【本編完結】壁にはなれなかったけど、せっかくなので堪能させていただきます!

とがきみえ

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14.5 王子の日記

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◯月◯◯日 曇り

 久しぶりに父上に呼ばれて執務室を訪ねたところ、私の婚約者が決まったとのこと。
 生まれる前から母上との婚約が内定していた父上に比べると、若干遅いような気もするが、まあまだ私も八歳なので一般的な王侯貴族からすればおかしなことでもないだろう。

 お相手は騎士団長を務めるクリス・グランチェスト侯爵の一人息子で、先日五歳のスキル授与の儀を受けたそうだ。どのようなスキルなのかは聞いていないが、まだ五歳なのに大人の都合で将来を決められてしまうとは同情する。まあ、貴族であれば、これも仕方のないことではあるが。

 確か、侯爵夫人はかなりの難産だったと聞く。二人目は難しいかもしれないな。そうなると、グランチェスト侯爵家の後継は私とその子の間に出来た子どもが継ぐことになるのか?
 ではーー最低でも三人は子をもうけなければならないのか。相手が丈夫だと良いのだが。

 まあいい。どうせ道理も知らない幼児だ。適当に顔合わせをしてご機嫌を取れば問題ないだろう。




◯月◯△日 快晴

 どうしよう。私は運命の相手と出会ってしまった。
 結果的に父上のいつもの暴走で婚約者に決まっていたのではなかったが、それでも彼との出会いのきっかけを作ってくれた父上には感謝したい。

 ニコル・グランチェスト

 ああ、日記のページに彼の名前を刻むだけで胸が高鳴ってしまう。
 この世に生を受けて八年。こんな気持ちになるのは初めてだ。

 茶会に一歩足を踏み入れ、彼の姿を目に映した瞬間、世界が輝いた。茶会の席に天使がいたのだ。
 一目惚れとはまさにこの事を言うのだろう。
 普段から感情を表に出さないよう努めているが、彼の前ではそれも難しく、気を抜けば直ぐに浮ついた気持ちが前に出てしまう。案の定、母上にはお見通しで、私らしくない行動を笑われてしまった。だが、今回だけは大目に見て欲しい。

 残念ながら、彼を正式な婚約者に迎えることは叶わなかったが、時間はまだある。絶対に彼、ニコルを我が妻に迎え入れる!
 これから徐々に彼の周りを固め、最終的に首を縦に振ってもらえるよう、誠実に私の気持ちを伝えて行くつもりだ。

 さて、さっそく明日からの予定を変更しなければ。
 待っていて、愛しい人。













◯がつ◯△にち はれ

 きょう、あたらしいおともだちができました。
 なまえはニコルくんです。
 とてもきれいなぎんいろのかみと、むらさきのめのかわいいこです。

 ニコルくんのおとうさまがとてもこわかったです。でも、ニコルくんはやさしかったです。
 そしてニコルくんはとてもかしこくてびっくりしました。
 おかあさまといっしょに、まほうのむずかしいほんをよんでいるそうです。すごいです。

 すごいニコルくんだけど、ぼくのなまえをまちがえました。ハ◯チンくんっていわれました。
 ニコルくんはまちがいにすぐにきがついて、ごめんねっていって、つぎからはちゃんとハミエルくんっていってくれました。

 ◯ミチンってなんだろう。
 きになったのであにうえにきいたら、ただのまちがいだといってました。
 あにうえ、ふつうのかおだけど、かたがちょっとふるえてました。
 さむかったのかな。
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