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微かな人の話し声が聞こえて目が覚めました。
まだ朝ではないようです。僕はどのくらい眠っていたのでしょうか。
「ーーーーそれじゃあ、よろしくね」
「承知いたしました」
アンソニー様と、もうひとりは知らない声です。
それにしても……と、さっきまでの自分の痴態を思い出して、僕は掛け布団を頭まで引き上げました。顔が熱いです。
前世と今世、合わせて正真正銘初めてだったのですが、いざ実体験してみると、事前に頭に入っていた知識から想像していたものとは全く違っていました。
今もアンソニー様を受け入れた部分に違和感が残っています。以前、肌色多めの本でよく読んだ『まだなにか挟まっている感じがする』というやつです。
今、いったいどんな状態になっているんだろうかと気になった僕は、体を丸めて、そおっとそこへ手を伸ばしました。
「…………っ!」
いわゆる、まだ緩んだ状態だったのでしょう。慎ましやかなはずのそこは、ちょっと触れただけで僕の指をぬるりと飲み込んでしまいました。
僕は声にならない悲鳴を上げながら慌てて指を引き抜きます。と、同時にナカからとろりとしたものが溢れ出てきて、半ばパニックに陥った僕は咄嗟に指で栓をしました。
えーっと……。
「……どうしよう」
幸いアンソニー様は、隣室に繋がるドアのところで誰か(多分、夜中に聞き耳立ててコトが為されたか確認する人)とまだお話し中なのでここにはいません。
指を抜けばいいだけの話なのだけど、抜くとナカからとろりとしたものが出てきてしまいます。
僕の朧げな記憶では、アンソニー様が中で出したのは一度だけなので量的にはそこまでではないと思うのですが、もしも僕の意識のない時にもヤっていたとしたら、そこそこの量が僕のナカに残っているはず……。
いや、まさかね。
アンソニー様が意識のない僕に無体を働くなんて、彼がそんな鬼畜な所業をするはずがありません。
僕はアンソニー様を信じて指を抜いてみることにしました。
よし!と、心の中で気合を入れます。
さあ、今から抜くぞと手を動かそうとしたその時、ぼふっと掛け布団の上から抱きしめられてしまいました。
「ニーコ、起きたのかい?」
「ひっ!」
「ーーん? どうしたの、どこか痛む?」
万事急須です。ここで布団を捲られるのは非常にまずいです。
あわあわする僕をよそに、無情にも夫の手によって僕を守る結界は取り払われてしまいました。
「…………」
「…………」
相手がなにを考えているのか、コミュニケーションをとる上で会話はとても大切です。
ですが現状、僕の頭の中は真っ白で、じっとこっちを見つめるアンソニー様を見つめ返すことしかできません。
おそらくアンソニー様も僕と同じ状態なのでしょう、僕を見る目がちょっとだけ怖いような気もしますが。
しかし、このままでは埒があかないのも事実。僕は思いきって当初の目的を果たすことにしました。
根もとまで突っ込んだままの中指をゆっくりと引き抜きます。
「……んっ」
ちょっとだけゾクっとして、つい腰が揺れてしまいました。
ひと息に指を抜けばいいのですが、相変わらずアンソニー様がこっちをじっと見ているので、妙な緊張感からぎこちない動きしかできません。正直気まずいったらないです。
こんな状態になっているのも、僕の許可なく勝手に掛け布団を捲ったアンソニー様が悪いのです。
ええ、ええ、八つ当たりだとわかっています。だけど何かに当たっていないとやってられない気持ちになる僕の心境もわかって欲しいのです。
僕は軽くアンソニー様を睨みつけながら、そろそろと後ろに突っ込んだ自分の指を抜きました。
途中、声が漏れてしまったり、つい腰が揺れてしまうのはどうしようもありません。僕だって出したくて声を出してるのではないのです。どんな声なのかは僕の名誉のために割愛します。
「あ、んっ……はあ……やっと抜けた」
やはり栓を抜くと中身が少し溢れてしまいました。幸い量は多くないようなので、アンソニー様は寝ている僕に無体を働いてはいなかったようです。
ほっと息を吐く僕へ、アンソニー様が絞り出すように呻きながら声をかけてきました。
「ーーニコ……君って人は……」
「あ、アンソニー様。おはようございます」
いろいろと突っ込まれる前に、僕がお尻に栓をしていた件についてはスルーすることにしましょう。
はて?アンソニー様、とってもいい笑顔なのですが。
「ふふ……どうやら一度だけでは満足出来なかったみたいだね。お互い初めてだし無理をしてはダメだと我慢したのだけど、その必要はなかったかな?」
「アンソニー様?」
さて、その後、僕がどうなってしまったかについてはご想像におまかせします。
