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さてさて、物語だとこの辺りでめでたしめでたしで終わることもできるのだけど、僕にはまだやることがあるのです。
「ねえ、ユーリ。この間言ってた『それなりに』ってどういうことなのか教えて欲しいんだけど」
「ーーーーは?」
アンソニー様が僕の所にやってきてから数日後、僕もほとんど問題なく日常生活を送れるようになりました。
だけど、まだクリス父さまから外出許可が出ていないので、屋敷の庭を散策しています。
結構敷地が広いので良い運動になります。もしかしたら偶然なにかの場面に遭遇するかもしれません。
僕は神の導きに従って、屋敷の裏手にやってきました。
なんとそこでうちの料理長と見習いが、良い感じで盛り上がっているではないですか。神様、グッジョブです。
そんなわけで、彼らの死角になる位置に身を潜めながらのさっきの台詞です。
「僕の将来のためにも聞いておく必要があると思うんだ」
「ニコ様?」
「よく考えてごらんよ。あと何年かしたら僕はアンソニー様と結婚して王子妃……将来的には王妃になるよね。そして世継ぎは必須。だけど父さまも母さまもまだ早いって僕に子どもの作り方を詳しく教えてくれないから、仕方なくこうやって知識を蓄えているんだ」
ちらりと目を向けると、料理長が見習いに追い詰められて屋敷の壁に背中をつけています。
おお、壁ドンからの顎クイですか。見習いくんは基本に忠実ですね。
僕は彼らから目を離さずに続けます。
「けど、みんな良い感じなのに、あとひと押しが足りないんだよね。僕もたくさん学んだから、子どもの作り方の知識はあるよ? それでも(前世の薄い)本だとかで読んだだけだから、実際にそうなった時にちゃんとデキる自信がないんだ」
料理長と見習いくんの顔がくっつきました。何度も角度を変えて攻める見習いくん。
おや?あれは……料理長のズボンに見習いくんの手が入っている……?
「事前に実地練習ができればいいんだけどーー」
「ーーダメです」
後ろからユーリが僕の目を隠しました。
「ちょっとユーリ、見えないよ」
「ダメです。ニコ様、実地練習だとか恐ろしいことを言わないでください。お目付け役の俺が殿下に殺されます」
ユーリ。きみ、いつから僕のお目付け役になったのさ。
「殿下に殺されるくらいなら正直に言いますから。だからとりあえず移動しましょう。ここでは落ち着いて話もできません」
ええーっ!?これから良いところなのに!
(ニコ、大丈夫だよ。僕が代わりに見といてあげる)
他人(他神?)が見ていても意味ないのでは?
(大丈夫、大丈夫。後で君の頭の中に送っとくから)
本当に!?ありがとう、心の友よ!
「ニコ様?」
「ああ、ごめん。ちょっと考え事してたよ」
後ほど、ちゃんと心の友から料理長と見習いくんの映像が僕の頭の中に送られてきました。
二人が密着しすぎて肝心の場所がよく見えませんでしたが、現場にいた心の友が言うにはお互いのナニをひとまとめにして手で行為に耽っていたとか。
そしてユーリに連れられて東屋にやってきました。
ここは僕が初めてユーリと会った場所です。懐かしいです。
「ところで、どうして兄さんがここに?」
「ニコ様とユーリがいるのを見かけてね。ニコ様、これからお茶ですか?」
「うん。そんなところ。さて、ユーリ、教えてくれる?」
「それはいいですけど……」
ちらりとメイナードお兄さんを見るユーリ。
なるほど。恋人に浮気を白状するようなものですからね。言い難い気持ちはわかりますが、それと僕の知識欲を満たすのとは話が別です。
さあユーリ。僕に話してごらん、生の声を。
コトは現場で起きているのです。僕は現場の生の声も聞かず、全てを知ったように振る舞うような人間ではありません。
