妹に婚約者を渡した日

さくらもち

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一話

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「おねえちゃん…ごめんなさい。私ね、お姉ちゃんの婚約者が好きなの。もう付き合ってるの……お姉ちゃんの婚約者、くれない?」

 いきなり部屋に呼び出され、なんだと思えば、妹が急にその話をしだした。

 びっくり……とまではいかない。元々、私の婚約者クレイムが妹が付き合っているのは知っていたからだ。

「そもそもね…!お姉ちゃんにはクレイムと合わないと思うの!!ほら、お姉ちゃんは出来損ないでしょ?クレイムは優しくて、器用なのよ!」

「はぁ…?」

 思わず不満と思われるため息が出た。

「お姉ちゃんより、私の方が絶対合うわ……クレイムだって了承してるもの…お姉ちゃんは格の違いってものを理解してないわ」

 妹の私への嫌味はまだまだ止まらない。私は家族の中で「出来損ない」と言われている。
 というか、平凡。

 何もかも普通で、外見だって普通だ。一つだけ除けば、頭がいい事くらい。
 妹は美形で手先が器用な方だと思う。
 だから、世間的にも家族的にも溺愛されている。

「お母様が言ってたの、私とお姉ちゃんは天と地の差だって!お姉ちゃんは、出来損ないのただの道具なのよ!!」

「あの~、心臓ありますけど」

「お姉ちゃんは私の言うことだけ聞けばいいのよ!お姉ちゃんは私の陰なんだから…っ!!!」

 妹、クレアの瞳はうるうると涙で滲んでいた。こういう時は大体大声で泣かれて、両親に見つかり、私が怒られるパターンだ。

 クレアは子供の時から、嫌がらせばかりしてきた。それも、私と二人きりの時だけに。

「おかぁさまっっ!お姉ちゃんがいじめるぅ…」

 などと戯言を吐く。多分、あれはストレスが溜まったとき、私をサンドバッグ代わりにされていたのだ。
 そして、両親に怒られご飯なし。

 というか、まぁ今も現在進行形で続いている。

「……じゃなくて、普通にいいよ。あげる、あげる」

「ほんと…っ……!持つべきものは、出来損ないのお姉ちゃんねっ!!」

 嫌味か…?嫌味だろ…???

 先程、涙を流していたのが嘘みたいに嬉しそうな顔をしながら、部屋から去っていった。
 私は妹が去ったと思うと、呆れながらドレスの中を漁る。
 手探りで探していると、手に感触があったのでそれを掴んで出した。

「馬鹿かな。こっちは証拠、掴んでるのに……」

 私が持っていたのは、妹と婚約者の浮気写真、その情報達。
 また、嫌がらせされた時の証拠写真などもろもろ集まっていた。

「さて……慰謝料、絞り取るか」

 長年の恨みをはらすとき!!!
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