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先にやって来ていた子どもたちが一人ずつ名前を呼ばれ、髭のお爺さんのもとへ向かいます。
緊張しているのか、右手と右足が同時に出ています。一緒に来た親たちも固唾を飲んで我が子を見守っています。
それもそうだよね、授かったスキルによってこれからの人生を左右するかもしれないんだから。
もし、王太子が料理とか植木剪定とかのスキルを得たらどうするんだろう?きっと周りの期待も大きかっただろうし「殿下のスキルは植木剪定でございます」なんて髭のお爺さんが宣言したら、皆んな気まずいよね。
ヘタに褒めることも出来ないし。
そんなこんなで、自分とは関係のないことを考えつつ、ぼくも先に髭のお爺さんのもとへ行った子どもの様子を見守ります。
どんなことするのかよく見とかないとね。手順とか教えてもらってないし、気づかずに変なことして後で黒歴史になるのは嫌だ。
なんだったっけ?前世で、外国の人が日本のお葬式に行って、お焼香?の粉みたいなやつを口に入れたって話あったよね。後ろから見たら謎の粉を食べてるように見えたらしいよ。
どんな怪しい儀式だよ、日本のお葬式。
幸いなことに髭のお爺さんのところに謎の粉はないみたい。なんか、板状の透明な石?遠目だけど、パソコンのモニターくらいの大きさかな?そこに手を乗せるだけのよう。うん、楽勝楽勝。
子どもが手を乗せて石板が一瞬、淡く光るとスキルがわかると。なるほど。
「ルイス殿のスキルは【鷹の目】です。おめでとう」
おおう、なんかカッコいいスキルっぽいぞ。ちょっと厨二っぽい気がしないでもないけど。
「確かリード伯爵の三男だったっけ? 将来は騎士を目指してるそうだし目が良いのはイイね」
ミシェル母さまがクリス父さまに耳打ちします。クリス父さまも頷いているところを見ると、良い感じみたい。本人もご両親も嬉しそうだし、よかったねルイスくん。
あれから四人ほど済んで、いよいよぼくの順番です。
今のところルイスくんの【鷹の目】を筆頭に面白スキルは出てきていない。ミシェル母さまに聞いたところ、スキルってこれまでの生活環境とか、特に王侯貴族になると血筋だとかに影響されるのだって。あとは稀に本人の強い希望とか。それなら王太子殿下はよっぽど植木剪定が好きでないとダメなのかあ。
なのでぼくの場合、剣術か魔法系統のスキルになるだろうって。それなら魔法系統のスキルがいいなあ、せっかくファンタジーな世界に生まれたんだし。透視魔法とかロマンだよね。これまで邪魔だった父さまと母さまたちの寝室とぼくの部屋を隔てる壁!防音対策ばっちりなのか、深夜、隣の部屋の壁に耳をくっつけてもなんにも聞こえないの!
「ニコル・グランチェスト殿」
「はい!」
元気なお返事とともに席を立ちます。
ニコ頑張れー。というミシェル母さまの小声の声援を背に姿勢良く髭のお爺さんのところに歩いて行きます。透視魔法、透視魔法と心の中で念じているのを悟られない様、凛とした表情で。
途中「あれがグランチェスト家の」とかの声が聞こえてきますが、良くない感情は感じられないので気にしません。以前からなぜかわかるんだよね、人の良くない感情とか嫌な気配とか。
「ニコル殿、水晶の石板に手を触れてください」
「はい」
髭のお爺さんに促され、透明な板に手を乗せます。なるほど、水晶だったのか。
手のひらにひんやりとした感触を感じた直後ーー石板が強く発光し、あまりの眩しさにぼくは思わず目をぎゅっと閉じました。なにこれ、絶対に普通じゃないやつ!透視魔法は!?ダメなの!?
光ったのは一瞬で、これは多分透視魔法はないな……と残念に思いつつ、恐る恐る目を開けた時には光は収まっていて、目の前には驚きで目を見開く髭のお爺さん。
大丈夫かな?お爺さん、結構なお年でしょ、心臓に負担かかってないよね?
髭のお爺さんが動かないので、心配になって首を傾げてお爺さんの顔を覗きこみます。
だけど、さすがは神殿の偉い人。髭のお爺さんはすぐに表情を改めるとぼくのスキルを宣言しました。
「ニコル様、あなたのスキルは【聖なる癒し】です」
石板の光のせいで少し騒がしかった広間がシンと静まります。
え?なに?なんかマズった?確かに【聖なる癒し】なんてめちゃくちゃ厨二感漂うネーミングだけど、もしかして……これって、あかんヤツ?
案の定、全ての儀式が終わるまで帰してもらえず、ぼくたち家族は神殿の偉い人から呼び出しを受けました。
もう気分は遅刻十回で親子共々、生活指導の先生に呼び出された時のようです。
ちなみにぼくは前世で二度ほど呼び出しを食らいました……謎の深夜テンションに抗えず、オールでBL祭りだ!と夜を徹してアニメにCD、コミックに小説、肌色多めの薄い本とあらゆるコンテンツを網羅した結果(ゲームもあるよ)、明け方に満ち足りた気分で眠りについたぼくが学校の始業時間に間に合うはずもなく……まあ、お察しの通りです。
元々オタク気質で私の崇高なる趣味に理解のあった両親にも、流石に三回目の呼び出しはナシだったらしく、「次の呼び出しがあったら、アンタの趣味のあれこれ、全部メ◯カリで売り払うからね!」などと母親に宣言され、強制的に生活改善させられたものです。
正直、呼び出しには良い思い出がありません。
大丈夫だよね!?いきなり「混沌としたこの世を救ってくだされ!」とかイタい展開にならないよね!?
