【本編完結】壁にはなれなかったけど、せっかくなので堪能させていただきます!

とがきみえ

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 陛下、名前も紹介されずに退場されました。

 王妃様の指示でニールさん?って側近の人にドナドナされて。
 にこっと笑って「陛下?」って言うニールさん、王妃様と同じ匂いがしたよ。あれだ、混ぜると危険なんだけど、既に混ざっちゃってるんだな。心の中でそっと名も知らぬ陛下の無事をお祈りしておこう。

 そして仕切り直しのお茶会。
 王妃様の登場で空気が変わったわ。すごいね、クリス父さまが王妃様のひと睨みで殺気を引っ込めたのよ。第二王子の顔色も良くなって、王妃様の隣で美味しそうにお茶飲んでます。平和だね。

「今日はすまなかったね、ミシェル。いつもの陛下の暴走だよ。君から知らせを受けて、私も驚いたんだ。本当に昔からこそこそと悪巧みだけは上手いのだからーーところで、その子が君の息子かな?」
「ええ、息子のニコルです。ニコ、ご挨拶できる?」
「はい。ニコル・グランチェストです。ごさいです」

 椅子から立ち上がり、右手を胸に当てて頭を下げます。ここでちょっとだけ左足を後ろに引いてクロスさせるのがポイント。デキる五歳児なぼくは事前にミシェル母さまと練習済みなのさ。

「うむ、なんて愛らしい。挨拶も上手にできたね。こうやって改めて見ると目の色こそクリスだが、毒気を抜いたミシェルの小型版といったところか?」
「……エレオノーラ様?」
「ふふふ、悪い。他意はないよ。しかし、五歳にしてそれだけしっかりしているとは、聡明な子だ。どうかな? 陛下の冗談抜きで、うちの息子のどちらかと縁を結んでみては?」

 ニヤリと笑う王妃様。ラスボス感がパないです。ここはラスボスの隣に座る◯ミチン殿下を見て癒されるとしよう。ちなみに第一王子は読めない笑顔でにこにこしてます。これは腹黒だわ。

「エレオノーラ様、先ほども陛下に申し上げましたが、あくまで本日のお茶会は顔合わせのみ。息子のニコルはまだ五歳の幼児、その先のことについてはクリスも私も今のところ全く考えておりませんし、息子には政略結婚ではなく好きな人と添い遂げて欲しいと願っております」

 どうしよう、ミシェル母さまがめっちゃ男前。

「なるほど。まあ、そうだね。君たちも恋愛結婚だったかーーねえ、ニコルくん、うちの息子たちと仲良くなれそうかい?」

 うわあ……また答えにくい質問だなあ。王族に対して仲良くなれませんなんて言えないし、下手に仲良くなれそうって言った日には、気づいたら婚約者になってましたなんて事態もありえそうだ。
 これはヘタに色よい返事はしない方がいいよね。
 ここは日本人お得意の曖昧な答え方で誤魔化すとしよう。

「なかよしですか? ぼくはおともだちがたくさんできるのはうれしいです」
「そうかい、それは結構。ではぜひ、うちの息子たちと仲良くして欲しいな。アンソニー、ハミエル。ニコルくんと仲良くするように」
「はい、母上」
「はい、母さま」
「ミシェル、これでうちの息子たちとニコルくんはだ。今後、そちらへ遊びに伺うこともあろう、世話になるよ。ニコルくんも、また遊びにおいで」

 表面的にはとってもにこやかな王妃様。だけど、あれだーーこれは絶対に拒否ってはダメなやつ。イエスかはい以外のお返事はできませんというやつ。
 ぼく?もちろんぼくは首を縦に振ったよ?だって、ノーと言えない元日本人だもの。

 こうしてぼくに新しい友だちが二人もできました。
 なんだかちょっと、すっきりしないけど、腹黒にビビりと面白そうだしまあいっか。
 そういえば第二王子、ハミエルくんって名前だったね。ハ◯チンくんだなんて面白ネームで呼んでゴメンよーーと、心の中で謝っておくとしよう。
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