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第二章 心の霧
三十二話
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「うへぇ………ストームがいない…」
みっともない声を出しながら、焼き鳥片手にストームを探しに歩き回る。
先程からストームが姿を消してしまった。
「焼き鳥は美味しいんだけどなぁぁ………」
焼き鳥を食べると、香ばしい匂いと共にお肉の肉汁がぶあっと弾ける。
カリカリとした焦げ目がついているところも、ちょっとした苦さながら、とても美味しいし合う。
テクディアの屋敷では食事を用意してくれるが、高級感が強すぎて苦手だ。
庶民的な料理の方が口に合うらしい。
「いやてか、あいつどこいったん」
猫の姿なんだから、余計見つけにくい。
ここらへん、野良猫の一帯なんだから、わざわざ喋りかけなくちゃいけないこの面倒くささ。
「どこ行こうとしてるん?」
ふと、見覚えのある声が聞こえてきたので後ろを向くと、美形がいた。
美形二人、顔が似ていて多分双子だ。
「いや誰だよ」
「ん?あぁ、わいはストームよ?人間の姿もええやろ」
「うん、それはなんとなくわかる。お隣は?」
「私の名前はアトゥムと申します。兄です」
「へー、アトゥムさんか。え………アトゥムって創造神……は?」
律儀そうでやっと真面目な人に会えたかと思ったら、アトゥムという名前を聞いて結構ビビった。
アトゥムはエジプト神話の創造神だった気がする。
この国はまぁまぁ神の意識が普通より高いほうなので、幼い頃からそうやって神の名前などを学ぶ。
「えぇ、神から貰い受けました」
「え………」
驚きのあまり声が出ない。
神の名前をつけていいのは、神の使いと呼ばれる者だけ。
だから、普通神の名前なんてつけてはいけないというか、つけられないし。
やっぱ、神に愛されてる人は美形なんだなぁぁぁぁ
と、つくづく思う私であった。
「ま、いっか。あ、アトゥムさんも焼き鳥食べます?ストームもやんよ」
ストームには強制的に焼き鳥をあげ、アトゥムにも良い香りがする焼き鳥を向けた。
けど、アトゥムはそれを見るとびっくりしているようだ。
「焼き、鳥……?とはなんでしょうか??」
「は」
「あー、アトゥムはな、神殿で大切に育てられたんよ。だから、こういう物は食べたことがないんよね」
ストームは受け取った焼き鳥をもぐもぐと口に含みながら、ゆっくりと話していった。
あ、そういう系か。温室育ちの坊っちゃんみたいなものだろう。
「え、なに、世間知らずのお嬢様かな?」
「せやな!」
自信満々にそういうストームに少し呆れる。
二人して喋っていたら、アトゥムが目をぐるぐるさせながら、恐る恐るこう言ってきた。
「…こ、こういう物は食べてもよいのでしょうか。神に認められた物しか食べてはいけないと神官がおっしゃってました。みなが食べているものは穢れているものだと」
「は?その神官クソかな?私だったら蹴飛ばすわ」
そういう私にぽかーんとしているアトゥムにその横でツボっているストーム。
食べ物の恨みは恐ろしい
好きな食べ物食えなかったら、中指たててしまうくらいだ。
「温室育ちかなんなのか知らんけど、美味しいからいいんだよ。神に認められた物って、私だったら、もはやその神官殺るね。好きなもの食べなよ」
「……た、食べてみます」
おずおずと焼き鳥を手に受け取る。
恐る恐る口に運び、パクっと食べた。最初は「ん?」という顔だったが段々顔が明るくなり、最終的にはほわわんと花が舞っていた。
「てか、ストームは神殿に住んどらんの?」
美味しそうな顔をしながら焼き鳥を食べているアトゥムを邪魔できず、ストームに声をかけた。
「ん?わい?わいは、そもそも神の使いじゃないからな」
「あ、そうなの。てっきり神の使いだと思ってたわ」
「お前鋭いわ」
「うん…?まぁいっか。てか、神官ぶっ飛ばしに行ってこよっかな」
「鋭いわ」という言葉が気になったが、別にいっかという気持ちで、拳を上にあげた。
食べ物の恨みを舐めたら、多分私に一発で殺られる。
「やめとき、いろいろと怒られるで」
「えー………てか、どんだけ世間知らずなん?ストームの兄」
「めちゃくちゃ世間知らずだわ」
「……ま、仲良くて良かった。これで仲悪かったら私が死んでたんだが」
「知っとるわ」
「…ん~っ…!!めっちゃこれ美味しいです!!」
いきなりアトゥムが声を発したので、びくっと肩が震えた。
焼き鳥を口に頬張りながら幸せそうな声をあげている。
「あ………神官との約束を破ってしまいました。や、やはり、食べるのは……」
一瞬思い出したのか顔が暗くなる。なんだか小さな子供を見ているようだ。
こんな躾け方した神官やっぱ殴る。
「知ってる?食べ物を残すのはもっといけないことなんよ?私達は動物達の命があるから生きていられる。だから、きちんと感謝して全部食べなきゃ駄目だぞ」
「それはしょうがないので、食べます!」
「よろしい」
「見事に手懐けたな」
はぁと呆れたような視線を送られる。アトゥムの場合、食べ物に弱いことがわかった。
