私の婚約者をとった妹は婚約者に絶望する

さくらもち

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第一章 始まって仲直り

十四話

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「!??」

 いきなり出てきたテクディアに呆然とするばかりだ。

 まさか、聞いていた……?

 そう考えてしまうと急に恥ずかしくなってきた。まさか、聞いていたなんて、聞いていたならいたで、言葉遣い選んだのに。

「あー、クズのお出ましか?俺の仕事はやったか?」

「やったが?兄よ」

「は…っ…!お前に兄と呼ばれる筋合いはない!!」

 兄、と言った途端に不愉快な顔をしていた。不機嫌ではなく、不愉快だ。
 こんな自信満々なギクテッドが言うことだし、本当に不愉快なんだろう。

「……そうか。でも、ここは僕の家だが?お前には立派な城があるだろう?」

 はぁと深いため息を付き、呆れたような表情で言葉を返した。

「何、俺らは兄弟だろ?例え、お前が化け物だとしても、俺は嬉しいぞ。なんだって、お前のおかげで俺が皇帝になれたんだからな!!」

「化け物……?さっきから聞いてれば、なんでテクディアの事を…!!」

 私もいい加減我慢がならず、ギクテッドに聞いてしまった。
 だって、先程からずっとテクディアの悪口を言うのだ。嫌になるに決まってる。

「お前は知らないんだったな…!こいつは魔物の血が入ってる化け物だ!!」

 化け物……魔物…?は?

 私はその言葉を聞いたとき、なによりも突っかかった事があった。
 だから、私は一旦深呼吸をしたあと、にこっと優しく微笑みながら言った。

「は?そんな事で言うのやめろ?化け物だろうがなんだろうが知らないに決まってるんでしょうが。まじ黙っとけ?……………以上です。もう帰りますね」

 言いたいことを全部吐き出したあとの爽快感は気持ちの良い。

 ギクテッドは、ぽかーんと口を開いたまま唖然としているようだ。

 テクディアはこれまた驚いているようだが、さほど驚いてはなかった。ただ、頭を抱え込んでいる。

 私はテクディアの腕を引っ張り、「行くよ」と言うような視線を送り、ほぼ強引に、動かなくなったギクテッドの前から二人して姿を消した。

 あの後、テクディアを人目のつかないところまで連れて行った。もちろん、屋敷の中で場所などわからない。

 けど、テクディアが必死になって笑いをこらえているのが見えたからだ。

「く…っ……お前……ふ…っ…あはは…!!」 

「笑うと思った」

 涙目になりながらも笑いに笑っている。テクディアはあまり人前では笑わないのかなと思ってしまう。

「だって…っ…ふふ…お前一応あれ皇帝だぞ?あんな態度取って……あはっ……」

「んー、いらついたから?それと、テクディアは化け物じゃないし?」

 それを言うと、テクディアは一瞬ハッとし少し考え込んでしまった。

「………なるほどな。ありがとう」

「は?えっと、その…どういたしまして?」

 突如言われるありがとうの言葉。
 なぜありがとうと私は言われているのだろうか。不思議にすぎる。

「それじゃあ、私は部屋に戻るから」

「場所はわかるか?」

 じゃあね、というように手を振りながらその場所から抜けようとテクディアに背中を向けた。
 テクディアはまだ笑いが耐えないのか手で口を抑えながら、そう聞いてきた。

「ふ…っ………もちろんわからない!」

 振り返り、そう言った。

「リリアナって……貴族だよな?」

「最近、自分でも疑ってきたよ………」

 痛々しい視線を避けながら、あはっ……と言葉を落とした。
 だって、本当なら皇帝にあんな事言えないし、言ったら死刑にされるのもいちも承知だ。

「うん、もうなんでもいいや。探索しよっかなって思ってた」

「探索って……ここは洞窟か何かか?」

「…………そうだよ!」

「違うが!?」

 思わずツッコミを入れられる。最近、ちょっとだけテクディアもキャラぶれてきている気がしてきた。

 まぁ、いいんだけど

 むしろほっとする。あのテクディアが笑っていてくれてるのだ。

 あれ、私なんで………昔、会ったことあったっけ…?

 その思考が脳内によぎる。昔と今のテクディアと比べているような思い方だ。
 けど、私はそんなの知らない。知るはずもない。

「リリアナ?大丈夫か」

 いろんな思考がよぎる中、テクディアが私の名前を呼んできた。
 心配しているようだ。

「ごめん、ちょっとぼーっとしちゃてたかもしんない。まぁ、探索してくるからアディオス!」

 無理矢理突き通し、自分の部屋へなんとか、何とか…!!帰っていった。



 なんとか…!ここ大事、テストに出ます。
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