軽く咳払いをしてユーリが口を開きました。
「ーー騎士団の人たちに連れて行ってもらったんですよ。殆どの人が成人前に済ませてるって言って」
「成人前に? 済ませる?」
「兄さんは『殆ど』に入らないから」
首を傾げるメイナードお兄さんにユーリが告げます。
「まあーーそこで、ですね?」
言葉を濁すユーリですが、あれですね。先輩たちが「お前、未経験なのか? なら、俺たちが良いところに連れて行ってやるよ。心配するな俺たちの奢りだ」とか言って娼館に連れて行かれて、なんとそこで密かに憧れてた人が働いてたってパターンですね。
ちなみにその憧れてた人は清楚系美人なのだけど、実はエッチ大好きで己の欲望を満たすために娼館で働いてるのです。気持ち良く満たされてお金ももらえるという一石二鳥なバイトです。
お客として訪れたユーリは憧れてたお兄さんに目をつけられて、プライベートでもやっちゃうように……体から始まる恋。だけど好きになった人は娼館で働くのを辞めなくてーーって、話が逸れました。
「最後までやっちゃったんだね、ユーリ」
ついにユーリも一足先に大人になってしまったんだね。感無量だよ、僕。
「最後までやってません!」
んん?
「だから……最後まではしてませんって。俺、初めては好きな人とって決めてるんで」
ユーリくん、まさかのピュアボーイ(死語)でした。そして気まずそうにメイナードお兄さんをチラチラ見るのをやめなさい。なんとなく後ろめたい気持ちなのはわかりますが、僕の萌えメーターが振り切れそうです。
「じゃあ、わざわざそんなところまで行ってなにしてきたの?」
「ーーでやってもらいました」
「え?」
「口で! やってもらったんですよ! もういいでしょう!? 本当に勘弁してくださいよ」
ユーリがどこで誰に口でなにをしてもらったのか、最後まで疑問だらけだったメイナードお兄さん。後日一番上のお兄さんに質問したところ、しばらくユーリがメイナードお兄さんに口を聞いてもらえなくなったそうです。平和ですね。
「ねえ、ユーリ。この間言ってた『それなりに』ってどういうことなのか教えて欲しいんだけど」
「ーーーーは?」
アンソニー様が僕の所にやってきてから数日後、僕もほとんど問題なく日常生活を送れるようになりました。
だけど、まだクリス父さまから外出許可が出ていないので、屋敷の庭を散策しています。
結構敷地が広いので良い運動になります。もしかしたら偶然なにかの場面に遭遇するかもしれません。
僕は神の導きに従って、屋敷の裏手にやってきました。
なんとそこでうちの料理長と見習いが、良い感じで盛り上がっているではないですか。神様、グッジョブです。
そんなわけで、彼らの死角になる位置に身を潜めながらのさっきの台詞です。
「僕の将来のためにも聞いておく必要があると思うんだ」
「ニコ様?」
「よく考えてごらんよ。あと何年かしたら僕はアンソニー様と結婚して王子妃……将来的には王妃になるよね。そして世継ぎは必須。だけど父さまも母さまもまだ早いって僕に子どもの作り方を詳しく教えてくれないから、仕方なくこうやって知識を蓄えているんだ」
ちらりと目を向けると、料理長が見習いに追い詰められて屋敷の壁に背中をつけています。
おお、壁ドンからの顎クイですか。見習いくんは基本に忠実ですね。
僕は彼らから目を離さずに続けます。
「けど、みんな良い感じなのに、あとひと押しが足りないんだよね。僕もたくさん学んだから、子どもの作り方の知識はあるよ? それでも(前世の薄い)本だとかで読んだだけだから、実際にそうなった時にちゃんとデキる自信がないんだ」
料理長と見習いくんの顔がくっつきました。何度も角度を変えて攻める見習いくん。
おや?あれは……料理長のズボンに見習いくんの手が入っている……?
