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31 六年後
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僕が眠りから目覚めたあの日から六年が経ちました。
僕も早いもので十五歳になりました。今世での成人年齢です。
明日は学園の卒業式で、なんとその翌日には結婚式を控えています。これはアンソニー様の強い希望で、一刻も早く僕と一緒になりたかったとかなんとか。
僕も屋敷だけではなく、今度は王城のあれやこれやを見聞きできるのがとっても楽しみです。
王城だけあって、きっと愛憎渦巻くどろどろした人間関係があるに違いありません。
これまでが『ほのぼのハッピーエンド』だとすると、次のステージはさしずめ『王城に消えた侍従!空き部屋から聞こえる声』といったところでしょうか。バックで◯サスのテーマ曲を流すと完璧です。
肌色シーン多めの年齢指定のついた内容が期待されます。
王城に引っ越したら、まずは数多ある客室のチェックをしないといけませんね。客室から死角になる場所とか壁の防音性とかベッドの軋み具合とかとか……。忙しくなりそうです。
あとは僕の周囲でも色んなことがありました。
まず僕を一番驚かせたのは、ピンク頭の人とアンソニー様の側近のエドさんがくっついたことでしょうか。
エドさんが定期的に鉢植えの花を届けているうち、お互いを憎からず思うようになったとか。
今、ピンク頭さんのお家は色んな植物に溢れていて植物園状態だそうです。不思議なことに、それだけ植物に囲まれていながら虫が一匹もいないので、時折虫の苦手な人から見学の申し出があるとか。
以前、どうしても気になったので、なんでピンク頭さんとお付き合いすることにしたのか聞いたのですが、エドさんは「奴の相手ができるのは私くらいしかいませんから」と言っていました。でもピンク頭さんには“ふにゃ◯ん”になる神罰があるのに大丈夫なのでしょうか?
目の前に座るピンク頭さんを見ます。
「なに? 言いたいことがあるなら言いなよ。ニコくんって時たま僕のこと可哀想な子を見る目で見てくるよね」
「そうかな。そんなことないけど」
いくらなんでも、まさかふにゃち◯になっちゃうのに、エドさんとはどうしてるんですか?なんて聞けません。僕にもそのくらいの分別はあるのです。
「ところでエドさんとはどんな感じ?」
僕がやんわりとエドさんとの関係を聞くと、途端、ピンク頭さんの顔がピンク色に染まりました。首から上全体がピンク色なのでちょっと怖いです。
「え? エドのこと? 聞きたい? うーん、どうしようかなあ……でもお子様なニコくんにはちょっと刺激が強いかもだしなあ……僕としては教えてあげてもいいんだけど……」
もじもじするピンク頭さん。
ふにゃ◯んの癖して、なにが“刺激が強い”ですか。僕の腐歴を舐めないでいただきたいです。
「話せないのなら、別にいいですよ。マティスくんに以前お話ししたように、僕は前世では大人だったので少々のことでは驚かないです」
そうです。エドさんにピンク頭さんを紹介された時、僕は思いきって転生した話をしたのです。僕は神様から既に聞いていたのでピンク頭さんが転生者だと知っていましたが、初めて事実を知ったピンク頭さんはこれでもかというくらい驚いていました。
流れで僕の前世の話もしたのですが、ピンク頭さんはなぜか「ごめんなさい」って謝ってきました。顔色もあまり良くなかったので、僕は彼の前世を聞くのを控えることにしました。
僕的にはすっかり切り替えができていますが、ピンク頭さんはきっとまだ割り切れていないのかもしれません。そりゃあそうですよね、転生したっていうことは前世での生を終えたということなんですから。
これは僕の配慮が足りませんでした。反省です。
「ニコくんったら、本当は聞きたいくせに、無理しちゃって」
あ、やっぱり反省は撤回します。
僕の前でくねくねするピンク頭さんを見てたらムカついてきました。ちょっと頭を叩いてもいいでしょうか?
「僕ね、エドと付き合うようになって、新しい扉を開いたんだ」
頭を叩くのは後回しです。まずは彼の話を聞かなくては。
「新しい扉、ですか?」
「うん。ニコくんだから言うんだけど、僕とエドってまだなんだよね。なぜかこれから本番って時になると使えなくなっちゃうんだよね。試しに手とか口とかで試してみても、お互いに触れた途端、へにゃってなるんだ……」
「へにゃ」
「うん。へにゃって」
落ち込むピンク頭さん。
「でもね、エドが『それなら自分ですればいいのです』ってね、エドに自分でスるところを見てもらってるんだ。あの冷めた目で見つめられながらスるのが堪らないんだよね。エドったらなんとも思っていませんって顔してるのに、僕の後ろをじっと見てあっちも凄いことになってて、もうギャップが堪んないっていうか」
おぅふ。触れないなら視るですか。
お二方とも結構な高等プレイを楽しんでいらっしゃるようで。
ある意味、永遠に清い関係のままですが、お互いがそれで満足しているのならそれでいいのでしょうね。
さすがの僕も、ちょっと彼らのお楽しみは見たいとは思いませんね。胸焼けしそうです。
「ところで、今日はエドさんは?」
「ああ、エド? 確か今日もアンソニー殿下と一緒だと思うけど。仕事が終わったら会う約束しているんだ」
「ならアンソニー様と一緒に来るかもしれませんね。僕もこの後、結婚式の最終打ち合わせがあるので」
「そうかぁ……明後日だよね」
「明日は学園の卒業式もありますけどね」
「ねえニコくん、今、幸せ?」
ピンク頭さんが珍しく真面目な顔をしています。
同じ前世の記憶を持つ者同士、思うところがあるのかもしれません。
「はい。僕、とても幸せですよ」
