上 下
17 / 61
1章

ナイトメア種

しおりを挟む
世界に発生している異変がわかったところで今の俺ではどうすることもできない。
とりあえずカリヨネッタをそのまま目指すことにした。ちなみに、仲間たちにこのことを話したところファラクやアリサなどには思い当たる節があったらしい。
やばいな、これ。想像以上に深刻かも…




「何よ、あのデカブツ」

「あれはベヒモスだ。あの見た目だが、性格は温厚らしい」

「へぇ」




「うわ、ナイトメアデスワームか!」

「レベルは35みたいやで。そなら、勝てるわ」
「クェー!」

バサ、ファラク、ブライガー、ベガ、そしてアガスが前線に出る。他の仲間モンスターやパーティーメンバーはオーガやサタンフロッグ、ナイトメアグレムリンと交戦中だ。

オーガは自慢の暴力で自然を制してきた、武闘派だ。こんな目の前のカメなど、瞬く間に捻り潰…

「!?」
「—ッ」

メアリに行手を阻まれ、

「ガァァァァァァ!」
「それそれそれそれそれ」
「グォォ」
炎と岩と毒の弾丸を浴び続け、瞬く間に倒れた。


サタンフロッグは幼稚園児並みの大きさを持つ、カエルである。バジリスク以外に天敵はいない。このカエルに舌で舐められると様々な病魔に犯される危険性がある。例えば、竜をも泣かせる「竜殺病」、人の精神を狂わせる「ラジャムサ症候群」などだ。

持ち合わせる様々な病魔を用いて獲物を弱らせる、それがサタンフロッグだ。しかし、今回ばかりは相性が悪すぎた。

「シャー!」

自分よりも小さな蛇。自分よりも戦闘力が低いであろう蛇。何故、自分は体がすくんでいるのだ?
自分の唯一の天敵はバジリスクだけ。どんなにレベル差があっても一目睨まれただけで硬直させられてしまうバジリスクだけではなかったのか?

そのちいさな蛇の名前はアオ。種族名はヘビタイショウ。ヘビタイショウは、バジリスクの下位種である。サタンフロッグの頭の中ではわかっている。これはバジリスクではないと。だが、本能が言う。これはバジリスクだと。


結果、この世界でトップレベルに厄介な能力を持つサタンフロッグは、自分よりレベルも、体も、強さも小さい蛇に完敗させられることとなった。


ナイトメア種。それは、ただでさえ凶暴な魔物が、さらに凶暴になった姿。この種族は、魔物使いでも仲間にすることはできない。

グレムリンは弱い魔物である。ただのグレムリンなら。ナイトメア種となったグレムリンは超危険生物となる。

「グキヤッキャ!」
「モヒィ!」

ナイトメアグレムリンはオリオンと死闘を繰り広げている。だが、時々飛んでくる矢と鳥がうざったい。彼は素早い動きでまず鳥を捕まえようとした。

しかし、その判断が、仇となった。

支援魔法によって攻撃の威力が上がった伏兵のドクカゲがグレムリンに向かって毒の射線を放った!オリオンもアルタイルもキジクジャクもハリムも、狙いは初めからナイトメアグレムリンを殺すことではない。なるべく傷を露出させるためだった。

みるみるうちにナイトメアグレムリンは弱っていく。ナイトメア種となることで身体能力は上がったものの、貧弱な耐性は何一つ改善されなかったのが敗因だ。


デスワームは、砂漠によく生息している生き物だ。デスワームは通常種でもそこそこ強い。稀に、ワイバーンやグリフォンと戦って勝つこともある。そんなデスワームがナイトメア種となったのだ。弱いわけがない。

ナイトメアデスワームは、その自慢の巨体を使い敵対生物たちを押し潰そうとした。デスワームの体は、ほぼ鉄と同じ成分でできている。当たればひとたまりもない。はずだった。

「やっぱ強いやん。ナイトメア種って怖いんやなぁ」

「…!」
 
「ゴォォ」

アガス、バサ、ファラクの3人がかりで受け止められていた。グリフォンはさっきから風の刃で攻撃している。まるで、自分の気を逸らすため…?

