魔物と共にこの過酷な世界を生きる。

やまたのおろち

文字の大きさ
上 下
54 / 61
2章

石碑は何を伝えているのか

しおりを挟む

「グガガガガガ!」

「ッ!」

ワーウルフの上位種、マーダーガルム。
マーダーガルムは二足歩行をする巨大な狼で、その屈強な体から繰り出される剛腕は岩をも軽々と砕いてしまう。

メアリが相対しているのはまさしくそのマーダーガルム……正確に言うと、クリスタルマーダーガルムか。
いくらメアリの甲羅が硬くても、彼の攻撃を喰らって仕舞えば大ダメージは免れな…

おや?

「グガ…グガ!?」

「——ッ」

メアリは耐えてみせた。ただのメガドロなら一瞬でぺしゃんこにされてしまっていたに違いない。だが、メアリは耐えた!
メアリはノーダメージかのごとくすました顔を……違う、少しだけ痩せ我慢している。

「ッ!」

「グガ!?」

メアリはその鈍重な体に見合わぬ飛びかかりを見せて、マーダーガルムを地面へと打ち倒した。そこを…

「モヒ!」

暗黒の鎧を身にまとったオーク、オリオンがマーダーガルムにとどめを刺した!

「グガ」

マーダーガルムは倒されると同時に光の粒子となって消えていった。

「今更やけど、ここの魔物って倒されたらなんでか光の粒子になるんやよな。なんで?」

アガスは襲いかかってきたクリスタルケルピーにとどめを刺した後、そう疑問をこぼした。

「わからん。わからないが…時々、魔物を殺すと死体が残らず黒い霧と鳴って消えることがある。それと似たようなものではないか?」

「そうかなぁ…?まあ、そうやな」

アガスは先ほど倒したケルピーが光の粒子になっていくのを見ながら、そう言った。納得はできていないが、今はそれよりも大事なことがある。

「ふぅ、なんとかゴーレム倒せましたよー!」

「ヒョロロー!」

硬くて厄介だったクリスタルゴーレムは、アリサとアルタイルの連携によって倒されたようだ。
アルタイルがクリスタルゴーレムを掴んで身動きを取れなくし、アリサが魔法でゴーレムを壊す。硬くて厄介なゴーレムも、この戦法の前には抵抗すらできず撃破されるのだ。

「よくやったわ。ゴーレム系は魔法じゃないとほぼ倒せへんからな」

防御力に極振りしたマジックゴーレムは例外だが、基本的にゴーレムは魔法にめっぽう弱い。魔法使いでないと倒すことは不可能とよく言われている。

安全を確保した彼らには、もうひとつだけやるべきことがある。それは…

「この大量の石碑の調査せぇへんとな」

この神秘的な洞窟の中に閉ざされているその石碑たちは、一体何を伝えようとしているのか。その解明をせねばならない。






「これは…なんと」

「ハリム、そっちになんかあったんですか?」

大量の石碑こそ置かれてはいるが、その全てが全てに何か書かれているというわけではない。何も書かれていない石碑も少なくはないのだが…

「この石碑によると…どうやら、アカタキは元々あんな砂漠じゃなかったそうだ」

「何やと?」

「ふむ…元はグラウゼリアという名前の国だったようだ。緑豊かだったが…4000年前に…?すまん、ここから先は読めない」

「4000年前って何かありましたっけ?」

仲間モンスターたちはポカンとしながら彼らの会話を聞いている。元々、彼らは野生の身だった。アガスたちが話していることについてわかるわけがない…

「4000年前の伝承なぁ……あー、昔絵本で見たことあるかもしれん」

アガスは一呼吸入れて話し始めた。

「4000年前、この世界を未曾有の大厄災が襲ったらしいんよ。その大厄災が何なのかは未だ不明やけどな?で、それを何とかすべく立ち上がったのが創造神ラジャムサ、精霊王ソテス、伝説の弓使いエンセス、英雄ガンベル、大天使ルシエルやったんよ。ハリムは知っとるやろ?」

「あぁ。伝説の弓使いエンセス、彼に憧れて弓使いとなった身だ。それくらいは知っている」

彼、ハリムは元々孤児だった。同じく、エンセスもかつては孤児であったようだ。孤児だったハリムは、同じく孤児であったエンセスに親近感を抱いた。そして、エンセスから希望を貰ったのだ。