「事前に実地練習ができればいいんだけどーー」
「ーーダメです」
後ろからユーリが僕の目を隠しました。
「ちょっとユーリ、見えないよ」
「ダメです。ニコ様、実地練習だとか恐ろしいことを言わないでください。お目付け役の俺が殿下に殺されます」
ユーリ。きみ、いつから僕のお目付け役になったのさ。
「殿下に殺されるくらいなら正直に言いますから。だからとりあえず移動しましょう。ここでは落ち着いて話もできません」
ええーっ!?これから良いところなのに!
(ニコ、大丈夫だよ。僕が代わりに見といてあげる)
他人(他神?)が見ていても意味ないのでは?
(大丈夫、大丈夫。後で君の頭の中に送っとくから)
本当に!?ありがとう、心の友よ!
「ニコ様?」
「ああ、ごめん。ちょっと考え事してたよ」
後ほど、ちゃんと心の友から料理長と見習いくんの映像が僕の頭の中に送られてきました。
二人が密着しすぎて肝心の場所がよく見えませんでしたが、現場にいた心の友が言うにはお互いのナニをひとまとめにして手で行為に耽っていたとか。
そしてユーリに連れられて東屋にやってきました。
ここは僕が初めてユーリと会った場所です。懐かしいです。
「ところで、どうして兄さんがここに?」
「ニコ様とユーリがいるのを見かけてね。ニコ様、これからお茶ですか?」
「うん。そんなところ。さて、ユーリ、教えてくれる?」
「それはいいですけど……」
ちらりとメイナードお兄さんを見るユーリ。
なるほど。恋人に浮気を白状するようなものですからね。言い難い気持ちはわかりますが、それと僕の知識欲を満たすのとは話が別です。
さあユーリ。僕に話してごらん、生の声を。
コトは現場で起きているのです。僕は現場の生の声も聞かず、全てを知ったように振る舞うような人間ではありません。
軽く咳払いをしてユーリが口を開きました。
「ーー騎士団の人たちに連れて行ってもらったんですよ。殆どの人が成人前に済ませてるって言って」
「成人前に? 済ませる?」
「兄さんは『殆ど』に入らないから」
首を傾げるメイナードお兄さんにユーリが告げます。
「まあーーそこで、ですね?」
言葉を濁すユーリですが、あれですね。先輩たちが「お前、未経験なのか? なら、俺たちが良いところに連れて行ってやるよ。心配するな俺たちの奢りだ」とか言って娼館に連れて行かれて、なんとそこで密かに憧れてた人が働いてたってパターンですね。
ちなみにその憧れてた人は清楚系美人なのだけど、実はエッチ大好きで己の欲望を満たすために娼館で働いてるのです。気持ち良く満たされてお金ももらえるという一石二鳥なバイトです。
お客として訪れたユーリは憧れてたお兄さんに目をつけられて、プライベートでもやっちゃうように……体から始まる恋。だけど好きになった人は娼館で働くのを辞めなくてーーって、話が逸れました。
「最後までやっちゃったんだね、ユーリ」
ついにユーリも一足先に大人になってしまったんだね。感無量だよ、僕。
「最後までやってません!」
んん?
「だから……最後まではしてませんって。俺、初めては好きな人とって決めてるんで」
ユーリくん、まさかのピュアボーイ(死語)でした。そして気まずそうにメイナードお兄さんをチラチラ見るのをやめなさい。なんとなく後ろめたい気持ちなのはわかりますが、僕の萌えメーターが振り切れそうです。
「じゃあ、わざわざそんなところまで行ってなにしてきたの?」
「ーーでやってもらいました」
「え?」
「口で! やってもらったんですよ! もういいでしょう!? 本当に勘弁してくださいよ」
ユーリがどこで誰に口でなにをしてもらったのか、最後まで疑問だらけだったメイナードお兄さん。後日一番上のお兄さんに質問したところ、しばらくユーリがメイナードお兄さんに口を聞いてもらえなくなったそうです。平和ですね。
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