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二十九話

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「…………なんだっけ」

 目を覚ましたときの、この嫌悪感。なんでだろうか。
 見知らぬ豪華なベッドの中で、ぼーとしながら突っ伏している自分。

「何か……何か、なんだろう」

 耐え難い苦痛。いや、そんなの味わったことすらないのに。
 まるで、自分がわからなくなってしまったような、そうな気がした。

「失礼するねぇ」

 いきなり、ドアの開く音が聞こえ、驚きドアの方へと目を向けた。

「ウェイル…?」

 そこにはウェイルが立っていた。
 清々しい顔をしていて、どうしたのかと心配になってしまうほどだ。

「うんうん、正常だねぇ。あいつオーベロンの事と妖精の事だけで良かったねぇ」

「……?何言ってるの。妖精?あいつって誰?」

「う~ん。知人だと思えばいいねぇ」

 明らかに対応の仕方がおかしい。
 けど、これ以上ウェイルに聞いても絶対におしえてくれないだろう。

「知人……」

 思い出そうとすると、その人達の顔が真っ黒にぬりつぶされていて、わからないものになっていた。

「というか、大丈夫ねぇ?」

「え、あ、うん。それより、助けてくれてありがとう」

 あの最低親子から、助け出してくれたのはウェイルとルークだ。
 どうやら、貴族の人たちらしかった。
疲れたあまりに、ここで眠ってしまったらしい。

「別にいいねぇ」

「そう?」

「ごほんっ…!ウェイル、僕もいますよ」

 わざとらしい咳払いをし、ウェイルの後ろからひょこっと出てきた。
 ルークは私の事を一回見たあと、ウェイルの耳元で小声で囁いた。

「……ウェイル、どうですか?」

「忘れてる、正常」

 何を言っているのかは、こちらまで聞こえない。
 ただ、その何かを聞いてルークはなぜか安心した素振りを見せた。

「それじゃあ、外を散歩してみるねぇ?」

「外は危なくないですか?」

「ここじゃあ、大丈夫ねぇ」

「そ、その、私も行ってみたい」

 唐突な提案にルークは否定したもの、私がそう言うと、ルークはため息を付きながらこう言った。

「なら、僕も行きます」
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