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39 リベンジデート

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いつも通りの1週間が過ぎ、先週は家から出して貰えなかったので今日デートのリベンジをする。前と同じ格好なのに、またミハイルに襲われそうになり必死に抵抗しながらなんとか家を出ることができた。

お昼を食べるために手を繋ぎクーライズ通りを歩く。


「もーミハイル!今日こそデートに行くって約束したじゃない」

「ごめん、マールの可愛さに衝動が抑えられなくて」

「ずっと家デートは御免だよ」

「僕にとっては最高だけどね」


私達のお気に入りのレストランに入ると、いつものウェイターさんが出迎えてくれる。このお店は値段は高いがサービスがスマートで気に入っていた。

席に座ると、一緒にメニューを決める。

「季節のオススメ・・・どれも気になるなあ」

「上の2つを頼んで分け合おう、また来た時にその下のメニューを食べようか」

「そうだね」

ミハイルが注文してくれる。

「そうだ、そろそろピアス穴も安定してきたと思うし、帰ったら僕達のモチーフのピアスに付け替えない?」

「そうだね、これも十分気に入ってるけど」

そっとミハイルの瞳色の宝石が付いたピアスに触れると、向かいに座る彼が嬉しそうに笑う。

「じゃあ、もうひとつ開けようか?」

お互いにピアス穴を開けた時の記憶が蘇り、背筋が凍った。

「大丈夫大丈夫、これは大切に飾っておくよ」

「僕はいつでも開けられる準備は出来ているからね」

私の瞳色をしたピアスを見せつけるように、綺麗な耳を指で示している。ミハイルの言葉に少し震えていると料理が運ばれ、取り分けがされた。私は色々食べたいので、こうして店側が取り分けてくれるのは本当にありがたい。

「美味しい!」

「うん、絶品だね。今日はどこに行きたいの?」

「気になってるカフェがあってね、そこのケーキが美味しいらしいの。焼き菓子も買いたいんだよね~この前、ミリアとクラリスに教えてもらったんだ。ふたりにはお世話になったから、ちょっとしたプレゼントも買いたくて。ミハイル一緒に見てくれない?」

向かいで座る彼はいつも通りニコニコと楽しそうに私の話を聞いてくれる。

「そうなんだ、僕でよければ喜んで」


食事を済ませると、いつも通りミハイルは会計の支払いをしてくれた。店を出ると外は少し寒く感じたのでミハイルと腕を組む。


「ご馳走様でした」

「ああ、腕を組むとマールと近くなっていいね」


ミハイルは嬉しそうに顔を綻ばせ歩き出す。彼と一緒に歩いていると、周りの女性達の色めく視線を感じる。着飾ったミハイルは本当にかっこよくて見蕩れる気持ちもよくわかる。

(でも・・・なんか)

「家デートでもいいって言ったミハイルの気持ちがわかったよ」

「ふっ、そんな可愛いこと言ったら、今から家まで飛んで帰ることになるよ」

ミハイルの魔力なら簡単に出来てしまうので、慌てて止める。

「ミハイルを独占するのは、家に帰ってからで大丈夫!」

「そう?僕の体も心も君の物なんだ。君の好きにしていいんだよ」

組んでいる腕を引き寄せられると、腰に腕を回されより密着する。

「どうしたい?」

ゾクゾクとする色っぽい声に歩いている足がもつれそうになってしまう。

なんとかデートは続けたいので咄嗟に言葉を発した。

「け、ケーキ!食べたい・・・」

「ふっ、ケーキに負けたな」



******



カフェに向かう前にプレゼントを探すため、お風呂で使えるバスグッツを見に来た。


「このお店、前から話題になってて来たかったんだよね」

ミハイルの腕を引き一緒に入店する。
店内はいい香りに包まれており、石鹸や入浴剤、ボディクリームなど色とりどりの商品が並んでいた。

「わ~いい香り!どれも欲しくなっちゃうね」

「マールも気になっているものがあれば、一緒に買ったら?僕がプレゼントするよ」

「いつも貰ってばっかりだし、私の物だから自分で買うよ」

「どうせ僕も一緒に使うんだし、僕が買うよ」

ミハイルと毎日一緒にお風呂に入っていることを思い出し、顔が赤くなる。

「そう、だね・・・」

「君と使うのが楽しみだ」

私の反応を楽しんでいるミハイルの頬をつつく。

「いじわる」

「ふっマールが可愛すぎるから」


棚にたくさん並んでいる香りを試し、ミハイルと店内を見回る。このお店は特に女性が多いので、どこにいても彼は注目を浴びていた。

(傍から見ると理想の王子様・・・だもんね)

無意識に自分の服装を見つめていると、さっきのお返しに頬をつつかれる。

「マール」

「ふふっ」

「君の頬柔らかいね。食べていい?」

冗談なのか本気なのか、顔に近づいてくるミハイルを止める。

「ここお店だから・・・」

まるで私しか見えてないミハイルの視線に安堵すると、気を取り直して買い物を続けた。


ミリアとクラリスに合いそうな花の香りのボディクリームを選んでいると、隣でカゴを持ってくれているミハイルが、私が手に取っていい匂いと言った物をどんどん入れていく。

「ミハイル!そんなに買うの?」

「ああ、君にプレゼントができる折角のチャンスだから」

「こんなに家の棚に入りきらないよ」


私はこれ以上カゴに入れられるのを阻止するため、会計に並び2人のボディークリームをラッピングして貰った。

大量のショップ袋を持って店を出る。


「ミハイル、重いでしょ?私も持つよ」

「大丈夫、魔力で家に飛ばすから」


ミハイルは小さい魔力の渦を目の前に出すと、そこに荷物を入れる。荷物は一瞬で吸い込まれ、魔力の渦は消えていた。


(あの時頷いてたら、本当に家まで飛ばされる所だった・・・)


荷物が無くなり、空いた手を私の指に絡ませる。

「さあ、お待ちかねのカフェに行こうか」

「うん・・・」
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