1941年12月8日

醍醐

文字の大きさ
上 下
3 / 6

第三話

しおりを挟む
俺は総理大臣官邸にやってきた。
もちろん、アポなしだ。
いきなりの訪問に警備の警官は不審な目を向けてきた。
まあ、226事件なんかもあったし警戒するのは当たり前か。
しかし、俺は気にしない。
「すみません。東條総理はおられますでしょうか?」
「貴様は何者だ?」
「私は、内閣総理大臣に会わせてほしいのです」
「そんなことを言ってもダメだよ」
「お願いします。どうしても会いたいんです!」
「ダメなものはダメだ名前も言わん奴を入れるわけがないだろう!」
「そこをなんとか!」
「しつこいぞ!取り押さえろ!」
「…………」
俺は無言で魔力を込めた。
すると、
「うっ!?」
俺を取り押さえようとした警察官が突然倒れた。
「こ、これは…………」
周囲の警官たちがざわめく。若い警官が詰所に戻り、電話をかけようとしていた。俺はそいつを気絶させ、電話を奪い取ると、あるところにかけた。
『はい』
「俺だ」
『え? 誰?』
「俺だよ。お前の上司さ」
『な、名前をなの…………』
「悪いが、東條総理に取り次いでくれ。火急の用件があるんだ」
『わ、わかった。すぐに連絡してみる…………』
しばらくして、
『今、こちらに向かっているそうだ。君が何者かは知らないが、とにかくここで待っていてほしいとのことだ』
「そうか。ありがとう」
俺は礼を言うと、若い警官を解放してやった。「…………」
周囲で見ている警官たちは唖然としている。
何しろ、突然、現れた男が、総理大臣を呼び出したのだから。
それから数分後、東條総理がやってきた。
「貴様は誰かね? どうして私を呼んだのかな?」
「初めまして。俺は、あなたに会うためにやってきました」
「会うためだと?」
「はい。単刀直入に言いましょう。俺は異世界から来た勇者です」
しおりを挟む

処理中です...