異変に気付いた。ネコはどこだ。ネコがさっきまでいたはずだ。どこへ行った…

ネコを探していると、真上から声が聞こえてきた。

「よう、体がほぼ鉄と同じ成分でできてるってんならこれが効果抜群だよな?——酸だよ。」


オオトカゲの毒がナイトメアデスワームによりばら撒かれる!ナイトメアデスワームは悲鳴を上げながらブライガーを叩き落とそうと体をゆらそとする。しかし、それは下の怪力三人組によって防がれる。

ナイトメアデスワームの悲鳴は止まらない。
鋼の鎧が、オオトカゲの毒によりどんどん溶けていっていき、やがて…デスワームの肉が見えたのと同時に、毒がなくなった。

ブライガーはその肉を引きちぎる!ブライガーは血肉喰らいの専門家である。デスワームの肉を喰らい出してすぐ、デスワームは動かなくなった。


全く、まさかナイトメア種と2体同時に遭遇するとは思わなかった。ナイトメア種以外にもオーガだのカエルだのいたし。
だが、あともうちょっとでカリヨネッタに着く。それまでの辛抱だ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

俺のギフト【草】は草を食うほど強くなるようです ~クズギフトの息子はいらないと追放された先が樹海で助かった~

草乃葉オウル
ファンタジー
★お気に入り登録お願いします!★ 男性向けHOTランキングトップ10入り感謝! 王国騎士団長の父に自慢の息子として育てられた少年ウォルト。 だが、彼は14歳の時に行われる儀式で【草】という謎のギフトを授かってしまう。 周囲の人間はウォルトを嘲笑し、強力なギフトを求めていた父は大激怒。 そんな父を「顔真っ赤で草」と煽った結果、ウォルトは最果ての樹海へ追放されてしまう。 しかし、【草】には草が持つ効能を増幅する力があった。 そこらへんの薬草でも、ウォルトが食べれば伝説級の薬草と同じ効果を発揮する。 しかも樹海には高額で取引される薬草や、絶滅したはずの幻の草もそこら中に生えていた。 あらゆる草を食べまくり最強の力を手に入れたウォルトが樹海を旅立つ時、王国は思い知ることになる。 自分たちがとんでもない人間を解き放ってしまったことを。

トップギルド職員の【鑑定士】、不当解雇されたので冒険者として成り上がります。

ファンタジー
国でトップの成績を残すギルドーー【守護者(ガーディアン)】。 【鑑定師】トビは、幼馴染と一緒にこのギルドを作り、ここまで大きくしてきた。 だけど突然、トビは幼馴染からそのギルドからの解雇を言い渡された。 ギルドの方針で鑑定アイテムに役割を奪われたのだ。 トップギルドを追い出されたトビは、当てもなく彷徨った。 そして、【鑑定師】を必要とするギルドがないことを知ったのだ。 そんな時に、トビに明暗が浮かぶ。 ギルドの職員ではなく、ギルドの冒険者になるという道。 新たに冒険者となったトビは【鑑定師】のスキルを大いに発揮し、解雇したトップギルドを見返していく。 そんな物語になっています。 ざまぁ要素ありの展開。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!

果 一
ファンタジー
二人の勇者を主人公に、ブルガス王国のアリクレース公国の大戦を描いた超大作ノベルゲーム『国家大戦・クライシス』。ブラック企業に勤務する久我哲也は、日々の疲労が溜まっている中、そのゲームをやり込んだことにより過労死してしまう。 次に目が覚めたとき、彼はゲーム世界のカイム=ローウェンという名の少年に生まれ変わっていた。ところが、彼が生まれ変わったのは、勇者でもラスボスでもなく、本編に名前すら登場しない悪役サイドのモブキャラだった! しかも、本編で配下達はラスボスに利用されたあげく、見限られて殺されるという運命で……? 「ちくしょう! 死んでたまるか!」 カイムは、殺されないために努力することを決める。 そんな努力の甲斐あってか、カイムは規格外の魔力と実力を手にすることとなり、さらには原作知識で次々と殺される運命だった者達を助け出して、一大勢力の頭へと駆け上る! これは、死ぬ運命だった悪役モブが、最凶へと成り上がる物語だ。    本作は小説家になろう、カクヨムでも公開しています 他サイトでのタイトルは、『いずれ殺される悪役モブに転生した俺、死ぬのが嫌で努力したら規格外の強さを手に入れたので、下克上してラスボスを葬ってやります!~チート魔法で無双してたら、一大勢力を築き上げてしまったんだが~』となります

全校転移!異能で異世界を巡る!?

小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。 目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。 周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。 取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。 「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」 取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。 そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

処理中です...