私の婚約者をとった妹は婚約者に絶望する

さくらもち

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第二章 心の霧

三十五話

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「やべぇ………くっそめんどかった」

 思わずそんな声をもらす。
 アトゥムとストームに焼き鳥を買い与え、お祭りを見まわってた。

 私はさすがに焼き鳥に飽きてしまったので、買わなかった。

 だって、アトゥムなんて他の食べ物も食べながら焼き鳥を数十本食べている。

「お前、マジ女よな?」

 そんな私の言動にツッコんでいた。

 まぁ確かに、これでも貴族の娘なので人より多く教育はされるはずだし、なんだかんだ小さい頃から家族に嫌われてるので、普通なら気弱に女っぽく育つはずだ。

 普通なら、だが。

 普通ではなかったら、違うけどね!

「そういえば、貴方。私達に魔法かけてるでしょう?」

 もぐもぐと焼き鳥を食べながら、アトゥムにそう言った。

 相変わらず、美味しそうに頬張ってるなぁと思う。
 けど、逆に美味しそうに食べてくれるから、不思議とお金の無駄遣いとは思わなかった。

「なんや、バレてたん?そうよ、さすがにわいらは目立つから、髪の色、瞳の色は変えさせてもろうてるで」

「え、そうだったの?マジか。だから、あの屋台のおじさんもそう言ってたんね」

「……まぁ、そういうことですね。普通なら気づかないでしょうが、私はわかりますよ。魔法の微かな匂いがありましたので」

「えーー、つまらへんなぁ……」

 ぶぅ……と拗ねたように口を尖らせながら、一緒に歩く。一緒に話す他愛もない会話がとても楽しい。

 そんな事を思いながら、上を向き、空を眺めた。

「あ…………やばい!!」

「ん?なになにどうしたん?」

「どうしたのですか?」

 私の焦った声に二人共はてなの顔をしていた。

 だって、空を眺めたらもう真っ暗なのだ。

 というか、普通なら気づくが今回はお祭りに集中しすぎて、気づかなかった。

 さすがに、帰らなくては侍女達が焦る。

「もう夜!帰らなちゃいけない時間!!」

「……?…そうなのですか??夜は帰らなくてはいけないのでしょうか?」

 そう言われ少し返答に困った。
 法律でも「夜は帰るべし!」なんてものないし、そもそもこの国には魔法があるから、法律なんて結構ゆるゆるだ。

 もし、犯罪者がいても、魔法ですぐ捕まる。

 便利な世の中……じゃなくて!

 はっと我に返った。

「………いや、家によって違う…のかな?帰らなくてもいい家もあるし、帰らなくちゃいけない家もあるって事。私は残念ながら帰らなくちゃいけないし、帰るわ」

 考え抜いた末、その返答が一番理にかなってるかなと思った。

「でも、もう少しくらいええやん?」

「いやいや、お二人で楽しんでくだせぇ。お金ならちょっとあげるし、久しぶりに家族水入らずで過ごしたら?」

 魔塔の主と神殿の箱入り神の使いなんて相当会えないことが多いだろう。

 あいにく、クロードに言われたとおりお金はまぁまぁ持っているので、大丈夫だ。

 アトゥムはそう言うと少しだけしょんぼりした表情をしながら、微笑みこう言った。

「………なら、最後に少しだけいいでしょうか?」

「うん……?まぁ、いいよ」

 その笑みが少しぞっとしたが、アトゥムはあまり外に出れないらしいし、ちょっとだけならいいかと思ってしまった。

 まぁ、変な企みがあっても、殺気は感じられないから平気かなって

 という甘い考えが事件を引き起こしたのであったーーー
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