37 / 99
第二章 心の霧
三十五話
しおりを挟む
「やべぇ………くっそめんどかった」
思わずそんな声をもらす。
アトゥムとストームに焼き鳥を買い与え、お祭りを見まわってた。
私はさすがに焼き鳥に飽きてしまったので、買わなかった。
だって、アトゥムなんて他の食べ物も食べながら焼き鳥を数十本食べている。
「お前、マジ女よな?」
そんな私の言動にツッコんでいた。
まぁ確かに、これでも貴族の娘なので人より多く教育はされるはずだし、なんだかんだ小さい頃から家族に嫌われてるので、普通なら気弱に女っぽく育つはずだ。
普通なら、だが。
普通ではなかったら、違うけどね!
「そういえば、貴方。私達に魔法かけてるでしょう?」
もぐもぐと焼き鳥を食べながら、アトゥムにそう言った。
相変わらず、美味しそうに頬張ってるなぁと思う。
けど、逆に美味しそうに食べてくれるから、不思議とお金の無駄遣いとは思わなかった。
「なんや、バレてたん?そうよ、さすがにわいらは目立つから、髪の色、瞳の色は変えさせてもろうてるで」
「え、そうだったの?マジか。だから、あの屋台のおじさんもそう言ってたんね」
「……まぁ、そういうことですね。普通なら気づかないでしょうが、私はわかりますよ。魔法の微かな匂いがありましたので」
「えーー、つまらへんなぁ……」
ぶぅ……と拗ねたように口を尖らせながら、一緒に歩く。一緒に話す他愛もない会話がとても楽しい。
そんな事を思いながら、上を向き、空を眺めた。
「あ…………やばい!!」
「ん?なになにどうしたん?」
「どうしたのですか?」
私の焦った声に二人共はてなの顔をしていた。
だって、空を眺めたらもう真っ暗なのだ。
というか、普通なら気づくが今回はお祭りに集中しすぎて、気づかなかった。
さすがに、帰らなくては侍女達が焦る。
「もう夜!帰らなちゃいけない時間!!」
「……?…そうなのですか??夜は帰らなくてはいけないのでしょうか?」
そう言われ少し返答に困った。
法律でも「夜は帰るべし!」なんてものないし、そもそもこの国には魔法があるから、法律なんて結構ゆるゆるだ。
もし、犯罪者がいても、魔法ですぐ捕まる。
便利な世の中……じゃなくて!
はっと我に返った。
「………いや、家によって違う…のかな?帰らなくてもいい家もあるし、帰らなくちゃいけない家もあるって事。私は残念ながら帰らなくちゃいけないし、帰るわ」
考え抜いた末、その返答が一番理にかなってるかなと思った。
「でも、もう少しくらいええやん?」
「いやいや、お二人で楽しんでくだせぇ。お金ならちょっとあげるし、久しぶりに家族水入らずで過ごしたら?」
魔塔の主と神殿の箱入り神の使いなんて相当会えないことが多いだろう。
あいにく、クロードに言われたとおりお金はまぁまぁ持っているので、大丈夫だ。
アトゥムはそう言うと少しだけしょんぼりした表情をしながら、微笑みこう言った。
「………なら、最後に少しだけいいでしょうか?」
「うん……?まぁ、いいよ」
その笑みが少しぞっとしたが、アトゥムはあまり外に出れないらしいし、ちょっとだけならいいかと思ってしまった。
まぁ、変な企みがあっても、殺気は感じられないから平気かなって
という甘い考えが事件を引き起こしたのであったーーー
思わずそんな声をもらす。
アトゥムとストームに焼き鳥を買い与え、お祭りを見まわってた。
私はさすがに焼き鳥に飽きてしまったので、買わなかった。
だって、アトゥムなんて他の食べ物も食べながら焼き鳥を数十本食べている。
「お前、マジ女よな?」
そんな私の言動にツッコんでいた。
まぁ確かに、これでも貴族の娘なので人より多く教育はされるはずだし、なんだかんだ小さい頃から家族に嫌われてるので、普通なら気弱に女っぽく育つはずだ。
普通なら、だが。
普通ではなかったら、違うけどね!
