪と怪しい色気を放つ紫色の瞳から、令嬢の間では惑わしのアインス様と呼ばれるほど人気があった。 ある日、パーティに参加したレイナが一人になると、子爵家や男爵家の令嬢を引き連れたリリアナが現れ、レイナを貶めるような酷い言葉をいくつも投げかける。 そして、事故に見せかけるようにドレスの裾を踏みつけられたレイナは、転んでしまう。 上まで避けたスカートからは、美しい肌が見える。 「売女め、婚約は破棄させてもらう!」

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

処理中です...