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5 オバケと同居

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 このミイラはなんなのだろう?

 わたしにしか見えないオバケなのに。

 どうして、ダリが持っているような、禍々しい暗い煙をまとっていないのだろう。


 ただ、静かに土車に座っているだけで。


「あの……ありがとう」


 起きあがり、正座して、クローゼットの中のミイラのオバケと向かい合った。


 ぺこっと頭をさげる。

 とたん、頭の上にバサバサと何かがふってきた。


「えっ!?  きゃあっ!」


 無我夢中で、頭上の何かをはねのける。

 教科書だった。自分の。それに学習ノート。連絡帳まで。


「な、なにこれ~ 」


 ランドセルをおろして気がついた。ランドセルのふたが開いていて、頭をさげたとたんに、ランドセルがさかさまになって、中身が落ちてきたらしい。


「うわ……わたしってば、すっごいドジ……」


『ドラえもん』の、のび太なみ。はずかしすぎる。


「……ぁ……」


 土車の上から声がした。

 さっきまでうつむいていたミイラのオバケの顔が、こちらを見ている。


「……ぁぁぁ……」


 皮だけの口元が横に開いていた。口の両はじが微妙に持ちあがっている。


「わ……笑ってる……?」


 両手をゆかについて、まじまじ相手をのぞきこむと、ついたところはゆかではなくて、本の上だった。ビニールでコーティングされた表紙につるっとすべって、体が横に倒れる。


「わっ! わっ! きゃあっ!」


 さっきから、たったひとりで、パニックだ。

 なんだかもう、なさけない。


「も~」


 手をすべらせた本にやつあたりして、胸に抱えると、また、ミイラのオバケが「……ぁ……」と、かすれた声を出した。


 相手の目は、暗い影になっていて、あるのかないのかさえわからない。その視線が、わたしが抱えている本に向けられている気がする。


 図書室で借りてきた『小栗判官』。







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