私の婚約者をとった妹は婚約者に絶望する

さくらもち

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第一章 始まって仲直り

九話

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「ゴメンナサイ、リカイガデキマセン」

 玄関の目の前にいるあの美系。しかも、あの使用人もいるし、でっかい馬車もあった。
 見たこともない豪華な馬車だし、なんとなくかしこまってしまう。

 他の使用人だって少しだがいる。けど、一番気になったのは、使用人が持っている書類の事だ。

 少しだけ見たのだが、あの書き方は………

「僕は言ったぞ?迷惑な事は何かって」

「もしかして………」

「あの時は「今」と言っただろ?ということは、婚約しても迷惑じゃないってわけだ」

「小癪すぎるんですが!?」

 思わずツッコミを入れる。なんだその騙し技は。狐に包まれたような気分だ。

「………そういえば、お前。怖くないのか?」

「貴方様のおかげで和みましたんですが!?」

「違う。お前だって僕の噂くらい知ってるだろ?」

「……あぁ!あれですね。いや、別に何かな~って。あれ、嘘でしょう?」

 一瞬忘れてしまっていた。噂、確か裏で何かと絡んでいるとか、そんなのがあった気がする。

「本当だとしたら?」

「………特には…」

 忘れるほどなのだから、別にそこまで大したものではないだろう。
 それに、同じ人間なのに怖いなんて事はありえない。

「えーと、それで婚約は………」

「するな」

「知ってた………」

「まぁ…!テクディア様ではないですか!!さぁさぁ、そんなゴミに構わずどうぞ中へ!」

 横からひょこっと出てきた妹、リーシャンはテクディアの腕を強引に引っ張った。

 けど、その手は震えている。きっと、皇帝の弟だから媚びとけば良いとでも思ってるのだろう。

 それに、何より妹の大好物の美系だ。まぁ、それでも噂が怖いらしいから震えてるのだろうが。

「ゴミ………」

 テクディアはその言葉が突っかかったのか、妹に引っ張られても、けして行こうとはしなかった。

「申し訳ないけど、興味はない。やめろ」

 冷たい視線でリーシャンを見下した。そして、妹の手を振り解いた。
 リーシャンは自分の手を見てカタカタと震わせながら、震えを抑えていた

「ご両親は?」

「き…きききっと、用意してるかと……」

 まだ震えが抑えきれないのか、恐る恐るそう言っていた。

「わかった。なら、もう行くぞ、リリアナ」

 はぁとため息を付き、私の手を引っ張った。
 リリアナ、名前でそう言われた時、なぜか嬉しく思ってしまった。

「ちょっ……!テクディア様…!!」

 容赦なく私の手を引っ張り馬車へと連れて行こうとする。
 けど、その手は優しくすぐ振り解けるものだったが、私は振り解けなかった。

「様、と敬語はいらん。それと、別に家族の事は気にするな」

「いや、気にします!!」

 そうやって、連れて行かれたのだ……
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