がきあみ ―閻魔大王がわたしたちに運命のいたずらをした―

くまの広珠

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5 オバケと同居

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「おそかったじゃない。香蘭ちゃん」


 ドアを開けると、ママが玄関先で眉をひそめていた。


「……図書室に寄ってきたから」


「そうなの? でも、もうちょっと早く帰ってこなきゃあ。これから、どんどん秋が深まっていって、日が暮れるのが早くなるんだからね。でも、まぁ、香蘭ちゃん。あの、へんな木の車は、ちゃんと捨ててきてくれたのね。よかったわ。あなたが学校に行ったあと、部屋に見たらなかったから、ママ、とっても安心したのよ」


「あ……うん……」


 あいまいにうなずいて、わたしはママをふりきり、二階へのぼっていった。

 どうせママは、わたしのあぶら汗に気づいていない。


 自分の部屋まで階段をのぼるだけなのに、なんでこんなに、登山でもしている気分になるのだろう。

 一段、一段のぼるたびに、肩で息をつく。

 
 自分の部屋のドアを開けると、もう動けなくなって、ランドセルを背負ったまま、わたしはカーペットの上にうつぶせになった。


 重たい。

 苦しい。

 悲しい。


 ダリを体に取り込むたびに襲われるこの無気力感は、いったいなんなのだろう。


 ガタン。


 すぐ横の、クローゼットの中から音がした。


 そうだ……ミイラのオバケを、クローゼットに入れたままだった……。


 今の音は、「出せ」という催促かもしれない。


 もう、怖がる気力さえのこっていない。

 ただ、ぼんやりと手をのばして、クローゼットを開ける。


「おん あ ぼ きゃ」


 クローゼットの中から声がした。


「べい ろ しゃ のう、 ま か ぼ だら」


 ききなれない言葉。ぼそぼそと、低音で唱えている。


「ま に はん どま、 じんば ら、 はら ば りた や うん」


 カランっ!


 クローゼットのゆかに、木の棒がつき立てられた。

 ふっと、体が軽くなった。

 胃を押しあげていたものが消えている。


 あ……夜とおんなじだ……。


 部屋の空気が気持ちいい。澄んだ水で洗ったように。


「……今の……呪文のせい……?」


 クローゼットの中で、木の棒をつき立てているミイラに、たずねてみる。


「あなたが……ダリを消してくれたの……?」


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