このセカイで僕が見つけた記憶

さくらもち

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十一話

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「とは言っても僕はもう目が冴えちゃったんだよね………」

 久しぶりによく寝れたせいか、体が満足してしまったのかもしれない。
 隣で気持ち良さそうに寝ているツバサを見ると、とても不思議な気持ちになった。

 寂しくない

そう思うようになってきたのだ。

「……探索してみよ…」

ベッドからゆっくり、音を立てないように降りた。
 地面に触れると、人差し指の第一関節くらいの深さの水が辺り一面に広がっていた。

「ここで、ツバサは一人……」

 そう考えると、不思議というのもあるし、胸がきゅっと締められる様な感覚も味わった。
 こんな、広い広いセカイで、一人だけいて寂しくないのだろうか。

 ふと、ツバサの方を向くと、分厚い本を持っている事に気がついた。
 けれど、寝ている時は明らかにその本は邪魔そうだ。

 そういえば、僕が起きたときにツバサが持っていたものだ。

 少しだけ申し訳ない気持ちもありながらベッドにまた乗っかり、そっと息の根を殺して本を持っていった。

 ツバサから少しだけ離れ、ベッドへと座る。

「ツバサが持ってる本、か……少しだけ興味があるんだよね……」

 表紙は何とも言えない色でぐちゃぐちゃになっていて、外から見ると紙は結構ぼろぼろだ。

 緊張しながらも、その本を開けた。

○月✕日(△)

今日は友達のテンと遊んだ。
楽しかった。せま先生も、せまえもんというモノを作ってくれた。
何かはわからないが楽しかった。

「僕………?」

 少しだけ幼い字で書かれたそれは日記らしきものだった。
テン、僕の文字が入っていて驚いた。
 また次のページをめくっていく。

○月✕日(△)

せま先生は優しい、テンも優しい。
孤児の僕達をせま先生はいつも優しくしてくれる。
テンもまた僕の心の寄り添いになってくれる。
皆大好き。
この、幸せ以外もう何もいらない。

「……?なにこれ……日記…なのはわかるけど……」

 また一枚、また一枚、と、ページをどんどんめくっていった。
 どれも、幼い子が書いた可愛らしい字と日記だ。

 けど、途中から白紙になり、じれったくなって、最後のページをめくった。

○月✕日(△)

今日も帰ってこない

 壊れたような、壊れてしまった様な字で書かれたそれは何とも言えなかった。

 けど、それを見てなぜか泣きたくなる。
 いや、実際はもう目には大量の雫が溢れ出してきていた。

「帰ってこない……なに…これ……?」

雫が落ちて、そのぼろぼろの紙に染み込んでいく。その文字が、滲んでぼやけていった。

「ツバサ……」

 その言葉を口にした途端に、闇に引きずり込まれていく様な気がした。

 けど、気がしたんではなく、本当に真っ暗な闇に呑み込まれているのだとわかる。

 もがいて、助けを呼ぼうとしても、手を伸ばそうとしても、どんどん闇は深くなり大きくなり、もう自分の体も、顔も、何もかも呑み込まれてしまった。

 真っ暗ななかわかるのは、浮遊感を感じるだけだ。

 そして、落ちていくような感覚。

「ツ、バサ…………」
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