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2章

条件付きの最強

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翌日。

俺たちはシーサーペントや龍喰らい、スキュラなど今まで数多くの強力な水棲の魔物を仲間にしてきた。

—そろそろ、ウネリツノを討伐しに行こうと思う。

「今日で神鯨とクラーケンを仲間にして、明日から本格的にウネリツノ討伐を目指そう」

「ええ…ギガロドンの件もあったことだし、流石にこれ以上海に時間をかけるのはまずいわね」

俺にトライデント投げてきたあのカエル、絶対に許さないからな。裸で土下座させてやる…!

「で、ティルちゃん」

「お呼びですの?」

「あの集団は北方に行ったので間違いないのよね?」

「間違いないですわ。北の方からフカヒレの匂いがバリバリ漂ってきますわね」

「お前の嗅覚どうなってんの?」

そう、あの謎の集団は北方……最近魔力の流れが変だと、ケイカが言っていた北方へと移動しているようなのだ。

「あの様子だとまだまだあいつらの仲間はうじゃうじゃいるはず。昨日のことを考えると、私たちと戦争でもするつもりなのかしら?で、魔物使いは戦争になると非常に厄介な存在だから予め偵察……あわよくば、殺してしまおうとでも思ってたんじゃない?」
「ゴシャ」

「よくわからん」
「ザァ」

サフンが推測してそう言ってたけど、ちょっとぼくは平和主義の清い人間だからよくわからなかった。しかし…

「魔物使いは戦争において非常に厄介な存在、ね…」

魔物の杖に収納できる数にこそ上限はあれど、仲間にできる数は有限ではなく無限だ。これは風の噂で聞いた話なんだけど、ポイズンフット30体と戯れてる魔物使いもいるとか聞いたことがある。
ポイズンフットはとてつもない悪臭を放つ魔物であり、それは仲間にしても変わることはない。よくあの悪臭に耐えれるなと驚きだが、それは置いておこう。

しかし、一体なぜ魔物使いがそこまで脅威に見られているのだろうか。

「そりゃ、ミナトが何千年も前からずーーっと居座ってる三怪物を2体も倒したからよ。だから、相対的に魔物使いの評価も上がってるんじゃないの?」

そう、そうなのだ。それが正しいと思う。だが、どこか納得できない。

暫定悪のアキラは魔物使いがどうやって魔物を仲間にするかの方法を知っていた。

三怪物のクロツバサ、チハイザメは何者かによってすでに仲間にされていた。

確証はない。ただの推測なのだが…

向こう側に魔物使い…いや、【魔王】がいるのではないだろうか。で、アキラは魔王だから魔物を仲間にする方法を知っていた。魔王であるからこそ、魔物使いの脅威を知っていた。


待て、そんなに単純な話か…?
アキラが魔王であるなら何故ラグナロクにいた?諜報かなんかが目的だと思うのだが…それなら普通、部下に任せないか?例えば、あのカエル男たちなどに。
そしてそもそも、彼は何故異世界に来たばかりの頃の俺を助けてくれたのだろうか。最近ずっとアキラの悪口を言っているが、なんだかんだ彼には感謝している。だからこそ、疑問なのだ。

…謎は深まるばかり。
もっとも、

「出ましたわー!神鯨が出ましてよー!」

おっと。どうやら、考えごとをしている暇はないようだ。

「フシュゥゥ…ッ!」

神鯨なんてたいそうな名前をつけられているからアルビノの鯨……いわば、白鯨に近いものかと思っていたのだが。

「黒いな…」

まるで影のように真っ暗な黒色で塗りつぶされた巨体を持つ神鯨が、赤く濁った目で俺たちを睨みつけていた!






「ふわー、おはよう。おや、マレムくんやん。ずっと見張ってくれてたん?」

コクリとマレムは頷いた。

「悪かったわ、交代で見張りながら寝るって話やったのにな」

「」

気にするな、とでも言ってるかのようにマレムは首を振った。マレムに睡眠は必要ない。そんな心配など不用なのだ。

「ほら、あんたらも起きるで。探索再開や」

「ニャン…」

寝ぼけ眼を擦りながら、彼らは干し肉を口の中に入れ、この神秘的な洞窟の探索を再開した。





「ドラクイはそのまま正面であのデカブツの攻撃からみんなを守るタンクになってて!ティルは鯨の目を攻撃、サルヴァントとコケコは側面から攻撃!」

「カプ!」


神鯨はファルドを除くと今まで見たことのある魔物の中で最も大きな魔物だ。当然、その巨体は飾りではなく攻撃力も防御力もとてつもないスペックを誇る。しかし、致命的な弱点が一つある。それは…

「どうやら、旋回性は最悪のようだな!」

「フシュ…」

この神鯨、旋回性が最悪なのである。また、正面と尾鰭の届く範囲以外はほぼ攻撃することができない。タイマンで戦わせるならファルドクラスじゃないと勝てないと思うが、あまりにも数に弱すぎる。

なので、高い防御力を持つ龍喰らいのドラクイに壁となってもらい、他のみんなにはアタッカーをさせている…のだが。

「交代だドラクイ!サルヴァントと交代!」

「ファー!」

ドラクイが引っ込み、代わりにサルヴァントが新たな壁となった。数に弱いという致命的な弱点があるとはいえ、弱いというわけではない。逆だ、強い。

「あの短期間であんなにボロボロ…回復させないと!」

「ザァー…」

サフンがドラクイに回復魔法を何度も何度も唱える。それほどまでにドラクイの体の傷は酷かった。

「もう痛くないか?」

「ォォォ」

「よし、ならもう一度行ってこい!今度は壁としてではなくアタッカー。憂さ晴らししてきな!」

「ォォォ!」

サルヴァントも出血が目立ち始めた。あと2分耐えれるかすらも怪しい。だが…

「コケコの毒にヤツメの体力吸収、かなり効いてるでしょ」

「ゴシャー!」

そう、神鯨はこの戦闘が始まってからずっとあの二人の攻撃を喰らい続けているのだ。もちろん、コケコの毒にはいくらか耐性があるようだが。——でも、あれだけ喰らったらもう限界なはずだ。

「フシュ……」

神鯨は、あれから1分もしないうちに少しずつ動きが鈍くなっていき、やがて動きを止めてしまった。

神鯨は、海の中でも最高峰の実力者である。
ただし…彼らの持つ致命的な弱点が、気づかれなかったらの話だが。




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