トイ ソルジャー

Kanzashi

文字の大きさ
上 下
19 / 31

ソード ホワイトxグリーン [W:10]

しおりを挟む
自分なりに仁人さんが周囲を気にしなくてもいいように考えた結果だった。言ってから後悔してしまったけどね。
「俺としては嬉しんだけど、いいのか?」
いいのか、その一言にいろいろな言葉が含まれていることは読み取れた。周囲の人間に知られたときが怖いし、仁人さんは男性で芸能人、私は女性で一般人。友人にさえもなりえない、下手をすれば恋人だと間違われて彼の迷惑になるかもしれない。
「その、周りを気にすることがない時間くらい、あってもいいんじゃないかなって思ってしまって…。そのご迷惑をかけることはわかっています…」
「むしろこっちが迷惑をかけることになるよ、俺は常に周囲に目があるから。あのさ、ずっと言おうと思ってたんだけど…」
「…?」
なぜ彼が迷惑をかけるというのかわからなかった。そして口を閉じてしまった彼の言葉を待った。


「嘘でいいから、俺の彼女役、やってほしい」
「彼女役…?」
「本当に付き合うわけじゃないんだ。こうして会うときとか彼女だって言っておけば奏を守ることもできる。奏が不利になるようなことは絶対しないって約束する」
「わ、わたし…、仁人さんに言ってないことがあって…。私、たぶん仁人さんより年上で、その本当は二十五歳なんです…。ごめんなさい、だましているようなことをして!!」
「知ってたよ、年上なことは」
「えっ?」
今まで大学に入ってから誰にも言ったことがない、年齢をまさか仁人さんが知っているとは思わなかった。それに、嘘の彼女って、なに…?
「その、実は俺の学科で可愛い子がいるって噂になってたけど実は元社会人らしいって噂でさ。初めて会ったときにだいぶいろいろ手慣れてるなって思ってから年上なのは想像に容易かったよ。ごめん、初対面から生意気だったと思うし、今もだけど。でも、奏とこれからもずっとこうしていたいんだ。そのためには彼女って立場が守りやすい。だから、この提案をよかったら受け入れてほしい」
 仁人さんの言いたいことはよく理解できた。私たちがこうして出会って、話をするようになったのは運の巡り合わせがよかったから。本当だったら出会って話をすることはなかったような人。言わば、雲の上のような存在。私がそもそも彼を芸能人だと知らなかったのも要因の一つとして挙げられるだろう。彼と一緒にいるリスクも理解はしている。彼が何を懸念しているのかもわかっている。
「私も、それでもこうしてまたお話したいです。どうしても年齢のことがネックになって友達も作れなくて、こうやって話をする間柄の人、教授以外にいなくて…。その、仁人さんは、私にとって初めての先輩なんです!!」
言いたいことがごちゃごちゃになって何一つ伝えられないけれど、熱意だけは伝われ!!って思いなんとか言葉を紡ぎだす。初めてできた先輩、一人だった私に光をくれたのが仁人さん、その思いが少しでも伝わればいいと思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ジプシー

関谷俊博
絵本
わたしが求めるものは いつもほんの少し先にある

キミとボクとのおやくそく

グラタン
絵本
キミはしっかりおかあさんのいうことをきいて、おかたづけできているかな? 「いやだー!」 とか、 「おかあさん、きらい!」 とかいっていないかな? そんなキミに、ボクとのおやくそく。

エデルガルトの独り言[2nd]

Kanzashi
絵本
ただのひとりごとです・・・気にしないでください。

大人になってしまったあなたへ

Kanzashi
絵本
いつのまにか大人になって忘れてしまったものを探す旅に・・・

宝石の錬金術師

Kanzashi
絵本
どこか遠くの小さな街に「石の守り神」と「エルフの少女」がいました。(全12色)

ハナキリンの恋

お粥定食
絵本
傾国の美貌を持つ王子が盲目の少女の為に戦うお話です。 ※王子のイラストはAIイラストです。

わがまま

杉本けんいちろう
絵本
これって、わがままなの…?

【親子おはなし絵本】ドングリさんいっぱい(2~4歳向け(漢字えほん):いろいろできたね!)

天渡 香
絵本
「ごちそうさま。ドングリさんをちょうだい」ママは、さっちゃんの小さな手に、ドングリさんをのせます。 +:-:+:-:+ ドングリさんが大好きな我が子ために作った絵本です。 +:-:+:-:+ 「ひとりでトイレに行けたね!」とほめながら、おててにドングリさんを渡すような話しかけをしています(親子のコミュニケーションを目的にしています)。 +:-:+:-:+ 「ドングリさんをちょうだい」のフレーズを繰り返しているうちに、子供の方から「ドングリさんはどうしたらもらえるの?」とたずねてくれたので、「ひとりでお着がえできたら、ドングリさんをもらえるよ~」と、我が家では親子の会話がはずみました。 +:-:+:-:+ 寝る前に、今日の「いろいろできたね!」をお話しするのにもぴったりです! +:-:+:-:+ 2歳の頃から、園で『漢字えほん(漢字が含まれている童話の本)』に親しんでいる我が子。出版数の少ない、低年齢向けの『漢字えほん』を自分で作ってみました。漢字がまじる事で、大人もスラスラ読み聞かせができます。『友達』という漢字を見つけて、子供が喜ぶなど、ひらがなだけの絵本にはない発見の楽しさがあるようです。 +:-:+:-:+ 未満児(1~3歳頃)に漢字のまじった絵本を渡すというのには最初驚きましたが、『街中の看板』『広告』の一つ一つも子供にとっては楽しい童話に見えるようです。漢字の成り立ちなどの『漢字えほん』は多数ありますが、童話に『漢字とひらがなとカタカナ』を含む事で、自然と興味を持って『文字が好き』になったみたいです。

処理中です...