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1 伴侶システム
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この国はおかしい
魔力を持つ人間は30歳までに結婚しないといけない。
しかし、魔力を持つ人間には不思議なことが起きる。
それはーーー恋に落ちにくいのだ。
さらに、魔力持ち同士が結ばれないと魔力持ちの子供が生まれないことが判明している。
過去に魔力持ちが急激に増えた年代があり、その魔力は国の発展に大きく活躍した。
しかし恋に落ちにくいことが原因で近年では結婚、出生率がかなり落ち込み、魔力持ちの人口の減少が問題となっている。
この国は魔力に頼りっきりだ。
そこで国が対策のために『伴侶システム』を作り出した。個人の魔力を登録をさせた水晶で相性を判定する『伴侶システム』を使い、お見合いさせる。
成人して30歳までに登録を行わなければならないので、早めに登録をする人が一般的だ。
もしも30歳以降、結婚しない場合は多額の税を収めることになる。
・・・はあーー
今日何度目かのため息をつき、目の前の水晶を眺める。
名前はマール・ダレロワ
現在29歳
茶髪ロングに緑色の瞳、体型はややぽっちゃり
身長は平均より高め
顔は普通・・・でありたいと思う
魔力量は平均以下
得意魔法は魔法増強
仕事は王宮の魔法支援室所属
出身はエソー
結婚後も仕事は続ける
私はまさに伴侶システムに情報を登録しているところだった。
神聖な部屋でひとり、手をかざし目の前の巨大水晶に魔力で登録していく。この水晶には顔は反映されるが全身までは映りきらないので、細かく自分の情報を登録するしかないらしい。
こうして客観的に自分を見てみると、私の誇れる所なんてほとんど無いなあ...なんて少し落ち込んだ。
唯一誇りと言えるのは、私の魔力は普通より少ない。
だが、人が使う魔法に自分の魔力を流すと増強させることが出来る特殊な魔力を持っている。
魔法増強ができる魔力持ちは少なく、何かと重宝がられているので奇跡的に王宮に就職することが出来た。
(はぁーーやっと終わった・・・)
水晶から手を離すと出口に向かう。
伴侶システムの受付の人に『恋に落ちて結婚するまで』という特殊なパンフレットを貰ってその場を後にした。
伴侶システムが設置されている場所は、神殿の横に建てられており神聖な場所とされている。
膨大な個人の魔力を搭載する為、国で1番巨大な水晶が真っ白な神殿内に連なって設置されていた。
神殿から出口まで結構な距離があり、のんびりと歩く。
ーーゴーンーーゴーン
鐘が鳴った先を見つめると、結婚式を挙げている幸せそうな姿が目に入る。
羨ましさや、憧れの感情などは湧かず、結婚をする時にここにまた来ないといけないのか・・・なんて想像できない未来に
「はあー・・・」
私はここに来て、ため息しか出なかった。
今日は休日ということもあり、伴侶システム登録後、王宮に務める女子メンバー達と約束しているカフェに来ていた。
私の上司であるユリアさん、同僚のミリア、クラリスが居る席を見渡す。いつも探す時に見つける基準は全員美人揃いということ。
「伴侶システムお疲れ様」
席に着くと私の直属の上司のユリアさんが労ってくれた。ユリアさんはすでに結婚していて、二人の子供がいる。ブロンドのショートカットが似合うとても美しい人だ。
「ありがとうございます」
私はいつものメンバーと会えたことで、どっと緊張がほぐれた。
「ついに登録しちゃったか!あんたも結婚するのね~」
隣に座るミリアが面白そうに話しかけてくる。ミリアは赤い髪をポニーテールにしており、華やかな顔立ちをしている。職員寮も同じでいつも一緒にいる仲だ。
「いやいや、他人事みたいに言ってるけど、ミリアだってもうすぐ誕生日を迎えるんだから、登録に行かないといけないよ」
「私はもうすぐ結婚するんです~」
「ええ!!?」
オシャレなカフェに私の声が響いた。
「あんた声がおおきいって~!」
隣で大笑いしているミリアに問い詰めた。