緊張しているのか、右手と右足が同時に出ています。一緒に来た親たちも固唾を飲んで我が子を見守っています。
それもそうだよね、授かったスキルによってこれからの人生を左右するかもしれないんだから。
もし、王太子が料理とか植木剪定とかのスキルを得たらどうするんだろう?きっと周りの期待も大きかっただろうし「殿下のスキルは植木剪定でございます」なんて髭のお爺さんが宣言したら、皆んな気まずいよね。
ヘタに褒めることも出来ないし。
そんなこんなで、自分とは関係のないことを考えつつ、ぼくも先に髭のお爺さんのもとへ行った子どもの様子を見守ります。
どんなことするのかよく見とかないとね。手順とか教えてもらってないし、気づかずに変なことして後で黒歴史になるのは嫌だ。
なんだったっけ?前世で、外国の人が日本のお葬式に行って、お焼香?の粉みたいなやつを口に入れたって話あったよね。後ろから見たら謎の粉を食べてるように見えたらしいよ。
どんな怪しい儀式だよ、日本のお葬式。
幸いなことに髭のお爺さんのところに謎の粉はないみたい。なんか、板状の透明な石?遠目だけど、パソコンのモニターくらいの大きさかな?そこに手を乗せるだけのよう。うん、楽勝楽勝。
子どもが手を乗せて石板が一瞬、淡く光るとスキルがわかると。なるほど。
「ルイス殿のスキルは【鷹の目】です。おめでとう」
おおう、なんかカッコいいスキルっぽいぞ。ちょっと厨二っぽい気がしないでもないけど。
「確かリード伯爵の三男だったっけ? 将来は騎士を目指してるそうだし目が良いのはイイね」
ミシェル母さまがクリス父さまに耳打ちします。クリス父さまも頷いているところを見ると、良い感じみたい。本人もご両親も嬉しそうだし、よかったねルイスくん。
あれから四人ほど済んで、いよいよぼくの順番です。
今のところルイスくんの【鷹の目】を筆頭に面白スキルは出てきていない。ミシェル母さまに聞いたところ、スキルってこれまでの生活環境とか、特に王侯貴族になると血筋だとかに影響されるのだって。あとは稀に本人の強い希望とか。それなら王太子殿下はよっぽど植木剪定が好きでないとダメなのかあ。
なのでぼくの場合、剣術か魔法系統のスキルになるだろうって。それなら魔法系統のスキルがいいなあ、せっかくファンタジーな世界に生まれたんだし。透視魔法とかロマンだよね。これまで邪魔だった父さまと母さまたちの寝室とぼくの部屋を隔てる壁!防音対策ばっちりなのか、深夜、隣の部屋の壁に耳をくっつけてもなんにも聞こえないの!
「ニコル・グランチェスト殿」
「はい!」
元気なお返事とともに席を立ちます。
ニコ頑張れー。というミシェル母さまの小声の声援を背に姿勢良く髭のお爺さんのところに歩いて行きます。透視魔法、透視魔法と心の中で念じているのを悟られない様、凛とした表情で。
途中「あれがグランチェスト家の」とかの声が聞こえてきますが、良くない感情は感じられないので気にしません。以前からなぜかわかるんだよね、人の良くない感情とか嫌な気配とか。
「ニコル殿、水晶の石板に手を触れてください」
「はい」
髭のお爺さんに促され、透明な板に手を乗せます。なるほど、水晶だったのか。
手のひらにひんやりとした感触を感じた直後ーー石板が強く発光し、あまりの眩しさにぼくは思わず目をぎゅっと閉じました。なにこれ、絶対に普通じゃないやつ!透視魔法は!?ダメなの!?
光ったのは一瞬で、これは多分透視魔法はないな……と残念に思いつつ、恐る恐る目を開けた時には光は収まっていて、目の前には驚きで目を見開く髭のお爺さん。
大丈夫かな?お爺さん、結構なお年でしょ、心臓に負担かかってないよね?
髭のお爺さんが動かないので、心配になって首を傾げてお爺さんの顔を覗きこみます。
だけど、さすがは神殿の偉い人。髭のお爺さんはすぐに表情を改めるとぼくのスキルを宣言しました。
「ニコル様、あなたのスキルは【聖なる癒し】です」
石板の光のせいで少し騒がしかった広間がシンと静まります。
え?なに?なんかマズった?確かに【聖なる癒し】なんてめちゃくちゃ厨二感漂うネーミングだけど、もしかして……これって、あかんヤツ?
案の定、全ての儀式が終わるまで帰してもらえず、ぼくたち家族は神殿の偉い人から呼び出しを受けました。
もう気分は遅刻十回で親子共々、生活指導の先生に呼び出された時のようです。
ちなみにぼくは前世で二度ほど呼び出しを食らいました……謎の深夜テンションに抗えず、オールでBL祭りだ!と夜を徹してアニメにCD、コミックに小説、肌色多めの薄い本とあらゆるコンテンツを網羅した結果(ゲームもあるよ)、明け方に満ち足りた気分で眠りについたぼくが学校の始業時間に間に合うはずもなく……まあ、お察しの通りです。
元々オタク気質で私の崇高なる趣味に理解のあった両親にも、流石に三回目の呼び出しはナシだったらしく、「次の呼び出しがあったら、アンタの趣味のあれこれ、全部メ◯カリで売り払うからね!」などと母親に宣言され、強制的に生活改善させられたものです。
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