【おしまい】
まだ朝ではないようです。僕はどのくらい眠っていたのでしょうか。
「ーーーーそれじゃあ、よろしくね」
「承知いたしました」
アンソニー様と、もうひとりは知らない声です。
それにしても……と、さっきまでの自分の痴態を思い出して、僕は掛け布団を頭まで引き上げました。顔が熱いです。
前世と今世、合わせて正真正銘初めてだったのですが、いざ実体験してみると、事前に頭に入っていた知識から想像していたものとは全く違っていました。
今もアンソニー様を受け入れた部分に違和感が残っています。以前、肌色多めの本でよく読んだ『まだなにか挟まっている感じがする』というやつです。
今、いったいどんな状態になっているんだろうかと気になった僕は、体を丸めて、そおっとそこへ手を伸ばしました。
「…………っ!」
いわゆる、まだ緩んだ状態だったのでしょう。慎ましやかなはずのそこは、ちょっと触れただけで僕の指をぬるりと飲み込んでしまいました。
僕は声にならない悲鳴を上げながら慌てて指を引き抜きます。と、同時にナカからとろりとしたものが溢れ出てきて、半ばパニックに陥った僕は咄嗟に指で栓をしました。
えーっと……。
「……どうしよう」
幸いアンソニー様は、隣室に繋がるドアのところで誰か(多分、夜中に聞き耳立ててコトが為されたか確認する人)とまだお話し中なのでここにはいません。
指を抜けばいいだけの話なのだけど、抜くとナカからとろりとしたものが出てきてしまいます。
僕の朧げな記憶では、アンソニー様が中で出したのは一度だけなので量的にはそこまでではないと思うのですが、もしも僕の意識のない時にもヤっていたとしたら、そこそこの量が僕のナカに残っているはず……。
いや、まさかね。
アンソニー様が意識のない僕に無体を働くなんて、彼がそんな鬼畜な所業をするはずがありません。
僕はアンソニー様を信じて指を抜いてみることにしました。
よし!と、心の中で気合を入れます。
さあ、今から抜くぞと手を動かそうとしたその時、ぼふっと掛け布団の上から抱きしめられてしまいました。
「ニーコ、起きたのかい?」
「ひっ!」
「ーーん? どうしたの、どこか痛む?」
万事急須です。ここで布団を捲られるのは非常にまずいです。
あわあわする僕をよそに、無情にも夫の手によって僕を守る結界は取り払われてしまいました。
「…………」
「…………」
相手がなにを考えているのか、コミュニケーションをとる上で会話はとても大切です。
ですが現状、僕の頭の中は真っ白で、じっとこっちを見つめるアンソニー様を見つめ返すことしかできません。
おそらくアンソニー様も僕と同じ状態なのでしょう、僕を見る目がちょっとだけ怖いような気もしますが。
しかし、このままでは埒があかないのも事実。僕は思いきって当初の目的を果たすことにしました。
根もとまで突っ込んだままの中指をゆっくりと引き抜きます。
「……んっ」
ちょっとだけゾクっとして、つい腰が揺れてしまいました。
ひと息に指を抜けばいいのですが、相変わらずアンソニー様がこっちをじっと見ているので、妙な緊張感からぎこちない動きしかできません。正直気まずいったらないです。
こんな状態になっているのも、僕の許可なく勝手に掛け布団を捲ったアンソニー様が悪いのです。
ええ、ええ、八つ当たりだとわかっています。だけど何かに当たっていないとやってられない気持ちになる僕の心境もわかって欲しいのです。
僕は軽くアンソニー様を睨みつけながら、そろそろと後ろに突っ込んだ自分の指を抜きました。
途中、声が漏れてしまったり、つい腰が揺れてしまうのはどうしようもありません。僕だって出したくて声を出してるのではないのです。どんな声なのかは僕の名誉のために割愛します。
「あ、んっ……はあ……やっと抜けた」
やはり栓を抜くと中身が少し溢れてしまいました。幸い量は多くないようなので、アンソニー様は寝ている僕に無体を働いてはいなかったようです。
ほっと息を吐く僕へ、アンソニー様が絞り出すように呻きながら声をかけてきました。
「ーーニコ……君って人は……」
「あ、アンソニー様。おはようございます」
いろいろと突っ込まれる前に、僕がお尻に栓をしていた件についてはスルーすることにしましょう。
はて?アンソニー様、とってもいい笑顔なのですが。
「ふふ……どうやら一度だけでは満足出来なかったみたいだね。お互い初めてだし無理をしてはダメだと我慢したのだけど、その必要はなかったかな?」
「アンソニー様?」
さて、その後、僕がどうなってしまったかについてはご想像におまかせします。
【おしまい】
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