「私と結婚しない同盟組んでたじゃない!?見捨てるの?ミリアと私は王宮でも最後の砦だって支え合ってた仲じゃない・・・!!」
「だって恋に落ちちゃったんだもん」
その一言に衝撃を受けた。
「そ・・・そう」
「そんなに落ち込まないで。あんたとは同盟組んでた仲だし、報告が遅くなったことは悪いと思ってるよ。婚約してすぐ家が決まっちゃったから寮にはもう一緒に住めないけど・・・別に職場を辞めるわけじゃないんだから」
「ミリアはいつも決断が早いね・・・」
「伴侶システムに登録したんだし、あんたが結婚する時は盛大にお祝いするわ!」
突然すぎる親友の報告に動揺する。
(ミリアは突っ走ると周りが見えなくなることもあるもんな・・・)
落ち込む私を尻目にミリアはクラリスに話題を振った。
「そういえば、クラリスはもうすぐ結婚式だっけ?」
クラリスはいつも私たちの結婚したくない同盟の会話をニコニコと笑い聞いてくれる癒しの天使だ。マリンブルーの艶やかな髪をハーフアップにし、可愛らしい顔立ちは天使そのもの。
私の向かいに座るクラリスはニコリと微笑む。
「そうだね~来週だよ」
「ええ!!ここでのんびりお茶しててもいいの?準備とかあるんじゃ・・・」
当の本人では無い私が慌てふためく。
「もう一通り落ち着いたから、今日は息抜きにお出かけしておいでってダーリンが言ってくれたの」
「だっ・・・ダーリン!!?」
未知の世界に私の思考は停止した。
私の表情にみんなクスクスと笑う。
「ミリアもクラリスもまだ今年に出会った人だよね。みんな出会ってから結婚するまで早くない?」
二人は揃って「「恋に落ちちゃったからね~」」
幸せそうにキャッキャと笑う二人を呆然と眺めた。
(昔は恋に落ちるとかあえりえないって言い合ってたのに・・・)
恋に落ちるとこんなにも人を変えるのかと今日は驚きっぱなしだった。
そんな私をユリアさんはなだめるように優しく微笑む。
「伴侶システムに登録したのだから、これからきっとマールも二人みたいに、恋に落ちる素敵な出会いがあるはずよ」
今日はもうするはずのないため息が出てしまった。
魔力を持つ人間は30歳までに結婚しないといけない。
しかし、魔力を持つ人間には不思議なことが起きる。
それはーーー恋に落ちにくいのだ。
さらに、魔力持ち同士が結ばれないと魔力持ちの子供が生まれないことが判明している。
過去に魔力持ちが急激に増えた年代があり、その魔力は国の発展に大きく活躍した。
しかし恋に落ちにくいことが原因で近年では結婚、出生率がかなり落ち込み、魔力持ちの人口の減少が問題となっている。
この国は魔力に頼りっきりだ。
そこで国が対策のために『伴侶システム』を作り出した。個人の魔力を登録をさせた水晶で相性を判定する『伴侶システム』を使い、お見合いさせる。
成人して30歳までに登録を行わなければならないので、早めに登録をする人が一般的だ。
もしも30歳以降、結婚しない場合は多額の税を収めることになる。
・・・はあーー
今日何度目かのため息をつき、目の前の水晶を眺める。
名前はマール・ダレロワ
現在29歳
茶髪ロングに緑色の瞳、体型はややぽっちゃり
身長は平均より高め
顔は普通・・・でありたいと思う
魔力量は平均以下
得意魔法は魔法増強
仕事は王宮の魔法支援室所属
出身はエソー
結婚後も仕事は続ける
私はまさに伴侶システムに情報を登録しているところだった。
神聖な部屋でひとり、手をかざし目の前の巨大水晶に魔力で登録していく。この水晶には顔は反映されるが全身までは映りきらないので、細かく自分の情報を登録するしかないらしい。
こうして客観的に自分を見てみると、私の誇れる所なんてほとんど無いなあ...なんて少し落ち込んだ。
唯一誇りと言えるのは、私の魔力は普通より少ない。
だが、人が使う魔法に自分の魔力を流すと増強させることが出来る特殊な魔力を持っている。
魔法増強ができる魔力持ちは少なく、何かと重宝がられているので奇跡的に王宮に就職することが出来た。
(はぁーーやっと終わった・・・)
水晶から手を離すと出口に向かう。
