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12 はるかなる熊野古道

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「……ごめんなさい」


 わたしはぺこりと頭をさげた。


「……ごめん、じいちゃん」


「……ご、めんな……さぃ……」


 早矢と餓鬼阿弥も、首をたらしてうなだれている。


「あ、ち、ちがうっ! おじいちゃんちがうの! 早矢と宝君は、わたしの暴走に巻き込まれただけでっ!」


「まぁ、わけは車ん中でゆっくりきかせてもらうわ。宝君、土車はどないした? えらい弱っとるやないか。ほら、じいちゃんの背さ、おぶされ」


 餓鬼阿弥を背中に背負いあげると、おじいちゃんは、わたしと早矢を交互に見た。


「おまえらふたりは、まだ歩けるな。車は、下のほうに止めちょる。狼がまた来んうちに、はよ、もどるで」


 おじいちゃんは、来た道にビニールテープを張っていた。

 それを回収しながら、尾根をくだっていく。



 尾根の西側の林道に、車が止まっていた。向けた懐中電灯のあかりで、熊みたいにずんぐりとした、紺色の四輪駆動車が闇に浮かびあがる。


「ほら、乗り」


 おじいちゃんは、後部座席に餓鬼阿弥の体をもたせかけた。

 早矢が、反対側のドアから、そのとなりに乗り込む。


「じいちゃん。頼みがある。これから宝を、湯の峰温泉につれていってほしい」


 ドアを閉めると、早矢は低い声でつぶやいた。


「お、お願い! おじいちゃんっ!! 」


 助手席に座ったわたしも、あわてて、おじいちゃんの横顔を見あげる。

 おじいちゃんは、ハンドルをにぎって、前方をにらみつけた。



「――わかった」


 紺色の四駆に、ライトが灯る。


 林道をぬけ、車は、バス通りの国道を走りだした。





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