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しおりを挟むパタリ。
チュピちゃんが、立ちどまりました。
もねの、かたの上です。手をかたほうだけあげて、動きません。
チュピちゃんの大きな、アーモンド形の目と、もねの目が合いました。
ふわり。
チュピちゃんの体が、宙にうかびました。
チュピちゃんは走るみたいに、宙をかいて、すすんでいきます。
「まって、チュピちゃん!」
でも、チュピちゃんはもう、あなの外にとびだしていました。
金色の光がチュピちゃんの体をつつんでいます。
チュピちゃんの光は、金色の、ホタルの光のようです。
「……チュピちゃん」
チュピちゃんの後ろには、同じように金色にひかるたくさんの光が、夜空に向かってのぼっていきます。
あなの中では、さびしそうな顔をしたおばあさんや、犬のくびわをにぎりしめたおじいさんが、空を見あげています。
きっと、あの光のどれかは、おばあさんのかっていたねこなのでしょう。
どれかは、おじいさんのかっていた犬なのでしょう。
どれかは、男の子のかっていたカメです。
どれかは、みのりちゃんのピッピです。
チュピちゃんは、光を強くしたり、弱くしたりしながら、もねのあなの前を、行ったり来たりしています。
(チュピちゃんも、みんなといっしょに、空にのぼっていきたいんだ……)
もねは、おく歯をかみしめました。
(チュピちゃんは、わたしがバイバイしてくれるのを、まってる)
もねは、そっと口をあけました。
にがいなみだが、のどのおくに落っこちていきます。
「バイバイ、チュピちゃん」
チュピちゃんが、強く光りました。
チュピちゃんは、天に向かって、かけだしました。
まるで、回し車の中で走っているようです。手も足もくるくる動かして、チュピちゃんは夜の空をかけぬけます。
チュピちゃんは、たちまち、たくさんの光の中にまぎれていきました。
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