「エンセスさんですかー。それは聞いたことがあります。確か大悪魔を五体同時に相手にしたのに、特に苦戦もせず返り討ちにしたことがあるとか」

「そうだ。エンセスは他にも、数々の伝説を残している。いつか手合わせしてみたいものだ」

ハリムは恍惚とした表情でエンセスについて語る。これ以上エンセスの話をするのは危険だと判断したアガスは、別の石碑を見てみた。すると…

「なんやこれ。*・:リ#の魔龍ホ%ク€*はまだ生きている…あーだめや、読めへん」

その石碑には、恐ろしい風貌をした魔物の絵が描かれていた。他には人間や巨大な猿のようなものも描かれている。

「gjptジpwggwtaは死んだ。封印をするしかない、とこの石碑には書かれているが…ダメだな。肝心なところが読めない」

「こっちは…どれどれ。元々、…界は天…と同じだった。だが、奴の放つ…気によって地獄と化したようだ。切り離したおかげでなんとか被害は減らせたらしいが…ですって」

「悪夢に気をつけろ。この世界が滅びるのを見て笑う、真の悪魔。…したが、悪夢の拡大は止めれなかった。劣等感や傲慢さ、残酷さ、全てを増幅させ…それを止めるには、$$\°*…」

「悪夢と同じ原理だからか、差別が止まない。違う、これは洗脳ではない。……の…つ善良さを取り戻し悪夢から保護するためのも…」

連なる石碑たちは、一体アガスたちに何を伝えようとしているのか。
疑問は深まるばかりだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生テイマー、異世界生活を楽しむ

さっちさん
ファンタジー
題名変更しました。 内容がどんどんかけ離れていくので… ↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓ ありきたりな転生ものの予定です。 主人公は30代後半で病死した、天涯孤独の女性が幼女になって冒険する。 一応、転生特典でスキルは貰ったけど、大丈夫か。私。 まっ、なんとかなるっしょ。

現代にモンスターが湧きましたが、予めレベル上げしていたので無双しますね。

えぬおー
ファンタジー
なんの取り柄もないおっさんが偶然拾ったネックレスのおかげで無双しちゃう 平 信之は、会社内で「MOBゆき」と陰口を言われるくらい取り柄もない窓際社員。人生はなんて面白くないのだろうと嘆いて帰路に着いている中、信之は異常な輝きを放つネックレスを拾う。そのネックレスは、経験値の間に行くことが出来る特殊なネックレスだった。 経験値の間に行けるようになった信之はどんどんレベルを上げ、無双し、知名度を上げていく。 もう、MOBゆきとは呼ばせないっ!!

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

貴方がLv1から2に上がるまでに必要な経験値は【6億4873万5213】だと宣言されたけどレベル1の状態でも実は最強な村娘!!

ルシェ(Twitter名はカイトGT)
ファンタジー
この世界の勇者達に道案内をして欲しいと言われ素直に従う村娘のケロナ。 その道中で【戦闘レベル】なる物の存在を知った彼女は教会でレベルアップに必要な経験値量を言われて唖然とする。 ケロナがたった1レベル上昇する為に必要な経験値は...なんと億越えだったのだ!!。 それを勇者パーティの面々に鼻で笑われてしまうケロナだったが彼女はめげない!!。 そもそも今の彼女は村娘で戦う必要がないから安心だよね?。 ※1話1話が物凄く短く500文字から1000文字程度で書かせていただくつもりです。

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

やさしい異世界転移

みなと
ファンタジー
妹の誕生日ケーキを買いに行く最中 謎の声に導かれて異世界へと転移してしまった主人公 神洞 優斗。 彼が転移した世界は魔法が発達しているファンタジーの世界だった! 元の世界に帰るまでの間優斗は学園に通い平穏に過ごす事にしたのだが……? この時の優斗は気付いていなかったのだ。 己の……いや"ユウト"としての逃れられない定めがすぐ近くまで来ている事に。 この物語は 優斗がこの世界で仲間と出会い、共に様々な困難に立ち向かい希望 絶望 別れ 後悔しながらも進み続けて、英雄になって誰かに希望を託すストーリーである。

処理中です...