私の婚約者をとった妹は婚約者に絶望する

さくらもち

文字の大きさ
上 下
18 / 99
第一章 始まって仲直り

十六話

しおりを挟む
「………で?どうしてそうなったんだ?」

 頭を抱え込んでいる私と、周りで騒いでいるメイド達。
 騒いでいる理由はわかるとおり服だ。

「………察して」

「まぁなんとなく察したが………リリアナ、その服はやめとけ」

「は?」

 メイド達なら理解ができたが、なぜテクディアにまで言われるのか理解ができなかった。

 テクディアは気づいてないのかと言うようにはぁと深いため息をついたあと、私にこう言った。

「いや、お前モテるぞ」

「はい??」

「……お前はそこまで髪も長くないし、一つ結びにしてるからな。男の方でモテるぞ?」

「嫌なんだけど!」

 思わず大きな声で否定する。だからといって、女でモテても嫌だが、男でモテるのももっとやだ。

「だろうな。てか、それは僕が十代半くらいの時に着ていていた服だぞ」

「大きいな!?」

「ふ…っ…お前は小さいけどな」

「煽ってます?」

 嘲笑うテクディアに拳をあげた。
 十代半くらいの服がこんな大きさなんて、今の私とぴったり、いや少しダボダボなサイズじゃないか。

「それで、どうするんだ?」

「もういっかなって………」

「うむ、そうか………」

「どうしたの?」

 先程から浮かない顔をしていて、その言葉を言うのがもどかしそうにしていた。
 テクディアの様子が変だ。

「いや、ずっと気になってたんだが、昨日魔物の血が入ってるとか、そんな騒ぎがあったのに、なんも言わないんだなって」

「いやいや、質問攻めとかしないから?ただ、う~ん。もし、気が向いたら言ってくれるだけでいいかな」

 その質問を聞いたとき、一瞬なんだっけそれ、となったほどだ。

 別にそこまで気にしてはいない。
 それに人のプライバシーに関わることは無理矢理教えてほしいと思わない。

「そういうものか……」

 しゅんとしたように、笑っているような笑っていないような表情をしていた。

 たまに見せるこの笑み。

 私はいてもたってもいられなくなり、テクディアの柔らかく綺麗な頬を両手、人差し指でぎゅっと押した。

 まるで、口角をあげるように。

「………はい、笑って!」

「ひゃ……?」

 は……?と言いたかったようだが、私が抑えているせいか声がうまく出せなかったらしい。

「こんやのひゃっても、ひみがやいだろ……」

「え?なんとなく」

「ひゃんとにゃくでやるな!?」

 驚いてはいたが、今度はちゃんと微笑んでいた。笑っていた。
 笑うとき、美形すぎてなんとなくいらつく。

「ふ……笑ったね?私の勝ちだ!!」

 笑ったと同時に頬から指をはなす。テクディアは顔がなんだかもどかしいのか、自分の顔を擦っていた。

「………はぁ……お前は何やってるんだ…」

 そして、言葉をぽつりと落とす。

「新しい遊びに決まってるよ」

「人を遊びに使うな」

「………じゃあ、私の事笑わせてみる?これで、公平だよ」

 作り笑いをしながら、テクディアに言った。テクディアはなぜか不機嫌になる。
 遊び、とは言ってもやっぱり嫌だっただろうか。

「……お前の遊びに付き合えと?」

「もちのろん!」

「………考えとく」

 その時、微かにふっと微笑んだのを私は見逃さなかった。
しおりを挟む
感想 237

あなたにおすすめの小説

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。

さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。 許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。 幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。 (ああ、もう、) やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。 (ずるいよ……) リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。 こんな私なんかのことを。 友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。 彼らが最後に選ぶ答えとは——?

あなたのことなんて、もうどうでもいいです

もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。 元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。

魅了が解けた貴男から私へ

砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。 彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。 そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。 しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。 男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。 元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。 しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。 三話完結です。

オカン気質の公爵令嬢〜転生しても代わり映えしません!

himahima
ファンタジー
卒業パーティーで婚約破棄・・・ 別にいいんですけどね…後処理めんどくさいな〜 設定ゆるめ、異世界転生ものです。 さっくり読める短編です。

私を売女と呼んだあなたの元に戻るはずありませんよね?

ミィタソ
恋愛
アインナーズ伯爵家のレイナは、幼い頃からリリアナ・バイスター伯爵令嬢に陰湿ないじめを受けていた。 レイナには、親同士が決めた婚約者――アインス・ガルタード侯爵家がいる。 アインスは、その艶やかな黒髪と怪しい色気を放つ紫色の瞳から、令嬢の間では惑わしのアインス様と呼ばれるほど人気があった。 ある日、パーティに参加したレイナが一人になると、子爵家や男爵家の令嬢を引き連れたリリアナが現れ、レイナを貶めるような酷い言葉をいくつも投げかける。 そして、事故に見せかけるようにドレスの裾を踏みつけられたレイナは、転んでしまう。 上まで避けたスカートからは、美しい肌が見える。 「売女め、婚約は破棄させてもらう!」

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

処理中です...