可哀想すぎて泣ける。こんな美味しいものを知らないなんて人生損してると思う。
「それじゃあ、お祭り巡りするぞー!!」
みっともない声を出しながら、焼き鳥片手にストームを探しに歩き回る。
先程からストームが姿を消してしまった。
「焼き鳥は美味しいんだけどなぁぁ………」
焼き鳥を食べると、香ばしい匂いと共にお肉の肉汁がぶあっと弾ける。
カリカリとした焦げ目がついているところも、ちょっとした苦さながら、とても美味しいし合う。
テクディアの屋敷では食事を用意してくれるが、高級感が強すぎて苦手だ。
庶民的な料理の方が口に合うらしい。
「いやてか、あいつどこいったん」
猫の姿なんだから、余計見つけにくい。
ここらへん、野良猫の一帯なんだから、わざわざ喋りかけなくちゃいけないこの面倒くささ。
「どこ行こうとしてるん?」
ふと、見覚えのある声が聞こえてきたので後ろを向くと、美形がいた。
美形二人、顔が似ていて多分双子だ。
「いや誰だよ」
「ん?あぁ、わいはストームよ?人間の姿もええやろ」
「うん、それはなんとなくわかる。お隣は?」
「私の名前はアトゥムと申します。兄です」
「へー、アトゥムさんか。え………アトゥムって創造神……は?」
律儀そうでやっと真面目な人に会えたかと思ったら、アトゥムという名前を聞いて結構ビビった。
アトゥムはエジプト神話の創造神だった気がする。
この国はまぁまぁ神の意識が普通より高いほうなので、幼い頃からそうやって神の名前などを学ぶ。
「えぇ、神から貰い受けました」
「え………」
驚きのあまり声が出ない。
神の名前をつけていいのは、神の使いと呼ばれる者だけ。
だから、普通神の名前なんてつけてはいけないというか、つけられないし。
やっぱ、神に愛されてる人は美形なんだなぁぁぁぁ
と、つくづく思う私であった。
「ま、いっか。あ、アトゥムさんも焼き鳥食べます?ストームもやんよ」
ストームには強制的に焼き鳥をあげ、アトゥムにも良い香りがする焼き鳥を向けた。
けど、アトゥムはそれを見るとびっくりしているようだ。
「焼き、鳥……?とはなんでしょうか??」
「は」
「あー、アトゥムはな、神殿で大切に育てられたんよ。だから、こういう物は食べたことがないんよね」
ストームは受け取った焼き鳥をもぐもぐと口に含みながら、ゆっくりと話していった。
あ、そういう系か。温室育ちの坊っちゃんみたいなものだろう。
「え、なに、世間知らずのお嬢様かな?」
「せやな!」
自信満々にそういうストームに少し呆れる。
二人して喋っていたら、アトゥムが目をぐるぐるさせながら、恐る恐るこう言ってきた。
「…こ、こういう物は食べてもよいのでしょうか。神に認められた物しか食べてはいけないと神官がおっしゃってました。みなが食べているものは穢れているものだと」
「は?その神官クソかな?私だったら蹴飛ばすわ」
そういう私にぽかーんとしているアトゥムにその横でツボっているストーム。
食べ物の恨みは恐ろしい
好きな食べ物食えなかったら、中指たててしまうくらいだ。
「温室育ちかなんなのか知らんけど、美味しいからいいんだよ。神に認められた物って、私だったら、もはやその神官殺るね。好きなもの食べなよ」
「……た、食べてみます」
おずおずと焼き鳥を手に受け取る。
恐る恐る口に運び、パクっと食べた。最初は「ん?」という顔だったが段々顔が明るくなり、最終的にはほわわんと花が舞っていた。
「てか、ストームは神殿に住んどらんの?」
美味しそうな顔をしながら焼き鳥を食べているアトゥムを邪魔できず、ストームに声をかけた。
「ん?わい?わいは、そもそも神の使いじゃないからな」
「あ、そうなの。てっきり神の使いだと思ってたわ」
「お前鋭いわ」
「うん…?まぁいっか。てか、神官ぶっ飛ばしに行ってこよっかな」
「鋭いわ」という言葉が気になったが、別にいっかという気持ちで、拳を上にあげた。
食べ物の恨みを舐めたら、多分私に一発で殺られる。
「やめとき、いろいろと怒られるで」
「えー………てか、どんだけ世間知らずなん?ストームの兄」
「めちゃくちゃ世間知らずだわ」
「……ま、仲良くて良かった。これで仲悪かったら私が死んでたんだが」
「知っとるわ」
「…ん~っ…!!めっちゃこれ美味しいです!!」
いきなりアトゥムが声を発したので、びくっと肩が震えた。
焼き鳥を口に頬張りながら幸せそうな声をあげている。
「あ………神官との約束を破ってしまいました。や、やはり、食べるのは……」
一瞬思い出したのか顔が暗くなる。なんだか小さな子供を見ているようだ。
こんな躾け方した神官やっぱ殴る。
「知ってる?食べ物を残すのはもっといけないことなんよ?私達は動物達の命があるから生きていられる。だから、きちんと感謝して全部食べなきゃ駄目だぞ」
「それはしょうがないので、食べます!」
「よろしい」
「見事に手懐けたな」
はぁと呆れたような視線を送られる。アトゥムの場合、食べ物に弱いことがわかった。
可哀想すぎて泣ける。こんな美味しいものを知らないなんて人生損してると思う。
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