私の婚約者をとった妹は婚約者に絶望する

さくらもち

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第一章 始まって仲直り

二十一話

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「………あ、いたいた。テクディア!」

 長い廊下を歩いていたテクディア。ぐっとタイミングだ。
 手を振りながら、テクディアの方へと歩く。

「ん?なんだ、お前か」

「ギクテッドの事好き?」

「は?」

 唐突な事に驚いているのか、目を点にしていた。
 別に兄弟の事を好きか嫌いか聞いただけだが、テクディアはどうなのだろう。

「あ、恋愛的な意味は違うよ?」

「知ってる……………ギクテッドはまぁ嫌い…ではない。あいつが僕を恨むのはしょうがないことだ」

「あー、なるほどね。鈍い男はやぁねぇ……」

 にやにやと顔をする。テクディアはその顔にうげぇと嫌そうな表情をした。

「その顔やめてくれ」

「え、やだ」

「おい…!てか、なんでそんな事聞くんだ?」

「……幸せって言うのはね。気づかず過ぎていってしまうんだよ。まだ手が届くならそれを取らなくちゃね」

「は?」

 その言葉の意味がわからないのだろう。私はとりあえず、くすっと笑ってみた。
 まるで、偽物というのを隠すように。

「いやー、冗談!じゃなくて、ギクテッドと仲直りしないの?」

「仲直り……?あいつは…仲直りというより縁が切られてるような気がするんだが?」

「気がする、ね。あのさ、馬鹿なの?馬鹿だよね」

「は?いきなり馬鹿って………」

 いや、ここまで鈍いのはもはや私の中ではありえない。
 馬鹿としか言いようがなかった。もちろん、本当に馬鹿だとは思ってないが。

「馬鹿だよ。ギクテッド、テクディアの事恨んでるわけないじゃん」

「な…っ……あ、あいつは…僕に両親を殺されたも同然だ…!!それに、あいつだってーー」

 それを聞いて血相を変えた。認めたくない、というより、自分の存在が嫌なのか。

「いやいや、ツンデレは例外ね。そもそも、縁切られてるなら、なんでギクテッドはここに来るの?鈍いって」

「…っ……!?」

 私がそういうと、やっとなにかに気づいたのかハッと険しい表情をしていた。
 もしかしたら、テクディアは気づきながらも目をそむけてたのかもしれない。

「よーし……!仲直りするよ!!」

「は?」

「ケーキでも作ってもってて、謝ろ!」

「ま、まて…!僕は認めたわけじゃ………」

「強制に決まってるじゃん」

 テクディアの大きくて優しく温かい手を引っ張る。もちろん、厨房の方へ行くつもりだ。
 ぐいっと無理矢理連れて行こうとする。

「っ…………わ、わかった。けど、その………ケーキは、あいつチョコが好きだ」

 ………あー、なんだ。この人達、素直じゃないだけじゃん

 めんどくさいカップルかよ、と思ったがさすがに言うのやめておこう。
 私は恥ずかしそうにいうテクディアを強制的に厨房の方へと連れて行った。

 けど、なんだろ。いいなぁ……
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