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四話
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「でも、まずお前が何を見つけなくちゃいけないのかがわからないな」
「僕にもよくわからないんだよね……」
このセカイにいきなり連れてこられて、そして「何をーー」と言われても全くしっくり来なかった。
「だが、ここに来るもの全員。絶対に何かを失くしてくるんだ。それは決定的なんだが……さっきも言ったとおり、記憶とは特別で極少ししかない。だから、見つかりやすいんだ」
「けど、僕のはそもそも記憶なのかもわからない」
「そういうことだな」
はぁとツバサは深いため息をついた。記憶なのか果たして何なのか。それは誰にもわからないものだ。
「なんかないのか?」
「なんかって?」
「自分の中から何か抜けてしまったようなモノだ」
「それがわかれば苦労はしないよ……抜けたモノ…忘れたモノ……」
何度も考えてみたがやはりわからなかった。生活していて違和感なんて全くなかったし、今でも何か違和感はなかった。
「…ツバサ……?」
「は?」
「いや……なんでもない」
ぽつりと呟いてしまった言葉にすぐさま否定した。
でも、なぜかわからないけど、ツバサ、という言葉が出てきてしまった。
「しょうがない、片っ端らに記憶を漁ろう」
「え、そんな事できるの?」
「は?僕はこのセカイの管理人だぞ?」
ついつい忘れてしまった。時が過ぎているかわからないこのセカイでは記憶すらも曖昧になってしまう。
「ったく、早いところ見つけなちゃいけないな………」
少しだけ焦ったような表情を出した。確か、ここにずっといると記憶を忘れてしまうはずだ。
それを気にしているのだろうか。
「どうやるの?」
「簡単な事だ。記憶の部屋に行くぞ」
「き、記憶の部屋…?」
「ここは記憶のカケラが集まっている場所。記憶の部屋は、こことは特別な場所で本来ならお前なんて入っちゃいけないんだがな」
訳のわからないことばかりで頭が混乱してしまう。記憶のカケラがここには集まっていて、記憶が集まっている別の場所があるのだ。
けど、そんな事を一気に話されても覚えられる自信がない。
「記憶の部屋は、その名のとおり貴重な記憶が集まっている。ここに飛ばされたものは何かしら違和感があるから、その条件のなかから探し出すんだが…………お前は条件なんてないから、自分から見つけてもらうほうが早いんだ」
それはごもっともだ。確かに自分に条件なんてもちあわせていなかった。
そっちの方が効率的にもいいし、良い考えだろう。
「えっと……記憶のカギは……」
ツバサは相変わらず真っ黒なローブで全身を隠している。そのローブの中で何やらごそごそと何かを探しているようだ。
「これか」
ツバサが取り出したのは、雫の形をしたカギだ。上の方に、青く光る雫の宝石がはめられていた。
よく見ると光の加減で、虹色へと光る。
「これをな、地面へとぶっ刺す」
僕が、え?と言う前にカギの刺し口が地面へ通り抜けた。
すると、地面が崩れていくのを感じた。一枚、一枚、板の様に闇の中へと落ちていった。
「え、ちょっ……ツバサ……っ…」
「大丈夫だ。死なない」
僕が怒る前に、どんどんと上も右も左も板の様に落ちていき、次は真っ黒なセカイに変わった。
「いや!死ぬ!!死ぬってこれ!!」
「死ぬわけ無いだろ?」
ふっとツバサは鼻で笑うが、僕はそれどころではなかった。
ついには、自分が立っていた地面まで崩れてしまい、僕は下に落ちていく感覚に見回れた。
「え、死ぬーーー」
叫びたかったが、叫べないほどに急速で僕は落ちていった。
恐怖の中、辺りを見回しても真っ暗で怖いだけだ。本当に死を覚悟した。
「うぇ……っ…!?」
けど、気づいた時にはお尻が地面についていて、尻もちをついてしまった。
そして、情けない声も出してしまった。
そこはカケラのセカイとは全く違い、先程と変わらず真っ暗なセカイだ。
けど、違うところはいろんな所に鳥籠らしきものがあり、その中には光っている何かがあるというところだけだ。