「そういえば、貴方。私達に魔法かけてるでしょう?」
もぐもぐと焼き鳥を食べながら、アトゥムにそう言った。
相変わらず、美味しそうに頬張ってるなぁと思う。
けど、逆に美味しそうに食べてくれるから、不思議とお金の無駄遣いとは思わなかった。
「なんや、バレてたん?そうよ、さすがにわいらは目立つから、髪の色、瞳の色は変えさせてもろうてるで」
「え、そうだったの?マジか。だから、あの屋台のおじさんもそう言ってたんね」
「……まぁ、そういうことですね。普通なら気づかないでしょうが、私はわかりますよ。魔法の微かな匂いがありましたので」
「えーー、つまらへんなぁ……」
ぶぅ……と拗ねたように口を尖らせながら、一緒に歩く。一緒に話す他愛もない会話がとても楽しい。
そんな事を思いながら、上を向き、空を眺めた。
「あ…………やばい!!」
「ん?なになにどうしたん?」
「どうしたのですか?」
私の焦った声に二人共はてなの顔をしていた。
だって、空を眺めたらもう真っ暗なのだ。
というか、普通なら気づくが今回はお祭りに集中しすぎて、気づかなかった。
さすがに、帰らなくては侍女達が焦る。
「もう夜!帰らなちゃいけない時間!!」
「……?…そうなのですか??夜は帰らなくてはいけないのでしょうか?」
そう言われ少し返答に困った。
法律でも「夜は帰るべし!」なんてものないし、そもそもこの国には魔法があるから、法律なんて結構ゆるゆるだ。
もし、犯罪者がいても、魔法ですぐ捕まる。
便利な世の中……じゃなくて!
はっと我に返った。
「………いや、家によって違う…のかな?帰らなくてもいい家もあるし、帰らなくちゃいけない家もあるって事。私は残念ながら帰らなくちゃいけないし、帰るわ」
考え抜いた末、その返答が一番理にかなってるかなと思った。
「でも、もう少しくらいええやん?」
「いやいや、お二人で楽しんでくだせぇ。お金ならちょっとあげるし、久しぶりに家族水入らずで過ごしたら?」
魔塔の主と神殿の箱入り神の使いなんて相当会えないことが多いだろう。
あいにく、クロードに言われたとおりお金はまぁまぁ持っているので、大丈夫だ。
アトゥムはそう言うと少しだけしょんぼりした表情をしながら、微笑みこう言った。
「………なら、最後に少しだけいいでしょうか?」
「うん……?まぁ、いいよ」
その笑みが少しぞっとしたが、アトゥムはあまり外に出れないらしいし、ちょっとだけならいいかと思ってしまった。
まぁ、変な企みがあっても、殺気は感じられないから平気かなって
という甘い考えが事件を引き起こしたのであったーーー
0
お気に入りに追加
2,338
あなたにおすすめの小説
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?

あなたのことなんて、もうどうでもいいです
もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。
元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
オカン気質の公爵令嬢〜転生しても代わり映えしません!
himahima
ファンタジー
卒業パーティーで婚約破棄・・・
別にいいんですけどね…後処理めんどくさいな〜
設定ゆるめ、異世界転生ものです。
さっくり読める短編です。

私を売女と呼んだあなたの元に戻るはずありませんよね?
ミィタソ
恋愛
アインナーズ伯爵家のレイナは、幼い頃からリリアナ・バイスター伯爵令嬢に陰湿ないじめを受けていた。
レイナには、親同士が決めた婚約者――アインス・ガルタード侯爵家がいる。
アインスは、その艶やかな黒髪と怪しい色気を放つ紫色の瞳から、令嬢の間では惑わしのアインス様と呼ばれるほど人気があった。
ある日、パーティに参加したレイナが一人になると、子爵家や男爵家の令嬢を引き連れたリリアナが現れ、レイナを貶めるような酷い言葉をいくつも投げかける。
そして、事故に見せかけるようにドレスの裾を踏みつけられたレイナは、転んでしまう。
上まで避けたスカートからは、美しい肌が見える。
「売女め、婚約は破棄させてもらう!」
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる