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その後、ピンク頭さんと他愛もない話をしているとアンソニー様が僕を迎えに来ました。エドさんも一緒です。
僕はピンク頭さんと別れてアンソニー様とお城に向かいます。
あ、僕とピンク頭さんがいたのは王宮内でも一般開放されているエリアで、お茶ができるちょっとしたスペースもあってデートスポットとして人気の場所だとか。
どおりで心躍る光景があちこちで見られたわけです。今世の人たちは愛情表現がオープンな傾向があるので、僕は生まれてこの方、萌え補給に困った試しがありません。実に良きことです。ありがとう心の友よ、僕をこの世に生まれ変わらせてくれて。
「ニコ、待たせてごめんね」
「マティスくんとお茶をしていたので大丈夫ですよ?」
「本当に? 変なことされなかったかい? ニコはとっても可愛いから私は心配で堪らないんだよ。ああ、早く君と一緒になりたい……あと二日がこんなにも長く感じるのは初めてだよ」
アンソニー様は初めて会った時からずっとこの調子です。いえ、僕が気持ちを伝えてからは少し糖度が増したでしょうか。
僕だけをずっと想ってくれているのは確かに嬉しいのですが、実をいうとほんの少しモヤるというか素直に喜びきれない部分が僕の中にあるというか。
あと二日で僕はアンソニー様の伴侶になります。
前世のことを考えると、二度目の結婚になります。一度目は残念な結果になってしまいました。これは生まれ変わって、別視点から考えられるようになって僕にも至らないところがあったのだと思えるようになりました。まあ、今更ですが。
その点、今世のアンソニー様に関しては全くといっていいほど浮気の心配はしていません。
だけどーー。
「ねえ、アンソニー様。僕、聞きたいことがあるのですが」
「ん? なにかな?」
「アンソニー様は僕のどこが良かったのですか?」
僕が真面目な顔で聞いたら、アンソニー様も何かを感じたのか、いつもの蕩けるようなにこにこからすっと真面目な顔になりました。
「最初はなんて可愛らしい子なのだと思った。まるで天使がこの世に現れたのではと錯覚してしまったよ」
「では、僕の見た目に惹かれたと」
「きっかけはね。だけど何度かニコと触れ合ううちにニコの違った一面が見えてきたんだ」
「ーー違った一面、ですか」
僕ははっとして目を見開きました。
これっていわゆる『ギャップ萌え』なのでは?
厳ついヤンキーが、雨の日に捨て猫に自分の傘を差しかけるあれです。別パターンで着ていた学ラン(ブレザーではなく学ラン。ここ重要です)を寒さに震える子猫に被せるというのもあります。
それを偶然見かけてキュンとするあれですね。
もしかしてアンソニー様は、僕のことを弱っている小動物も助けないような冷たい心の男だと思っていた?
だから偶然、僕が雨の日に子猫を助けるところを見かけてギャップにきゅんとした?
でも、僕には雨の日に子猫を助けた覚えがありません。ここははっきりさせておかないと。
「アンソニー様、僕は子猫を飼っていません。なのでそれは勘違いだと思います」
「子猫? なぜ子猫? ええっとニコ、君が今なにを想像しているのかわからないけど、子猫は一旦置いておこうか」
む。雨の日、子猫に優しくして萌えきゅんではなさそうです。
「ニコはいつも楽しそうにしているけど、たまにね、とっても寂しそうな目をすることがあるんだ。きっと無意識なのだと思うし、私にニコがそんな目をする理由なんてわからないけど、私はニコにそんな目をさせる存在が許せなくてね。なんとしてでも私がニコの憂いをなくしたいと思うようになったんだ。まあ、いつの間にか寂しい目なんてしなくなったのだけどね」
なるほど。もしかしたら、それは僕がまだ前世の櫻子さんの記憶を引きずっていた頃のことでしょう。
「今のニコはいつも楽しそうだ」
「はい。僕は毎日とっても楽しくて幸せですよ?」
アンソニー様がいつものキラキラを撒き散らします。
「これからもずっと君の笑顔が絶えないよう、私は君を大切にすると誓うよ。愛してる、ニコ」
アンソニー様が僕に触れるだけのキスを落とします。
これまで何度も、それこそ数えきれないくらいキスをされてきましたが、今のキスがこれまでの中で一番甘く感じました。
◇◇◇
