私の婚約者をとった妹は婚約者に絶望する

さくらもち

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第一章 始まって仲直り

十七話(テクディア視点)

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「それで、そっちの状況はどうなってる?」

「えっと、予定通り噂が沢山広まってます。けど、これでいいんですか?」

「あぁ、問題ない」

 資料に目を通しながら、サキラへそう言った。実は、僕とリリアナが婚約したという噂を多く広ませていったのだ。

「けど、驚きましたね。あの元婚約者?クロード様は、借金を背負っているとは……」

 感心したようにサキラも少しだけ書類を覗く。あの、元婚約者の素性を調べたところ、借金を背負っていることが判明した。

 あのアークリンク家の事は大体知っていたが、クロードの事はあまり調べていなかった。

「まぁ、だろうな」

「あ、それと、関係ないかもしれませんが、リリアナ様が使用人達に次々と告白されてますよ」

「は?」

 それを聞いて耳を疑った。
 確かに顔立ちとかは綺麗だと思う。けど、あの冗談で言った「モテる」が本当になるとは思っても見なかった。

「テクディア様も知ってる通り、本人はその気ではないでしょうが、ほぼ男装ですからね………男からも女からも人気者です!」

「いやいや、待て!なぜ、男からもなんだ!!」

 思わず、視線をずらしサキラの方へと向いた。
 女からなら理解できる。ほぼ男装だし、傍から見れば綺麗な顔立ちの男だし。

「えーと、凛々しくて貴族ぽくないかっこよすぎる!と、いう理由がほぼで………一部は裏がなさそうで好き!という人もいましたね…」

「た……」

「た?」

「対象は殺す……?」

「物騒すぎません?」

 もはや、やるしかないのではないだろうか。サキラは呆れているというか、くすっと少しだけ笑っていた。

「大丈夫だ。バレないように毒薬を使う」

「大丈夫じゃないんですが!??嘘なのは知ってますが……」

「まぁな、嘘の嘘はおいといて」

「え、嘘の嘘…?」

「アークリンク家の動きはどうだ?」

「……………まぁ、普通ですよ。あ、でも、あのクズ妹………じゃなくて、リーシャン様はリリアナ様の事を悪く言ってるようですが……」

「まぁ、予想内だ」

 アイツらのことだ。言うのはわかってた。けど、それでも言ってほしくないと思ってしまうのは贅沢だろうか。
 僕はまた書類へと目を通していった。

「あと、ちゃんと言っときますが、あの待女達が告白を阻止しているようですので、平気ですよ」

「なら、大丈夫か……」

 そう言われホッとした。

「……………テクディア様が幸せになれますように」

 大事な書類の文を読み取っていると、ぽつりと小さくそうサキラはつぶやいた。

「ん?なんか言ったか?」

 けど、これは大事な書類の為こちらの文に集中していたせいか、全く声が聞こえなかった。

「いえ、ただもうけして孤独にならぬよう祈ってただけです」

「……?ふ…っ……なんだ、その願いは…お前は一人じゃないだろ?」

 一つ笑いをこぼす。もしかしたら、サキラを不安にさせてしまったのかもしれない。
 だから、守らなくてはいけないと思ってしまう。

「そう、ですよね……………テクディア様は自分の事など眼中にないですもんね」

 視線をあげ、サキラを見なくてもわかるその悲しい表情。
 まるで、「貴方は何も知らない」そう言われているようだった。

「そうだな」

 どう返事をすれば良いかわからなく。
 たった一言、そう呟いた。
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