私の婚約者をとった妹は婚約者に絶望する

さくらもち

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第二章 心の霧

三十八話(テクディア視点)

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「ん……?もうこんな時間か」

 ふと、仕事をやってる手を止め、外を見た。もう外は真っ暗で何も見えない。

 見えても街にある街灯くらいだ。
 ストームの件については忘れて仕事に没頭していた。

 そんなぼーとしている時、部屋の外から大人数の足音が聞こえてきた。
 速くて、慌ててるように大きく。しかも僕の部屋に向かっているようだ。

「テ、テクディア様……!!」

 ばんっとドアを開けられ、体がびくっと震えた。思わず、ペンを落としてしまう。

 そこにいたのは、大人数の使用人達だ。
 きっとこの屋敷のほぼ全員だろう。

「?どうしたんだ」

「リリアナ様がいないんです!!」

「そうなんですよっ!お嬢様が……!いなくて!!」

 僕の問いに答えるように皆が口々に「いない」と言っていた。
 リリアナがいない、しかもこんな時にいなくなるなんて原因は一つしかない。

「ストーム……?」

 いや絶対確信犯

「失礼ながら誰なのですか?」

 申し訳なさそうに言ってきた。確か使用人の中にストームが猫とか魔塔の主など知っているのは少人数だ。

 こうなるなら、先に言っとけばよかった。

 というか、まずストームの事自体知らない。

「いやいい………サキラ、場所は?」

「えっと、それが………わからないんです」

「わからない……?追跡魔法は…っ」

 リリアナには少なくとも、ストームという危険生物がついていたので追跡魔法はつけていた。

 結構頑固につけておいたはずだが、一筋縄ではいかないようだ。

「消されてました。痕跡が全くなく………」

「…っ……なら、僕が行く」

「待ってください…!駄目です!!」

「なぜだ……!」

 立ち、探そうとしている僕をサキラが僕の服の裾を掴んで止めた。久しぶりにこんな目をサキラに送ったと思う。

 苦々しく、鋭い視線。

 サキラはそれに少し怯えたが、けれどその手を話そうとはしなかった。

 むしろ、俺の目を見てくれというように引っ張る。

「貴方様がこの屋敷の主だからです。確実に安全だとわかりますか?そのリリアナ様が場所場所がわかるんですか?リリアナ様は大切です。だから、せめて場所がわかるまで待っててください」

「………そう、だな」

 沈み落ちたような声を出す。

 もしかしたら、テンパっていたのかもしれない。

 サキラはそっと手を離し、他の使用人と僕に向かって言葉を発した。

「仕事は僕達使用人にまわしてください。そして、テクディア様しかできない分はテクディア様に。そうしたら、この屋敷で調べ少しは場所がわかるかもしれません。計画的に動きましょう、今回はストーム様です。いつもとは違います」

「……わかった。申し訳ないが手伝ってくれ」

 その立派な姿に少し驚きながらも、僕も他の使用人達に頼んだ。
 そうすると、使用人達は顔を合わせ、にこっと微笑みながら、元気よく口々にこう言い出した。

「もちろんです!」

「えぇ、テクディア様が言うのなら」

「テクディア様がリリアナ様を探す時間を増やしましょ!」

 皆が意気投合してるなか、僕とサキラは二人でこそこそと話していた。

「正確な場所はわかりませんが、今日あったお祭りに行っていたそうです。そこまではわかりました」

「なるほど……あれか」

 一年に一回行われる大きなお祭り。
 リリアナが進んで行くわけないし、ストームが連れ出したに違いない。

「えぇ、テクディア様はそこを中心的に魔法でーーー」

「立派になったな」

 思わずそんな言葉を落としてしまった。
 ぽかーんとしているサキラに、僕はなぜだかサキラの頭を撫でた。

「はい!テクディア様!!」

 威勢よく、元気いっぱいの笑顔を発する。

「それじゃあ、やるぞ!」
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