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※今週は一回更新ですm(_ _)m
今日、僕はお城に来ています。
婚約者であるアンソニー様が、約三週間弱の長期休暇を終えて明日学園に戻るため、王家の家族水いらずの夕食に我がグランチェスト家がご招待された形です。
豪華な食事が乗ったテーブルを囲むのは陛下とエレオノーラ様をはじめ、アンソニー様にハミエルくん、グランチェスト家からはクリス父さま、ミシェル母さま、それに僕です。
「ニコルくん、久しぶりだね。私もニコルくんに会いたかったのに、休暇中はアンソニーに独り占めされてしまったよ。アンソニーが学園に戻ったら、また話題の本の話をしよう」
「母上、ニコを誘うのは構いませんが、ほどほどになさってください」
婚約者様がエレオノーラ様を軽く睨みます。
「お前には言われたくないねえ。それより、食事中くらいは離れなさい。ニコルくんが困っているじゃないか。あまりしつこくすると嫌われてしまうよ」
「そんなことありませんーーねえ、ニコ。私を嫌いになるなんて言わないよね?」
隣の席のアンソニー様が自分の椅子を僕の座る椅子にぴたりとくっつけ、僕の手を取りながら顔を覗き込みます。思わず仰反る僕ーーいや、近いって。
休暇が始まってすぐに僕にキスをしたアンソニー様。
その後、二日くらいはお互い照れもあって少しぎこちなかったけれど、三日過ぎた辺りからは、どんな心境の変化があったのか、吹っ切れたようにやたらぐいぐい来るようになった。
お忍びで街に行って恋人繋ぎデートもしたし、カフェのオープンスペースで「あーん」とか言って食べさせ合いもしたし、ピクニックで膝枕もーーさらには木陰でいちゃいちゃもした。
そう!したんだよ!僕が小説に書いたエピソードの数々を!
街デートもピクニックも木陰のある庭でも、もちろん常に護衛のみなさんに囲まれています。
一国の王子と侯爵家子息のおでかけ、しかも二人とも未成年です。二人きりであるはずもなく、僕は護衛のみなさんの目の届く場所でアンソニー様からあれやこれやを致されましたさ。
一応、護衛のみなさんがいるからあまりいちゃいちゃは……と訴えたけれど、アンソニー様から返ってきた答えは「気にすることはない。彼らは空気のようなものだ」でした。
そりゃあ、生まれてすぐの頃から護衛のみなさんに囲まれて生活してきた貴方にとって、彼らは居て当たり前な空気のような存在かもしれない。けれど、そうじゃない僕にとって、護衛のみなさんはお仕事でそこに居る人たちなのだ。
そうアンソニー様に言ったら本気で変な顔されましたよ。解せんって顔に書いてました。
それを見て僕は悟ったーー諦めと慣れが肝心だと。
多分だけど、し、初夜なんかも、ちゃんと致せたか確認する見届け人兼護衛の人が控えていそう……。
それならまだ軽いスキンシップの今のうちから慣れておいた方が良いんだろうか。
それにしても、いいなあ……見届け人。憧れの職業だ。
まあ、そんなこんなで約三週間弱、これでもかと婚約者様に構い倒され、僕はすっかり慣らされてしまったよ。思わず遠い目になってしまうけど、そっとしておいて欲しい。
王家に嫁ぐってことは、他人に見られながら致すプレイが当たり前になるってことなんだよ。
アンソニー様は人に見られて興奮する変態さんでしたーー。
「ニコ?」
変態趣味についていけるだろうかと心配する僕に不穏なものを感じたのか、婚約者様が訝しげな顔を僕に向けます。
「えっ? ああ、はい。大丈夫です」
「ほら母上、ニコも気にしていないと言っているではないですか。いつでも会える母上たちと違って、学園に通う三年間、私は自由にニコに会うことができないのです。休暇の時くらい婚約者を好きに愛でても良いではないですか」
そう言って僕の肩を抱くアンソニー様。今、食事中なんだけど。
そんな息子の様子を見て諦めたようにため息を吐くエレオノーラ様。
「アンソニー、分かったから。全くーー食事の時くらいはちょっとニコルくんから離れなさい」
再度エレオノーラ様から注意されて、渋々僕から離れるアンソニー様。
やっとゆっくりご飯が食べられるとほっとした僕は油断していた。
「ニコルくんに会えないからといって、学園でタネを撒くんじゃないよ」
「……ぶっ」
「母上!」
吹き出す僕に固まるクリス父さまとミシェル母さま。王家の皆さんは平常運転です。
「母上こそ、食事中ですよ。第一、私がニコ以外の男に反応するわけないじゃないですか」
「おやおやーー愚問だったようだね。ニコルくん、アンソニーは先日大人の体になったんだよ。確か休暇に入ってすぐだったかな? 婚姻を済ませるまでは手を出さないと思うけど、気持ち良いことを覚えたばかりの頃は性欲に負けてしまうこともあるかもしれないからね。気をつけるんだよ?」
気をつける?何に?エレオノーラ様は僕が九歳の子供だとお忘れですか?