夕方に短いですがもう一度更新します。
m(_ _)m
僕はピンク頭さんと別れてアンソニー様とお城に向かいます。
あ、僕とピンク頭さんがいたのは王宮内でも一般開放されているエリアで、お茶ができるちょっとしたスペースもあってデートスポットとして人気の場所だとか。
どおりで心躍る光景があちこちで見られたわけです。今世の人たちは愛情表現がオープンな傾向があるので、僕は生まれてこの方、萌え補給に困った試しがありません。実に良きことです。ありがとう心の友よ、僕をこの世に生まれ変わらせてくれて。
「ニコ、待たせてごめんね」
「マティスくんとお茶をしていたので大丈夫ですよ?」
「本当に? 変なことされなかったかい? ニコはとっても可愛いから私は心配で堪らないんだよ。ああ、早く君と一緒になりたい……あと二日がこんなにも長く感じるのは初めてだよ」
アンソニー様は初めて会った時からずっとこの調子です。いえ、僕が気持ちを伝えてからは少し糖度が増したでしょうか。
僕だけをずっと想ってくれているのは確かに嬉しいのですが、実をいうとほんの少しモヤるというか素直に喜びきれない部分が僕の中にあるというか。
あと二日で僕はアンソニー様の伴侶になります。
前世のことを考えると、二度目の結婚になります。一度目は残念な結果になってしまいました。これは生まれ変わって、別視点から考えられるようになって僕にも至らないところがあったのだと思えるようになりました。まあ、今更ですが。
その点、今世のアンソニー様に関しては全くといっていいほど浮気の心配はしていません。
だけどーー。
「ねえ、アンソニー様。僕、聞きたいことがあるのですが」
「ん? なにかな?」
「アンソニー様は僕のどこが良かったのですか?」
僕が真面目な顔で聞いたら、アンソニー様も何かを感じたのか、いつもの蕩けるようなにこにこからすっと真面目な顔になりました。
「最初はなんて可愛らしい子なのだと思った。まるで天使がこの世に現れたのではと錯覚してしまったよ」
「では、僕の見た目に惹かれたと」
「きっかけはね。だけど何度かニコと触れ合ううちにニコの違った一面が見えてきたんだ」
「ーー違った一面、ですか」
僕ははっとして目を見開きました。
これっていわゆる『ギャップ萌え』なのでは?
厳ついヤンキーが、雨の日に捨て猫に自分の傘を差しかけるあれです。別パターンで着ていた学ラン(ブレザーではなく学ラン。ここ重要です)を寒さに震える子猫に被せるというのもあります。
それを偶然見かけてキュンとするあれですね。
もしかしてアンソニー様は、僕のことを弱っている小動物も助けないような冷たい心の男だと思っていた?
だから偶然、僕が雨の日に子猫を助けるところを見かけてギャップにきゅんとした?
でも、僕には雨の日に子猫を助けた覚えがありません。ここははっきりさせておかないと。
「アンソニー様、僕は子猫を飼っていません。なのでそれは勘違いだと思います」
「子猫? なぜ子猫? ええっとニコ、君が今なにを想像しているのかわからないけど、子猫は一旦置いておこうか」
む。雨の日、子猫に優しくして萌えきゅんではなさそうです。
「ニコはいつも楽しそうにしているけど、たまにね、とっても寂しそうな目をすることがあるんだ。きっと無意識なのだと思うし、私にニコがそんな目をする理由なんてわからないけど、私はニコにそんな目をさせる存在が許せなくてね。なんとしてでも私がニコの憂いをなくしたいと思うようになったんだ。まあ、いつの間にか寂しい目なんてしなくなったのだけどね」
なるほど。もしかしたら、それは僕がまだ前世の櫻子さんの記憶を引きずっていた頃のことでしょう。
「今のニコはいつも楽しそうだ」
「はい。僕は毎日とっても楽しくて幸せですよ?」
アンソニー様がいつものキラキラを撒き散らします。
「これからもずっと君の笑顔が絶えないよう、私は君を大切にすると誓うよ。愛してる、ニコ」
アンソニー様が僕に触れるだけのキスを落とします。
これまで何度も、それこそ数えきれないくらいキスをされてきましたが、今のキスがこれまでの中で一番甘く感じました。
◇◇◇
夕方に短いですがもう一度更新します。
m(_ _)m
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