僕がそう答えると、ピンク頭さんは安心したように笑って「よかった」と呟きました。
僕も早いもので十五歳になりました。今世での成人年齢です。
明日は学園の卒業式で、なんとその翌日には結婚式を控えています。これはアンソニー様の強い希望で、一刻も早く僕と一緒になりたかったとかなんとか。
僕も屋敷だけではなく、今度は王城のあれやこれやを見聞きできるのがとっても楽しみです。
王城だけあって、きっと愛憎渦巻くどろどろした人間関係があるに違いありません。
これまでが『ほのぼのハッピーエンド』だとすると、次のステージはさしずめ『王城に消えた侍従!空き部屋から聞こえる声』といったところでしょうか。バックで◯サスのテーマ曲を流すと完璧です。
肌色シーン多めの年齢指定のついた内容が期待されます。
王城に引っ越したら、まずは数多ある客室のチェックをしないといけませんね。客室から死角になる場所とか壁の防音性とかベッドの軋み具合とかとか……。忙しくなりそうです。
あとは僕の周囲でも色んなことがありました。
まず僕を一番驚かせたのは、ピンク頭の人とアンソニー様の側近のエドさんがくっついたことでしょうか。
エドさんが定期的に鉢植えの花を届けているうち、お互いを憎からず思うようになったとか。
今、ピンク頭さんのお家は色んな植物に溢れていて植物園状態だそうです。不思議なことに、それだけ植物に囲まれていながら虫が一匹もいないので、時折虫の苦手な人から見学の申し出があるとか。
以前、どうしても気になったので、なんでピンク頭さんとお付き合いすることにしたのか聞いたのですが、エドさんは「奴の相手ができるのは私くらいしかいませんから」と言っていました。でもピンク頭さんには“ふにゃ◯ん”になる神罰があるのに大丈夫なのでしょうか?
目の前に座るピンク頭さんを見ます。
「なに? 言いたいことがあるなら言いなよ。ニコくんって時たま僕のこと可哀想な子を見る目で見てくるよね」
「そうかな。そんなことないけど」
いくらなんでも、まさかふにゃち◯になっちゃうのに、エドさんとはどうしてるんですか?なんて聞けません。僕にもそのくらいの分別はあるのです。
「ところでエドさんとはどんな感じ?」
僕がやんわりとエドさんとの関係を聞くと、途端、ピンク頭さんの顔がピンク色に染まりました。首から上全体がピンク色なのでちょっと怖いです。
「え? エドのこと? 聞きたい? うーん、どうしようかなあ……でもお子様なニコくんにはちょっと刺激が強いかもだしなあ……僕としては教えてあげてもいいんだけど……」
もじもじするピンク頭さん。
ふにゃ◯んの癖して、なにが“刺激が強い”ですか。僕の腐歴を舐めないでいただきたいです。
「話せないのなら、別にいいですよ。マティスくんに以前お話ししたように、僕は前世では大人だったので少々のことでは驚かないです」
そうです。エドさんにピンク頭さんを紹介された時、僕は思いきって転生した話をしたのです。僕は神様から既に聞いていたのでピンク頭さんが転生者だと知っていましたが、初めて事実を知ったピンク頭さんはこれでもかというくらい驚いていました。
流れで僕の前世の話もしたのですが、ピンク頭さんはなぜか「ごめんなさい」って謝ってきました。顔色もあまり良くなかったので、僕は彼の前世を聞くのを控えることにしました。
僕的にはすっかり切り替えができていますが、ピンク頭さんはきっとまだ割り切れていないのかもしれません。そりゃあそうですよね、転生したっていうことは前世での生を終えたということなんですから。
これは僕の配慮が足りませんでした。反省です。
「ニコくんったら、本当は聞きたいくせに、無理しちゃって」
あ、やっぱり反省は撤回します。
僕の前でくねくねするピンク頭さんを見てたらムカついてきました。ちょっと頭を叩いてもいいでしょうか?
「僕ね、エドと付き合うようになって、新しい扉を開いたんだ」
頭を叩くのは後回しです。まずは彼の話を聞かなくては。
「新しい扉、ですか?」
「うん。ニコくんだから言うんだけど、僕とエドってまだなんだよね。なぜかこれから本番って時になると使えなくなっちゃうんだよね。試しに手とか口とかで試してみても、お互いに触れた途端、へにゃってなるんだ……」
「へにゃ」
「うん。へにゃって」
落ち込むピンク頭さん。
「でもね、エドが『それなら自分ですればいいのです』ってね、エドに自分でスるところを見てもらってるんだ。あの冷めた目で見つめられながらスるのが堪らないんだよね。エドったらなんとも思っていませんって顔してるのに、僕の後ろをじっと見てあっちも凄いことになってて、もうギャップが堪んないっていうか」
おぅふ。触れないなら視るですか。
お二方とも結構な高等プレイを楽しんでいらっしゃるようで。
ある意味、永遠に清い関係のままですが、お互いがそれで満足しているのならそれでいいのでしょうね。
さすがの僕も、ちょっと彼らのお楽しみは見たいとは思いませんね。胸焼けしそうです。
「ところで、今日はエドさんは?」
「ああ、エド? 確か今日もアンソニー殿下と一緒だと思うけど。仕事が終わったら会う約束しているんだ」
「ならアンソニー様と一緒に来るかもしれませんね。僕もこの後、結婚式の最終打ち合わせがあるので」
「そうかぁ……明後日だよね」
「明日は学園の卒業式もありますけどね」
「ねえニコくん、今、幸せ?」
ピンク頭さんが珍しく真面目な顔をしています。
同じ前世の記憶を持つ者同士、思うところがあるのかもしれません。
「はい。僕、とても幸せですよ」
僕がそう答えると、ピンク頭さんは安心したように笑って「よかった」と呟きました。
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