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「ふぅーっ、今日も仕事終わったぁぁ」
背筋を伸ばし、息を吐く。聖女である私の仕事は山程で、怪我人の治療、浄化、などなど。
寝る時間なんて少ししかない。けれども、私は好きだった。やり甲斐を感じていた。
国から保護されて、やっと家族から解放され、優しい人々、感謝の言葉。
「婚約者は邪魔、だけどね…」
はぁ…と深いため息をついた。
聖女となった私は王子の婚約者となったのだが、あの王子が好きになれない。
「今日もお疲れ、自分」
* *
そんな、幸せな日々をしていただけだった。
悲劇は突然に、とある天気の良い朝の日。王子、婚約者から呼び出された。
そこには、私の両親、妹、もちろん婚約者もいて、護衛が沢山。
そして、妹は私を見て、こう言い放った。
「お姉様…っ!私が寝込んでいる時に、私が…聖女なのに……」
「は…?」
思わず思考停止してしまった。
妹は病弱で心優しい令嬢、というレッテルをはられているが本当は違う。
普通に元気だし、私に対しては嫌がらせを超えていじめをしてくる。
「聖女は一人しかいないんだけども?」
やっと出てきた言葉はそれだった。
聖女は一人しかいない、国を守る大事な聖女。一人しかいないはずなのだ。
「……しらばっくれる気なの?お姉様は…優しいと思ってたのに…」
顔を両手で覆い隠し、まるで本当に泣いてるような声を出してきた。
私だからこそ、わかる。本当は泣いていない事を。
「もう!やめるんだ…っ!!クレア!お前が偽聖女なのはわかってる!!ここで自白したら、するだけでいいんだ……っ」
精神科行ってこい
ふと、その言葉が口から出そうになったが、ぐっと喉まできて抑えた。
婚約者までもがそうやって言ってくるのは、流石にどうかと思う。
「なら、ルリ。適合成検査は?診断書、見せて、それで聖女かどうかわかるでしょ?」
はぁ…と今までにないほどの深く、深海よりも深いため息を吐きながら、腕を組んだ。
その返答に妹、ルリは迷ったのか嘘泣きしたまま反応がない。
適合成検査というのは、簡単に言うと得意属性。聖女かどうか判断できる大切な事だ。
十六歳になれば、それは強制的にやらされ、もしも聖女だったら国から保護される。
私はそれをやり、今ここにいるが、妹は「具合が……」と言って休んでた気がした。
二次検査的なものもあるが、それもご都合の具合悪い詐欺で休んでいた。
必然的に沈黙が流れる中、婚約者フェルクが、私に近づき、乱暴に肩を掴んできた。
「………おい!自白しろ!!お前の妹は本当に聖女なんだ!ルリは優しいから、世間に自分が聖女だということを隠しているんだぞ!!」
「なら、口外すれば良いのでは?」
「な……、く…っ!お前みたいな心の汚い婚約者はいらん!!」
「……はいはい、どうぞご勝手に」
手ではいはい、というジェスチャーをし、離れてくれというように一歩後退った。
フェルクは離れてくれたが、顔を顰め、なんとなく怒っているのがわかる。
「あなた…!自分が何言ってるかわかってるのっ!!!!」
それよりも怒っていたのは、先程の会話を聞いていた母だった。
怒声を浴びせられる。
「私は、本当の事を言ったまでです。聖女は私です」
胸を張って堂々と言える事。
「お姉様、最後まで罪を認めてくださらないのね……とんだゴミ姉だこと」
「此方としても苦しいが、偽聖女という罪すらも認めないなんて……っ、お前を国外追放する!!」
やっぱり……こいつらは馬鹿だ…
背筋を伸ばし、息を吐く。聖女である私の仕事は山程で、怪我人の治療、浄化、などなど。
寝る時間なんて少ししかない。けれども、私は好きだった。やり甲斐を感じていた。
国から保護されて、やっと家族から解放され、優しい人々、感謝の言葉。
「婚約者は邪魔、だけどね…」
はぁ…と深いため息をついた。
聖女となった私は王子の婚約者となったのだが、あの王子が好きになれない。
「今日もお疲れ、自分」
* *
そんな、幸せな日々をしていただけだった。
悲劇は突然に、とある天気の良い朝の日。王子、婚約者から呼び出された。
そこには、私の両親、妹、もちろん婚約者もいて、護衛が沢山。
そして、妹は私を見て、こう言い放った。
「お姉様…っ!私が寝込んでいる時に、私が…聖女なのに……」
「は…?」
思わず思考停止してしまった。
妹は病弱で心優しい令嬢、というレッテルをはられているが本当は違う。
普通に元気だし、私に対しては嫌がらせを超えていじめをしてくる。
「聖女は一人しかいないんだけども?」
やっと出てきた言葉はそれだった。
聖女は一人しかいない、国を守る大事な聖女。一人しかいないはずなのだ。
「……しらばっくれる気なの?お姉様は…優しいと思ってたのに…」
顔を両手で覆い隠し、まるで本当に泣いてるような声を出してきた。
私だからこそ、わかる。本当は泣いていない事を。
「もう!やめるんだ…っ!!クレア!お前が偽聖女なのはわかってる!!ここで自白したら、するだけでいいんだ……っ」
精神科行ってこい
ふと、その言葉が口から出そうになったが、ぐっと喉まできて抑えた。
婚約者までもがそうやって言ってくるのは、流石にどうかと思う。
「なら、ルリ。適合成検査は?診断書、見せて、それで聖女かどうかわかるでしょ?」
はぁ…と今までにないほどの深く、深海よりも深いため息を吐きながら、腕を組んだ。
その返答に妹、ルリは迷ったのか嘘泣きしたまま反応がない。
適合成検査というのは、簡単に言うと得意属性。聖女かどうか判断できる大切な事だ。
十六歳になれば、それは強制的にやらされ、もしも聖女だったら国から保護される。
私はそれをやり、今ここにいるが、妹は「具合が……」と言って休んでた気がした。
二次検査的なものもあるが、それもご都合の具合悪い詐欺で休んでいた。
必然的に沈黙が流れる中、婚約者フェルクが、私に近づき、乱暴に肩を掴んできた。
「………おい!自白しろ!!お前の妹は本当に聖女なんだ!ルリは優しいから、世間に自分が聖女だということを隠しているんだぞ!!」
「なら、口外すれば良いのでは?」
「な……、く…っ!お前みたいな心の汚い婚約者はいらん!!」
「……はいはい、どうぞご勝手に」
手ではいはい、というジェスチャーをし、離れてくれというように一歩後退った。
フェルクは離れてくれたが、顔を顰め、なんとなく怒っているのがわかる。
「あなた…!自分が何言ってるかわかってるのっ!!!!」
それよりも怒っていたのは、先程の会話を聞いていた母だった。
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胸を張って堂々と言える事。
「お姉様、最後まで罪を認めてくださらないのね……とんだゴミ姉だこと」
「此方としても苦しいが、偽聖女という罪すらも認めないなんて……っ、お前を国外追放する!!」
やっぱり……こいつらは馬鹿だ…
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