そしてなぜアンソニー様が吹っ切れたように僕へ迫り始めたのか察し。
「母上!」
「仕方ないじゃないか。代々、王族は性欲が強いのだから、お前だって学園で丁度いい年頃の魅力的な男に迫られたらどうなるかわからないよ?」
「何度も言いますが、私はニコ以外の男にはこれっぽっちも反応しませんから。溜まったらニコのことを思って自分で処理していますのでご心配なく」
僕も心の中で何度も言いますが、食事中ですよ。
エレオノーラ様、面白がって息子を煽るのをやめてください。そして婚約者様、そんな簡単に煽られないでください。「心配いらないからね?」なんて言われても、僕はなんと返せばいいのかわからないです。貴方も性欲が強いんですか?とか僕をオカズにソロプレイに励んでいたのですか?などと尋ねればいいのだろうか。
思考がカオス。
とりあえず今日の食事会で分かったことは、王家の皆さんは僕が想像する以上に明け透けだということでした。
今日、僕はお城に来ています。
婚約者であるアンソニー様が、約三週間弱の長期休暇を終えて明日学園に戻るため、王家の家族水いらずの夕食に我がグランチェスト家がご招待された形です。
豪華な食事が乗ったテーブルを囲むのは陛下とエレオノーラ様をはじめ、アンソニー様にハミエルくん、グランチェスト家からはクリス父さま、ミシェル母さま、それに僕です。
「ニコルくん、久しぶりだね。私もニコルくんに会いたかったのに、休暇中はアンソニーに独り占めされてしまったよ。アンソニーが学園に戻ったら、また話題の本の話をしよう」
「母上、ニコを誘うのは構いませんが、ほどほどになさってください」
婚約者様がエレオノーラ様を軽く睨みます。
「お前には言われたくないねえ。それより、食事中くらいは離れなさい。ニコルくんが困っているじゃないか。あまりしつこくすると嫌われてしまうよ」
「そんなことありませんーーねえ、ニコ。私を嫌いになるなんて言わないよね?」
隣の席のアンソニー様が自分の椅子を僕の座る椅子にぴたりとくっつけ、僕の手を取りながら顔を覗き込みます。思わず仰反る僕ーーいや、近いって。
休暇が始まってすぐに僕にキスをしたアンソニー様。
その後、二日くらいはお互い照れもあって少しぎこちなかったけれど、三日過ぎた辺りからは、どんな心境の変化があったのか、吹っ切れたようにやたらぐいぐい来るようになった。
お忍びで街に行って恋人繋ぎデートもしたし、カフェのオープンスペースで「あーん」とか言って食べさせ合いもしたし、ピクニックで膝枕もーーさらには木陰でいちゃいちゃもした。
そう!したんだよ!僕が小説に書いたエピソードの数々を!