だが、少しだけ光があって先程よりは落ち着く。
「確かに死んではない……けど……」
「僕にもよくわからないんだよね……」
このセカイにいきなり連れてこられて、そして「何をーー」と言われても全くしっくり来なかった。
「だが、ここに来るもの全員。絶対に何かを失くしてくるんだ。それは決定的なんだが……さっきも言ったとおり、記憶とは特別で極少ししかない。だから、見つかりやすいんだ」
「けど、僕のはそもそも記憶なのかもわからない」
「そういうことだな」
はぁとツバサは深いため息をついた。記憶なのか果たして何なのか。それは誰にもわからないものだ。
「なんかないのか?」
「なんかって?」
「自分の中から何か抜けてしまったようなモノだ」
「それがわかれば苦労はしないよ……抜けたモノ…忘れたモノ……」
何度も考えてみたがやはりわからなかった。生活していて違和感なんて全くなかったし、今でも何か違和感はなかった。
「…ツバサ……?」
「は?」
「いや……なんでもない」
ぽつりと呟いてしまった言葉にすぐさま否定した。
でも、なぜかわからないけど、ツバサ、という言葉が出てきてしまった。
「しょうがない、片っ端らに記憶を漁ろう」
「え、そんな事できるの?」
「は?僕はこのセカイの管理人だぞ?」
ついつい忘れてしまった。時が過ぎているかわからないこのセカイでは記憶すらも曖昧になってしまう。
「ったく、早いところ見つけなちゃいけないな………」
少しだけ焦ったような表情を出した。確か、ここにずっといると記憶を忘れてしまうはずだ。
それを気にしているのだろうか。
「どうやるの?」
「簡単な事だ。記憶の部屋に行くぞ」
「き、記憶の部屋…?」
「ここは記憶のカケラが集まっている場所。記憶の部屋は、こことは特別な場所で本来ならお前なんて入っちゃいけないんだがな」
訳のわからないことばかりで頭が混乱してしまう。記憶のカケラがここには集まっていて、記憶が集まっている別の場所があるのだ。
けど、そんな事を一気に話されても覚えられる自信がない。
「記憶の部屋は、その名のとおり貴重な記憶が集まっている。ここに飛ばされたものは何かしら違和感があるから、その条件のなかから探し出すんだが…………お前は条件なんてないから、自分から見つけてもらうほうが早いんだ」
それはごもっともだ。確かに自分に条件なんてもちあわせていなかった。
そっちの方が効率的にもいいし、良い考えだろう。
「えっと……記憶のカギは……」
ツバサは相変わらず真っ黒なローブで全身を隠している。そのローブの中で何やらごそごそと何かを探しているようだ。
「これか」
ツバサが取り出したのは、雫の形をしたカギだ。上の方に、青く光る雫の宝石がはめられていた。
よく見ると光の加減で、虹色へと光る。
「これをな、地面へとぶっ刺す」
僕が、え?と言う前にカギの刺し口が地面へ通り抜けた。
すると、地面が崩れていくのを感じた。一枚、一枚、板の様に闇の中へと落ちていった。
「え、ちょっ……ツバサ……っ…」
「大丈夫だ。死なない」
僕が怒る前に、どんどんと上も右も左も板の様に落ちていき、次は真っ黒なセカイに変わった。
「いや!死ぬ!!死ぬってこれ!!」
「死ぬわけ無いだろ?」
ふっとツバサは鼻で笑うが、僕はそれどころではなかった。
ついには、自分が立っていた地面まで崩れてしまい、僕は下に落ちていく感覚に見回れた。
「え、死ぬーーー」
叫びたかったが、叫べないほどに急速で僕は落ちていった。
恐怖の中、辺りを見回しても真っ暗で怖いだけだ。本当に死を覚悟した。
「うぇ……っ…!?」
けど、気づいた時にはお尻が地面についていて、尻もちをついてしまった。
そして、情けない声も出してしまった。
そこはカケラのセカイとは全く違い、先程と変わらず真っ暗なセカイだ。
けど、違うところはいろんな所に鳥籠らしきものがあり、その中には光っている何かがあるというところだけだ。
だが、少しだけ光があって先程よりは落ち着く。
「確かに死んではない……けど……」
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