伴侶システムの受付の人に『恋に落ちて結婚するまで』という特殊なパンフレットを貰ってその場を後にした。
伴侶システムが設置されている場所は、神殿の横に建てられており神聖な場所とされている。
膨大な個人の魔力を搭載する為、国で1番巨大な水晶が真っ白な神殿内に連なって設置されていた。
神殿から出口まで結構な距離があり、のんびりと歩く。
ーーゴーンーーゴーン
鐘が鳴った先を見つめると、結婚式を挙げている幸せそうな姿が目に入る。
羨ましさや、憧れの感情などは湧かず、結婚をする時にここにまた来ないといけないのか・・・なんて想像できない未来に
「はあー・・・」
私はここに来て、ため息しか出なかった。
今日は休日ということもあり、伴侶システム登録後、王宮に務める女子メンバー達と約束しているカフェに来ていた。
私の上司であるユリアさん、同僚のミリア、クラリスが居る席を見渡す。いつも探す時に見つける基準は全員美人揃いということ。
「伴侶システムお疲れ様」
席に着くと私の直属の上司のユリアさんが労ってくれた。ユリアさんはすでに結婚していて、二人の子供がいる。ブロンドのショートカットが似合うとても美しい人だ。
「ありがとうございます」
私はいつものメンバーと会えたことで、どっと緊張がほぐれた。
「ついに登録しちゃったか!あんたも結婚するのね~」
隣に座るミリアが面白そうに話しかけてくる。ミリアは赤い髪をポニーテールにしており、華やかな顔立ちをしている。職員寮も同じでいつも一緒にいる仲だ。
「いやいや、他人事みたいに言ってるけど、ミリアだってもうすぐ誕生日を迎えるんだから、登録に行かないといけないよ」
「私はもうすぐ結婚するんです~」
「ええ!!?」
オシャレなカフェに私の声が響いた。
「あんた声がおおきいって~!」
隣で大笑いしているミリアに問い詰めた。
「私と結婚しない同盟組んでたじゃない!?見捨てるの?ミリアと私は王宮でも最後の砦だって支え合ってた仲じゃない・・・!!」
「だって恋に落ちちゃったんだもん」
その一言に衝撃を受けた。
「そ・・・そう」
「そんなに落ち込まないで。あんたとは同盟組んでた仲だし、報告が遅くなったことは悪いと思ってるよ。婚約してすぐ家が決まっちゃったから寮にはもう一緒に住めないけど・・・別に職場を辞めるわけじゃないんだから」
「ミリアはいつも決断が早いね・・・」
「伴侶システムに登録したんだし、あんたが結婚する時は盛大にお祝いするわ!」
突然すぎる親友の報告に動揺する。
(ミリアは突っ走ると周りが見えなくなることもあるもんな・・・)
落ち込む私を尻目にミリアはクラリスに話題を振った。
「そういえば、クラリスはもうすぐ結婚式だっけ?」
クラリスはいつも私たちの結婚したくない同盟の会話をニコニコと笑い聞いてくれる癒しの天使だ。マリンブルーの艶やかな髪をハーフアップにし、可愛らしい顔立ちは天使そのもの。
私の向かいに座るクラリスはニコリと微笑む。
「そうだね~来週だよ」
「ええ!!ここでのんびりお茶しててもいいの?準備とかあるんじゃ・・・」
当の本人では無い私が慌てふためく。
「もう一通り落ち着いたから、今日は息抜きにお出かけしておいでってダーリンが言ってくれたの」
「だっ・・・ダーリン!!?」
未知の世界に私の思考は停止した。
私の表情にみんなクスクスと笑う。
「ミリアもクラリスもまだ今年に出会った人だよね。みんな出会ってから結婚するまで早くない?」
二人は揃って「「恋に落ちちゃったからね~」」
幸せそうにキャッキャと笑う二人を呆然と眺めた。
(昔は恋に落ちるとかあえりえないって言い合ってたのに・・・)
恋に落ちるとこんなにも人を変えるのかと今日は驚きっぱなしだった。
そんな私をユリアさんはなだめるように優しく微笑む。
「伴侶システムに登録したのだから、これからきっとマールも二人みたいに、恋に落ちる素敵な出会いがあるはずよ」
今日はもうするはずのないため息が出てしまった。
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