街デートもピクニックも木陰のある庭でも、もちろん常に護衛のみなさんに囲まれています。
一国の王子と侯爵家子息のおでかけ、しかも二人とも未成年です。二人きりであるはずもなく、僕は護衛のみなさんの目の届く場所でアンソニー様からあれやこれやを致されましたさ。
一応、護衛のみなさんがいるからあまりいちゃいちゃは……と訴えたけれど、アンソニー様から返ってきた答えは「気にすることはない。彼らは空気のようなものだ」でした。
そりゃあ、生まれてすぐの頃から護衛のみなさんに囲まれて生活してきた貴方にとって、彼らは居て当たり前な空気のような存在かもしれない。けれど、そうじゃない僕にとって、護衛のみなさんはお仕事でそこに居る人たちなのだ。
そうアンソニー様に言ったら本気で変な顔されましたよ。解せんって顔に書いてました。
それを見て僕は悟ったーー諦めと慣れが肝心だと。
多分だけど、し、初夜なんかも、ちゃんと致せたか確認する見届け人兼護衛の人が控えていそう……。
それならまだ軽いスキンシップの今のうちから慣れておいた方が良いんだろうか。
それにしても、いいなあ……見届け人。憧れの職業だ。
まあ、そんなこんなで約三週間弱、これでもかと婚約者様に構い倒され、僕はすっかり慣らされてしまったよ。思わず遠い目になってしまうけど、そっとしておいて欲しい。
王家に嫁ぐってことは、他人に見られながら致すプレイが当たり前になるってことなんだよ。
アンソニー様は人に見られて興奮する変態さんでしたーー。
「ニコ?」
変態趣味についていけるだろうかと心配する僕に不穏なものを感じたのか、婚約者様が訝しげな顔を僕に向けます。
「えっ? ああ、はい。大丈夫です」
「ほら母上、ニコも気にしていないと言っているではないですか。いつでも会える母上たちと違って、学園に通う三年間、私は自由にニコに会うことができないのです。休暇の時くらい婚約者を好きに愛でても良いではないですか」
そう言って僕の肩を抱くアンソニー様。今、食事中なんだけど。
そんな息子の様子を見て諦めたようにため息を吐くエレオノーラ様。
「アンソニー、分かったから。全くーー食事の時くらいはちょっとニコルくんから離れなさい」
再度エレオノーラ様から注意されて、渋々僕から離れるアンソニー様。
やっとゆっくりご飯が食べられるとほっとした僕は油断していた。
「ニコルくんに会えないからといって、学園でタネを撒くんじゃないよ」
「……ぶっ」
「母上!」
吹き出す僕に固まるクリス父さまとミシェル母さま。王家の皆さんは平常運転です。
「母上こそ、食事中ですよ。第一、私がニコ以外の男に反応するわけないじゃないですか」
「おやおやーー愚問だったようだね。ニコルくん、アンソニーは先日大人の体になったんだよ。確か休暇に入ってすぐだったかな? 婚姻を済ませるまでは手を出さないと思うけど、気持ち良いことを覚えたばかりの頃は性欲に負けてしまうこともあるかもしれないからね。気をつけるんだよ?」
気をつける?何に?エレオノーラ様は僕が九歳の子供だとお忘れですか?
そしてなぜアンソニー様が吹っ切れたように僕へ迫り始めたのか察し。
「母上!」
「仕方ないじゃないか。代々、王族は性欲が強いのだから、お前だって学園で丁度いい年頃の魅力的な男に迫られたらどうなるかわからないよ?」
「何度も言いますが、私はニコ以外の男にはこれっぽっちも反応しませんから。溜まったらニコのことを思って自分で処理していますのでご心配なく」
僕も心の中で何度も言いますが、食事中ですよ。
エレオノーラ様、面白がって息子を煽るのをやめてください。そして婚約者様、そんな簡単に煽られないでください。「心配いらないからね?」なんて言われても、僕はなんと返せばいいのかわからないです。貴方も性欲が強いんですか?とか僕をオカズにソロプレイに励んでいたのですか?などと尋ねればいいのだろうか。
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